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【2027年M&A増税】売却額3.5億円超で手残りが激変!?新税制の影響と対策

M&Aを活用して会社売却による株式譲渡益が出る場合、2027年からの税制改正(富裕層課税)により、想定していたよりも手取りが大きく減る可能性があります。これまで株式譲渡益の税率は「20.315%で一律」と理解されてきましたが、今後は一定以上の所得となるケースで追加の税負担が生じる仕組み(ミニマムタックス)の対象が大幅に広がります。本記事では、事業承継等でM&Aによる会社売却を検討している経営者の方に向けて、制度の変更ポイントと対策の考え方を整理します。

M&Aによる会社売却(株式譲渡)の増税の境界線が 約10億円から 約3.5億円 へ

近年、高所得層に対する税負担のあり方(いわゆる1億円の壁)が課題となっており、その是正策としてミニマムタックス(最低税率課税)が導入されています。

この制度は2025年1月より既に施行されていますが、2027年1月を境にその影響範囲が劇的に変化します。

フェーズ1:現行制度(2025年~2026年末)
追加納税が発生し始めるのは、売却額で約10億円を超える超大型案件に限られていました。

フェーズ2:改正後(2027年1月以降)
2027年からは大幅に課税強化され、追加納税のラインが売却額で 約3.5億円 まで一気に引き下げられます。これにより、これまで自分には無関係と思っていた多くの中堅企業オーナーが、増税の当事者となります。

「所得6億円の富裕層」ではなく「売却額3.5億円」が増税対象?

ニュース等では「超富裕層への課税強化、対象所得を6億円に引き下げ」と報じられることがあります。しかし、これは給与所得(累進課税)などを多く含む一般的な富裕層をモデルとした目安です。

まず、原則的な株式譲渡益の税率を確認します。

所得税: 15.315%(復興特別所得税含む)
住民税: 5%
合計: 20.315%

株式譲渡益の課税は「申告分離課税」と呼ばれ、給与所得などの累進課税とは切り離して計算されます。これまでは、譲渡益がいくらであっても、この一律の税率で計算されるのが基本でした。

M&Aによる株式売却のように所得の大部分が税率の低い「株式譲渡益(分離課税 15.315%)」である場合、新計算式の「30%」という高い税率との差が早くに逆転してしまいます。そのため、実務上は政府が想定している数字よりもはるかに低い 売却額 約3.5億円 あたりから追加納税が発生し始めるのです。

特に創業オーナーの場合、株式の取得費が小さいことが多く、影響が出やすくなります。実務的な手数料も含めてシミュレーションしてみましょう。

【実務的な試算条件】
株式譲渡対価:3億5,000万円
株式取得額 :1,000万円(創業株など取得費が小さいケース)
譲渡関連費用:2,000万円(仲介手数料など)
差し引き後の所得:3億2,000万円

この所得単体では、2027年からの新計算式による税額は通常の所得税を下回ります。しかし、オーナー経営者の多くは数千万円単位の役員報酬などがあるため、これらを合算した所得が約3.37億円を超えた瞬間、差額が追加納税として発生します。 つまり、売却価格が3.5億円を超える案件は、役員報酬を含めたトータルの所得で考えると、実務上、ほぼ確実に増税の射程圏内に入ると言えます。

2026年末までにすべきことは?

2027年1月からの増税の可能性が高まっている以上、次の2点を検討することをおすすめします。

「急ぐ」のではなく「前倒しで準備」する: 慌てて売却先を探すのではなく、今すぐ「自社の株価算定」と「増税シミュレーション」を開始し、余裕を持って2026年中の成約を目指すスケジュールを組むことが肝要です。
選択肢の比較検討: もし2026年内の成約が難しいと判断した場合は、無理に売るのではなく、「役員退職金の活用」や「組織再編」といった税務構造の最適化へ戦略を切り替える時間も必要です。

2027年以降に増税対象になる場合の3つの検討案

売る直前では選択肢が限られます。早めに専門家と設計することが手残りを守るポイントです。

役員退職金の戦略的活用
所得を分散し、退職所得の1/2課税を適用させることで、ミニマムタックスの判定所得を下げることができます。

株式の贈与による所得分散
ミニマムタックスは個人単位で計算されます。M&Aの前に相続時精算課税制度などを活用して家族へ株式を分散しておけば、一人あたりの所得を判定ライン以下に抑えられる場合があります。

【組織再編を活用した子会社化や余剰資産の切り出し】
株式の譲渡対価を個人で受け取るか法人で受けるか、あるいは不動産等の余剰資産を別法人(資産管理会社)へ移管してから譲渡するかなど、スキームの検討が資金の残り方に直結します。

まずは自社の株価とM&A市場(買い手の有無や相場)の確認を

2027年からの激変は避けられませんが、最適な出口は早期売却だけではありません。まずは「今、自社がいくらで売れる可能性があるのか」という正確な現在地を把握することから始まります。

日本クレアス税理士法人の顧問先の皆様は、最新税制を踏まえた具体的な対応策について担当税理士へご相談ください。

また、具体的なM&Aの検討や詳細な株価の精査については、グループの専門組織である「コーポレート・アドバイザーズM&A」による[株価シミュレーション]をあわせてご活用いただけます。

増税という変化を、むしろ最高の承継に向けた準備を始めるきっかけにしていただけますと幸いです。


※本記事は2026年2月末時点の税制改正情報を基に構成しています。実際の判断にあたっては必ず税務専門家等へご相談ください。

参考情報:国税庁:極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置について

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納得感のある価格・条件で事業承継・M&Aを実施するためには、客観的な企業価値の把握が第一歩です。決算書等をご提出いただければ、20年で2000件以上のM&A支援実績を持つコーポレート・アドバイザーズが無料で企業価値シミュレーションを実施いたします。

伏江亜矢
監修者:伏江亜矢
株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長
総合リース会社で法人営業を担当後、2012年にコーポレート・アドバイザーズ入社。M&Aの事前準備から、候補先のソーシング、企業価値評価、条件交渉、クロージングまで一気通貫した支援を行っている。 ヘルスケア・ライフサイエンス(医療・介護・メーカー・卸商社)、IT・ソフトウエア(Webサービス、システム開発)、人材サービス(派遣、警備、ビルメンテナンス)などのM&A支援経験が豊富。 M&A成功のために必要な情報をわかりやすく解説するコラムサイト「よくわかるM&A」の運営責任者。UMass MBA(経営学修士)取得。北海道大学農学部卒。
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