監修者:伏江 亜矢(株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長) |
M&Aにかかる手数料の相場、M&A仲介会社各社の手数料の比較、手数料以外のM&A仲介会社を選ぶポイントについてわかりやすく解説します。
M&Aにかかる手数料の相場
種類別手数料の相場
M&Aの成約までにかかる手数料の相場の参考例は以下の通りです。
M&A仲介会社、FA(ファイナンシャルアドバイザリー)会社に支払う手数料
1.相談料:無料
2.着手金:0円~200万円
3.リテーナーフィー:月額数十万円程度
4.中間金:0円~200万円(又は成功報酬費用の10~20%程度)
5.成功報酬費用:取引金額(退任役員の退職慰労金も含む)×5%程度
※最低成功報酬額(~2500万円)の設定あり
その他外部専門家に支払う手数料
1.株価算定費用:0円~100万円
2.デューデリジェンス費用:100万円~500万円(財務、法務、人事・労務、税務など)
3.その他費用:登記費用、株券発行費用など
M&Aで支払う手数料の種類
M&A仲介会社に支払う手数料
相談料
相談料とは、M&A仲介会社と正式に業務委託契約を締結する前に、弁護士等の士業のように初期的な相談をした際にかかる費用です。大手のM&A仲介会社をはじめとして、ほとんどのM&A仲介会社では、相談料を無料に設定しています。
着手金
着手金とは、M&A仲介会社と正式に業務委託契約を締結した後に支払う費用です。着手金は無料の場合と50万円~200万円程度がかかる場合にわかれます。
着手金が有料の場合、売り手も買い手も本気でM&Aを行う覚悟がないと支払うことはしないため、本気で取り組む覚悟がある売り手、買い手に対してのみ支援をしたいというM&A仲介会社に関しては、着手金を有料にしています。
そのため、着手金が有料のM&A仲介会社が抱える売却希望案件については、本気の売り手のみが集まっているため、買い手から見ると、売り手の意思が固まっているため、成約率が高いという見方をすることもできます。また売り手から見ても、無料よりも有料の方が、しっかりと支援をしてもらえそう、という意見もあるかと思います。
他方、多くの業種については、売り手市場であり、未だ意思の固まっていない売り手にも、経営上の一つの選択肢としてM&Aを検討してもらえるようにしていきたい、という方針のM&A仲介会社が増えてきています。
ちなみに、着手金は、M&Aが成立しなかった場合でも返金されない費用です。
着手金が有料のM&A仲介会社に依頼をする場合には、そのM&A仲介会社の過去の実績だけではなく、売り手の場合には、自社の場合に想定される「取引金額」「スキーム」「候補先」「スケジュール」等、M&A成立のための重要要素について、M&A仲介会社などから無料相談の範囲でできるだけ具体的な提案を受け、きちんと支払った分だけ活動をするのか、その結果十分な成果を期待できるのか、見極める必要があります。
リテーナーフィー
リテーナーフィーとは、M&Aの仲介会社などに支払う月額報酬のことをいいます。リテーナーフィーは、M&A仲介会社などと業務委託契約を締結した後で必要となる場合があり、その場合は月額固定金額が一般的です。
依頼内容の難易度や、担当するコンサルタントのスキルに応じて、月額数十万円以上の金額がかかるといわれています。月額報酬額×契約期間がリテーナーフィーの総額になります。
着手金+リテーナーフィーがかかる場合、着手金のみかかる場合、リテーナーフィーのみかかる場合、着手金とリテーナーフィーのどちらも無料の4パターンがあります。リテーナーフィーは着手金と同様、M&Aが成立しなかった場合でも返金されない費用ですので、支払った分だけ活動するのか、その結果十分な成果が期待できるのか、を見極める必要があります。
中間金
中間金とは、一般的には基本合意書が締結され、売り手が買い手に対して独占交渉権を付与したタイミングで支払う費用です。中間金は、無料の場合と、50万円~200万円程度の固定報酬を支払う場合、成功報酬額の10~20%程度を支払う場合の3パターンにわかれます。
なお、M&A仲介会社と締結する業務委託契約は、「株式譲渡」と「事業譲渡」のどちらのスキームでも対応できるように、「売り手である対象会社の株主(=オーナー社長個人)」、「対象会社」、「M&A仲介会社」の3者間で締結することが一般的であり、着手金、中間金ともに、「オーナー社長個人」か「対象会社」のいずれかが支払う、という建付けになっていることが多いです。
成功報酬費用
成功報酬費用とは、M&Aの最終契約書が締結され、譲渡対価が買い手から売り手に支払われ、M&Aが成立した場合に支払われる手数料です。
多くのM&A仲介会社などでは、成功報酬費用を以下のようなレーマン方式と呼ばれる計算方法で算出します。このレーマン方式の計算方法については、大手数社だけを見ても異なっており、初めて聞く方にとってはとても分かりづらいといわれていますので、次章で詳しく説明していきます。
その他外部専門家に支払う手数料
株価算定費用
M&A交渉においてM&A仲介会社などが入る場合には、M&A仲介会社などが対象会社の株価算定シミュレーションを実施し、売り手、買い手に報告することが通常です。
しかし、買い手が上場企業や非上場企業でも会計監査を受けている場合には、外部の評価書が求められるケースがあります。その場合には、公認会計士に株価算定業務を依頼することになります。
また、意向表明書内に記載する提示金額は、一般的には法的拘束力はありませんが、その後の交渉のベースとなる金額であるため、最近では、意向表明前から外部の評価会社を利用するケースも増えています。
例えば、弊社グループの評価人に依頼する場合には、50万円~といった料金体系になります。
デューデリジェンス費用
日本における中小企業のM&Aでは、基本合意後に、買い手が対象会社を調査するデューデリジェンスが実施されます。
デューデリジェンスには、財務、法務、人事・労務、税務、システムなどがあり、対象会社の業種、規模、採用スキームに応じて、デューデリジェンスの内容が選択されます。財務であれば公認会計士、法務であれば弁護士、人事・労務であれば社会保険労務士、税務であれば税理士などの専門家に依頼をすることになります。
依頼する業務範囲や事務所によっても異なりますが、例えば、弊社グループの各専門家に依頼する場合には、財務デューデリジェンスは150万円~、人事・労務デューデリジェンスは80万円~といった料金体系になります。
▼以下では、デューデリジェンスについて解説しています。
その他費用
その他にかかる費用として、役員変更、定款変更、不動産の所有権移転などが行われる場合には、登記費用が掛かります。また、株券発行会社で設立以来株券を発行したことがない会社の株式を譲渡する場合には、株券発行費用がかかるケースもあります。
成功報酬費用の計算で採用されるレーマン方式とは?
レーマン方式の主な計算方法は3つ(M&A仲介会社によって計算方法が異なる)
レーマン方式では、以下の表のように、取引金額に対して手数料率(1~5%)を掛けて計算します。
この取引金額の定義が主に3種類あるといわれています。
1.「株価レーマン方式」⇒「株式の価格」に対して手数料率を掛ける
2.「企業価値レーマン方式」⇒「株式の価格」+「ネット有利子負債(有利子負債-現預金)」に対して手数料率を掛ける
3.「移動総資産レーマン方式」⇒「株式の価格」+「有利子負債」+「その他負債」
『株価レーマン方式』が最も成功報酬費用を抑えた手数料体系です。『企業価値レーマン方式』はM&A仲介会社ではほとんど採用されていませんが、「移動総資産レーマン方式」を採用しているM&A仲介会社はいくつかあります。
「移動総資産レーマン方式」を採用しているM&A仲介会社への依頼を検討している場合には、成功報酬費用が割高になる可能性があるため、『株価レーマン方式』の場合で計算した場合と比較して検討することをお勧めします。
最低報酬額(~2500万円)にも注目すべき
成功報酬費用の「最低報酬額がいくらで設定されているか」についても、計算結果に大きな影響を与えます。最低報酬額が1000万円以下の場合には、それ自体がアピールポイントになるため、M&A仲介会社のホームページ上で最低成功報酬額が公開されていますが、1000万円超の場合には公開されていない会社が多いようです。
弊社コーポレート・アドバイザーズM&Aでは、業界水準よりも低い最低報酬額1000万円(別途消費税)で設定しております。
数億円の取引金額がボリュームゾーンとなる中小企業のM&Aに合った手数料体系となっています。さらに、売上1億円未満の小規模事業者様については、案件規模に応じた手数料をご用意しております。M&Aを検討したいあらゆる規模・フェーズの企業ニーズにお応えできるような支援体制となっています。
M&A仲介会社各社の手数料比較
次の表は、売り手と買い手がM&A仲介会社に対して支払う手数料をまとめたものです。
着手金、中間金の有無や成功報酬の計算方式、最低報酬額は各社バラバラで、特に大手3社については、ホームページ上で明確に記載がされていないケースが多く、M&A仲介会社の報酬は比較検討しづらいものとなっています。
売り手が支払うM&A仲介会社各社の手数料比較
買い手が支払うM&A仲介会社各社の手数料比較
そこで、具体的なケースで手数料を比較してみます。中堅・中小企業におけるM&Aは譲渡金額は数億円~十億円のケースが多いため、ここで例示する譲渡対象となる会社は、純資産1億円+のれん1億円= 譲渡金額(株価)2億円、負債総額3億円を想定します。
M&A仲介会社の大手では、計算方式や最低報酬金額を非公開にしているケースが多いため、明確な手数料の計算はできません。
しかし、当社コーポレート・アドバイザーズM&Aのように、他の計算方式を比べてリーズナブルな「株価レーマン方式」を採用し、最低成功報酬を1000万円以下に設定している場合には、それ自体がアピールポイントとなるため、ホームページ上で公開していることが多いです。
また、中小・中堅企業のM&A件数は年々増加傾向にあり、最近では、M&Aマッチングプラットフォームや最近立ち上げたばかりのM&A仲介会社、個人のコンサルタントが運営する会社が急増しており、現在では、M&A支援業務を行う会社が全国に数百社あるといわれています。
売り手にとっては、大切に育ててきた貴社や事業を他人に譲渡する非常に重要な取引になるため、M&A仲介会社を選ぶ際には、手数料以外の点も留意する必要があります。もちろん、買い手にとっても同様に、M&Aは多額の投資となるため、手数料以外の点もしっかりと見極める必要があります。
▼以下では、M&Aアドバイザーの詳細について解説しています。
M&A仲介会社を選ぶポイント
契約形式
M&Aのアドバイスを専門会社に依頼する場合、主に「仲介形式」と「ファイナンシャルアドバイザリー(FA)形式」という2つの形式があります。
「ファイナンシャルアドバイザリー(FA)形式」の場合には、売り手と買い手それぞれにM&Aアドバイザーが着任し、売り手と買い手、それぞれの立場で助言をおこないます。
一方、「仲介形式」の場合には、売り手と買い手で同じM&Aアドバイザーが着任し、売り手、買い手の間に立って、客観的に中立的な立場で助言をおこないます。
また、「仲介形式」では、相手先の紹介(マッチング)を行うことが一般的であり、初期段階の相談からM&Aの成立まで、売り手と買い手の両者の要望を把握し、条件の落とし所を探るようなかたちで交渉を進めるのも特徴といえます。
日本の中小企業のM&Aにおいては、「仲介形式」で進めるケースが一般的です。なお、仲介契約もFA契約も基本的にはフィーの計算方法は一緒であり手数料の違いはありません。候補となるM&A会社が仲介契約かFA契約のどちらの種類かは事前に確認しておきましょう。
M&Aの支援実績と体験談インタビュー
比較的最近立ち上げたばかりのM&A仲介会社や個人のコンサルタントが運営する会社は全国に数百社あるといわれていますが、ホームページを見ただけではなかなか見分けがつきません。
その違いを見分けるには、具体的な成約事例のほか、M&Aの成約インタビューなどで、実際に売り手と買い手が実名でのインタビューを掲載しているかどうかがも参考になります。
当社コーポレート・アドバイザーズM&Aでは、M&Aを実行された売り手である元オーナー経営者様に、M&A検討の経緯、M&Aを決断した理由、これからM&Aを検討されるオーナー経営者様へのメッセージのインタビューを掲載しています。
M&A仲介業務以外のサービスラインナップ
多くのM&A仲介会社では、M&AのマッチングやM&Aを成立させることに重点をおき、サービスのラインナップもM&A仲介業務に比重を置いているケースがほとんどです。
当社コーポレート・アドバイザーズM&Aでは、最適な候補者探しを含むM&A仲介、FA、セカンドオピニオン、DD、株価算定に加えて、PPA、PMIから資産管理・相続対策までM&A検討やM&A実施後の経営者のお悩みにお答えできるサービスラインナップとなっています。
自社の業界・業種への理解があるか
M&A仲介会社の中には、特定の業界・業種に強みをもつ場合があります。例えば、飲食店に強いM&A仲介会社、IT・ソフト分野に強いM&A仲介会社、調剤薬局やクリニックに強いM&A仲介会社などが挙げられます。
売り手にとっては、自社の業界・業種に強いM&A仲介会社に依頼することで、自社の事業に対する市場環境、強み、経営課題などに対する理解が得られ、より自社に合った買い手を紹介してもらいやすくなります。
買い手にとっては、買収ニーズのある業界・業種に強いM&A仲介会社にニーズ登録しておくことで、自社が求める売却・譲渡ニーズを紹介してもらいやすくなります。
弊社コーポレート・アドバイザーズM&Aでは、全ての業界・業種に対応していますが、特に、IT・情報通信、人材サービス、建設、不動産、介護、調剤薬局といった業界・業種に強く、有力な買い手情報を多数保有しています。
また、買い手向けには、M&A戦略に合った会社・事業を探すファインディングサービス(案件開拓サービス)もご利用いただいています。
なお、弊社コーポレート・アドバイザーズM&Aを介して成約された案件の約8割が買い手のM&A戦略に合った会社・事業を探すファインディングサービス(案件開拓サービス)がきっかけとなっています。
▼以下では、ファインディング(仕掛け型M&A・案件開拓サービス)について解説しています。
日本クレアス税理士法人|コーポレート・アドバイザーズ グループでは、20年間にわたり2000件以上の会社売却・M&A支援を行っています。
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417名(グループ全体 / 2023年10月現在)
税理士(試験合格者含む)56名
公認会計士(試験合格者含む)15名
特定社会保険労務士2名
社会保険労務士(試験合格者含む)12名
弁護士 2名
相続診断士41名
中小企業診断士1名
行政書士4名
■関与先
法人 3,240社(うち上場企業85社)
社会福祉法人 133件
クリニック・医療法人・介護福祉等 593件
個人 4,015名
合計 7,981件
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