監修者:伏江 亜矢(株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長) IT・ソフトウエア(SES、システム開発、Webサービス)、人材サービス(派遣、警備)担当 |
買い手企業が魅力に思う強みを有していると、SES会社を高い価格で売却できる可能性があります。会社売却により、経営の安定化などのメリットを得られます。SES業界の動向やM&A事例、高く売却するための交渉術を紹介いたします。
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SESの概要
はじめに、SESのビジネスモデルや市場規模・動向をお伝えします。
SESとは
SES(System Engineering Service)とは、コンピュータシステムやソフトウェアの開発や保守、運用などの業務を行う技術者を派遣するビジネスモデルです。[1]「エンジニアの労働力を提供する」というビジネスモデルは派遣事業と共通していますが、「契約形態」に違いがあります。
派遣事業は「派遣契約」に基づくため、指揮命令権は派遣先の企業(≒発注する側の企業)が持ちます。[2]一方でSESは一般的に準委任契約に基づくため、エンジニアを雇用しているSES企業が指揮命令権を持ちます。つまりSESの場合、発注する側の企業はエンジニアに対して指揮命令を行えないのです。
SES業界の市場規模や市場動向
日本標準産業分類において、SESは情報通信業内の「情報サービス業」と「インターネット附随サービス業」に該当します。[3]ここではSES事業をこの2業種と定義し、市場規模・動向をお伝えします。
市場規模
サービス産業動向調査によると、SES関連業種の市場規模は以下のとおり推移しており、市場規模(情報サービス業とインターネット付随サービス業の売上高合計)は右肩上がりに拡大しています。[4]
市場動向
SES業界では、市場規模の拡大によってニーズが高まっている一方で、エンジニアを中心とした人材不足が課題となっています。
「IT人材白書 2020」によると、2019年度調査においてIT企業の26.2%でIT人材が大幅に不足、66.8%でやや不足しているとのことです。[5]つまり、9割を超えるIT企業ではIT人材が不足しているのです。
こうした現状を踏まえて、通常よりも高い報酬を設定し、優秀なIT人材を確保する動きが国内で広がっています。[5]また、M&A(会社の買収・売却)によってエンジニアなどの人材確保を図る動きも活発です。
[2] 派遣先の皆様へ(厚生労働省)
[3] システムエンジニアリングサービス業界の動向や統計 (レファレンス協同データベース)
SES会社のM&A・買収・売却事例
SES会社によるM&Aの事例を知ることで、M&Aを行う目的や用いられる手法などを理解できます。この章では、SES会社のM&A事例を買い手企業の業界別に紹介いたします。
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IT企業が買い手企業となったM&A・買収・売却事例
IT企業が買い手となったSES会社の売却事例を25例を紹介いたします。
【ITソリューション×システム開発】セグエグループが、テクノクリエイションを買収
譲渡対象の概要
テクノクリエイション:システム開発、ソフトウェアの設計・開発・保守を行う企業。多岐にわたる業界向けにITソリューションを提供し、技術力と柔軟な対応力が強みです。
譲受企業の概要
セグエグループ:ITソリューション、クラウドサービス、セキュリティ対策など幅広いITサービスを提供する企業。企業のデジタルトランスフォーメーションを支援し、持続可能な成長を目指しています。
M&Aの目的・背景
本件のM&Aは、セグエグループが自身のITソリューション事業を強化し、サービス提供能力を拡大するための戦略的な一環です。テクノクリエイションの高度な技術力と豊富な開発経験を取り込むことで、セグエグループは顧客の多様なニーズに対応する能力を向上させ、競争力を高めることを目指しています。また、テクノクリエイションとのシナジー効果により、新たなビジネスチャンスの創出と既存サービスの向上が期待されます。
M&Aの手法・価格
実行時期:2024年6月(予定)
手法:株式取得
譲渡金額:非開示
テモナとサックルのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
サックル:SES事業、システム受託開発事業など
買い手企業の事業内容
テモナ:BtoC事業者向けのクラウド型システム「サブスクストア」などの運営
M&Aの実施目的
買い手企業:開発力の強化、多様なソリューション開発の実現
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [6] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2022年4月 |
結果 | サックル株主がテモナに全株式を売却 |
売却金額 | 3億円 |
プロジェクトカンパニーとクアトロテクノロジーズのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
クアトロテクノロジーズ:SES事業
買い手企業の事業内容
プロジェクトカンパニー:DX戦略立案、UI/UXの改善など
M&Aの実施目的
買い手企業:システム開発やソフトウェアテストのノウハウ獲得
売り手企業:人材採用・育成の加速
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [7] | |
スキーム | 株式譲渡、事業譲渡 |
実施時期 | 2022年10月 |
結果 | クアトロテクノロジーズ株主がプロジェクトカンパニーに全株式および労働者派遣事業を売却 |
売却金額 | 株式譲渡:3億8,500万円 事業譲渡:1億円 |
Kaizen PlatformとハイウェルのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
ハイウェル:SES事業、デジタルプロモーション事業
買い手企業の事業内容
Kaizen Platform:DX推進の支援事業
M&Aの実施目的
買い手企業:DXソリューションの提供ラインナップ拡大、SES事業の新規開始
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [8] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2022年10月 |
結果 | ハイウェル株主がKaizen Platformに70%の株式を売却 |
売却金額 | 4億9,000万円 |
Branding EngineerとTSRソリューションズのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
TSRソリューションズ:SES事業
買い手企業の事業内容
Branding Engineer:ITエンジニアと企業のマッチングサービス運営など
M&Aの実施目的
買い手企業:クロスセルの実現、ベテランIT人材の確保
売り手企業:営業力や人材採用力の強化、顧客間口拡大などのシナジー創出
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [9] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2022年2月 |
結果 | TSRソリューションズ株主がBranding Engineerに全株式を売却 |
売却金額 | 3億2,100万円 |
インソースとビー・エイ・エスのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
ビー・エイ・エス:SES事業、システムサポート事業
買い手企業の事業内容
インソース:ITサービス事業、研修事業など[10]
M&Aの実施目的
買い手企業:DX関連サービスの拡充
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [11] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2022年6月 |
結果 | ビー・エイ・エス株主がインソースに全株式を売却 |
売却金額 | 非公表(買い手企業における純資産の15%未満) |
アイフリークモバイルとグラングループのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
グラングループ(グランディール他数社):SES事業
買い手企業の事業内容
アイフリークモバイル:モバイルコンテンツ事業、自社アプリ開発事業
M&Aの実施目的
買い手企業:IT技術者の確保
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [12] | |
スキーム | 事業譲渡 |
実施時期 | 2022年12月(予定) |
結果 | グラングループがアイフリークモバイルに技術開発部門の一部及び人的資産等を売却 |
売却金額 | 非公表 |
パワーソリューションズとエグゼクションのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
エグゼクション:SES事業
買い手企業の事業内容
パワーソリューションズ:金融機関向けのシステムインテグレーション事業
M&Aの実施目的
買い手企業:開発スキルなどの相互補完による事業拡大
売り手企業:人材確保、技術力の向上
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [13] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2021年4月 |
結果 | エグゼクション株主がパワーソリューションズに全株式を売却 |
売却金額 | 3億1,500万円 |
ミナトホールディングスとアイティ・クラフトのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
アイティ・クラフト:SES事業
買い手企業の事業内容
ミナトホールディングス:メモリーモジュール等の製造・販売、システム開発関連事業など
M&Aの実施目的
買い手企業:システム開発関連分野における事業拡大
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [14] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2021年2月 |
結果 | アイティ・クラフト株主がミナトホールディングスに全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
クレスコとエニシアスのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
エニシアス:SES事業、アプリ開発事業など
買い手企業の事業内容
クレスコ:システム開発、ITコンサルティング
M&Aの実施目的
買い手企業:クラウド関連事業の取得
売り手企業:自社ビジネスの規模拡大[15]
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [16] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2020年4月 |
結果 | エニシアス株主がクレスコに全株式を売却 |
売却金額 | 2億8,000万円 |
夢真ホールディングスとアローインフォメーションのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
アローインフォメーション:SES事業
買い手企業の事業内容
夢真ホールディングス:ITエンジニアの派遣事業、建設技術者の派遣事業
M&Aの実施目的
買い手企業:IT業界における上流工程への参入、人材育成力の強化
売り手企業:営業販路開拓の促進
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [17] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2020年4月 |
結果 | アローインフォメーション株主が夢真ホールディングスに全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
フーバーブレインとGHインテグレーションのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
GHインテグレーション:SES事業
買い手企業の事業内容
フーバーブレイン:サイバーセキュリティのソリューション事業
M&Aの実施目的
買い手企業:即戦力となるエンジニアの確保、5G市場への進出
売り手企業:買い手企業が有する信頼度やブランドなどの活用によるエンジニア採用・教育の強化
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [18] | |
スキーム | 株式譲渡、株式交換 |
実施時期 | 2021年4月 |
結果 | GHインテグレーション株主がフーバーブレインに70%の株式を売却、残りの株式は株式交換によって買い手企業が取得 |
売却金額 | 1億8,600万円(株式譲渡の価格) |
KENTEMとルイーダアカデミーのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
ルイーダアカデミー:SES事業、プログラミング教育事業など[19]
買い手企業の事業内容
KENTEM:建設業向け施工管理ソフトウェアの開発・販売[20]
M&Aの実施目的
買い手企業:開発体制の強化、エンジニアの育成強化
売り手企業:買い手企業が有するITノウハウの活用による事業拡大[21]
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [19] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2020年12月 |
結果 | ルイーダアカデミー株主がKENTEMに全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
ITbookとRINETのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
RINET:SES事業、システム受託開発事業[22]
買い手企業の事業内容
ITbook:ITコンサルティング事業、システム分析サービスなど[23]
M&Aの実施目的
買い手企業:既存事業とのシナジー創出、新規事業分野への進出
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [22] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2018年8月 |
結果 | RINET株主がITbookに全株式を売却 |
売却金額 | 1億円 |
ナレッジスイートとフジソフトサービスのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
フジソフトサービス:SES事業
買い手企業の事業内容
ナレッジスイート:クラウドサービスの開発・販売
M&Aの実施目的
買い手企業:事業領域の拡大、先端的な技術を有するIT人材の育成
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [24] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2018年6月 |
結果 | フジソフトサービス株主がナレッジスイートに全株式を売却 |
売却金額 | 6億円 |
ナレッジスイートとビクタスのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
ビクタス:SES事業[25]
買い手企業の事業内容
ナレッジスイート:前述の事業を運営
M&Aの実施目的
買い手企業:優秀なエンジニアの確保、クラウドサービス開発体制の強化
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [26] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2018年10月 |
結果 | ビクタス株主がナレッジスイートに全株式を売却 |
売却金額 | 3億円 |
アイフリークモバイルとリアルタイムアニバーサリーのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
リアルタイムアニバーサリー:SES事業
買い手企業の事業内容
アイフリークモバイル:スマホ向けコンテンツ事業、IT技術者の育成事業
M&Aの実施目的
買い手企業:人材補強、効率的な業務体制の構築
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [27] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2018年12月 |
結果 | リアルタイムアニバーサリー株主がアイフリークモバイルに全株式を売却 |
売却金額 | 2,270万円 |
日本企画とアビリティ・クリエイトのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
アビリティ・クリエイト:SES事業
買い手企業の事業内容
日本企画:SES事業
M&Aの実施目的
買い手企業:業容拡大、優秀な人材や取引先の確保
売り手企業:従業員の雇用継続、新事業への挑戦
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [28] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2021年8月[29] |
結果 | アビリティ・クリエイト株主が日本企画に会社売却 |
売却金額 | 非公表 |
インフォメーションサービスフォースとデージー・テクノロジーズのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
デージー・テクノロジーズ:SES事業
買い手企業の事業内容
インフォメーションサービスフォース:SES事業
M&Aの実施目的
買い手企業:情報技術事業の拡大
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [30] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2016年9月 |
結果 | デージー・テクノロジーズ株主がインフォメーションサービスフォースに78.13%の株式を売却 |
売却金額 | 7,812万5,000円 |
インフォネットとスプレッドシステムズのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
スプレッドシステムズ:SES事業、受託開発
買い手企業の事業内容
インフォネット:Webサイト構築・運用保守の代行など
M&Aの実施目的
買い手企業:安定的な収益を見込める事業の獲得、技術力の向上、優秀な人材の確保
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [31] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2020年4月 |
結果 | スプレッドシステムズ株主がインフォネットに全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
ISIDインターテクノロジーとキャスレーコンサルティングのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
キャスレーコンサルティング:SES事業
買い手企業の事業内容
ISIDインターテクノロジー:広告や金融などの分野におけるシステム開発事業
M&Aの実施目的
買い手企業:SES事業におけるシナジー効果の創出
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [32] | |
スキーム | 事業譲渡 |
実施時期 | 2020年8月 |
結果 | キャスレーコンサルティングがISIDインターテクノロジーにSES事業を売却 |
売却金額 | 非公表 |
SHIFTとバリストライドグループのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
バリストライドグループ:SES事業[33]
買い手企業の事業内容
SHIFT:ソフトウェアの品質保証・テスト事業[34]
M&Aの実施目的
買い手企業:優秀なエンジニアの確保、IT業界にマッチした人材の創出・育成
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [33] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2016年11月 |
結果 | バリストライドグループ株主がSHIFTに全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
シティコネクションとゼロディブのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
ゼロディブ:SES事業、コンテンツ開発事業
買い手企業の事業内容
シティコネクション:ゲーム開発・販売
M&Aの実施目的
買い手企業:東北を拠点としたSES事業の発展、開発体制の強化
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [35] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2019年3月 |
結果 | ゼロディブ株主がシティコネクションに全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
ビジネスブレイン太田昭和と日本ペイメント・テクノロジーのM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
日本ペイメント・テクノロジー:SES事業、コンサルティング事業
買い手企業の事業内容
ビジネスブレイン太田昭和:システム開発、コンサルティング事業
M&Aの実施目的
買い手企業:シナジー創出による事業拡大
売り手企業:営業力の強化、新規顧客の獲得
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [36] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2018年12月 |
結果 | 日本ペイメント・テクノロジー株主がビジネスブレイン太田昭和に全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
SICとアイ・シー・ティー二十一のM&A【IT×SES】
売り手企業の事業内容
アイ・シー・ティー二十一:SES事業
買い手企業の事業内容
SIC:情報通信業
M&Aの実施目的
買い手企業:エンジニアの確保、組織体制の強化
売り手企業:代表者の高齢化にともなう事業承継
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [37] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2018年8月 |
結果 | アイ・シー・ティー二十一株主がSICに会社売却 |
売却金額 | 非公表 |
メディアジョイントとイマークのM&A【SES×SES】
売り手企業の事業内容
イマーク:SES事業、ITの営業支援[38]
買い手企業の事業内容
メディアジョイント:システム開発[39]
M&Aの実施目的
買い手企業:技術者の調達力強化、新規販路の拡大
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [38] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2018年1月 |
結果 | イマーク株主がメディアジョイントに全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
他業界の買い手企業によるM&A・買収・売却事例
次に、他業界の買い手企業に対するSES会社の売却事例を5例お伝えします。
FPGとケンファーストのM&A【不動産×SES】
売り手企業の事業内容
ケンファースト:SES事業など
買い手企業の事業内容
FPG:リースアレンジメント事業、不動産事業など
M&Aの実施目的
買い手企業:最先端IT技術の取り込み
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [40] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2020年4月 |
結果 | ケンファースト株主がFPGに全株式を売却 |
売却金額 | 5億7,500万円 |
アステックコンサルティングとインサイトのM&A【コンサルティング×SES】
売り手企業の事業内容
インサイト:SES事業、システム受託開発事業[41]
買い手企業の事業内容
アステックコンサルティング:製造業向けコンサルティング事業[42]
M&Aの実施目的
買い手企業:自社サービスに関して、ソフトウェア面からの強力なサポート体制の構築
売り手企業:シナジー効果の創出、事業の拡大
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [42] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2021年2月 |
結果 | インサイト株主がアステックコンサルティングに全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
コプロ・ホールディングスとバリューアークコンサルティングのM&A【人材派遣×SES】
売り手企業の事業内容
バリューアークコンサルティング:SES事業
買い手企業の事業内容
コプロ・ホールディングス:人材派遣・紹介
M&Aの実施目的
買い手企業:グループ全体の成長
売り手企業:既存顧客の深耕、新規顧客の獲得
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [43] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2021年9月 |
結果 | バリューアークコンサルティング株主がコプロ・ホールディングスに全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
アウトソーシングとアスカ・クリエイションのM&A【アウトソーシング×SES】
売り手企業の事業内容
アスカ・クリエイション:IT・通信分野のSES事業[44]
買い手企業の事業内容
アウトソーシング:アウトソーシング事業[45]
M&Aの実施目的
買い手企業:IT・通信分野の強化、全国規模の受注拡大
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [44] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2012年1月 |
結果 | アスカ・クリエイション株主がアウトソーシングに97.5%の株式(全議決権)を売却 |
売却金額 | 3億30万円 |
シノケンオフィスサービスとコンピュータシステムのM&A【バックオフィス×SES】
売り手企業の事業内容
コンピュータシステム:SES事業、技術者教育[46]
買い手企業の事業内容
シノケンオフィスサービス:経理や情報システムなどのバックオフィス事業[47]
M&Aの実施目的
買い手企業:次世代システムの開発支援、開発プロジェクトの加速
売り手企業:継続的なエンジニアの育成・獲得
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [46] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2021年2月 |
結果 | コンピュータシステム株主がシノケンオフィスサービスに全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
関東のSES会社と関西のSES会社のM&A
■売り手企業の事業内容
所在地 | 関東 |
---|---|
事業内容 | システムエンジニアリングサービス |
譲渡理由 | 後継者不在 |
■買い手企業の事業内容
所在地 | 関西 |
---|---|
事業内容 | システム受託開発/エンジニアリングサービス |
買収理由 | 事業拡大 |
■M&A実施目的
売り手企業:後継者不在及び今後の事業発展の為
買い手企業:エンドユーザーとの直接取引の拡大、顧客の業態の多様化、エンジニアの確保
[7]クアトロテクノロジーズの子会社化及び事業譲受(プロジェクトカンパニー)
[8]ハイウェルの子会社化(Kaizen Platform)
[9]TSRソリューションズの子会社化(Branding Engineer)
[10]会社概要(インソース)
[12]グラングループ事業の一部譲受け(アイフリークモバイル)
[14]アイティ・クラフトの子会社化(ミナトホールディングス)
[15]全株式譲渡によるクレスコグループへの参画(エニシアス)
[16]エニシアスの子会社化(クレスコ)
[17]アローインフォメーションの株式取得(夢真ホールディングス)
[18]GHインテグレーションの子会社化(フーバーブレイン)
[20]会社概要(KENTEM)
[21]株式会社ウィズテックの株式取得について(KENTEM)
[23]事業紹介(ITbook)
[26]ビクタスの子会社化に関するお知らせ(ナレッジスイート)
[27]リアルタイムアニバーサリーの子会社化(アイフリークモバイル)
[30]子会社によるデージー・テクノロジーズの株式取得(トライアンフコーポレーション)
[32]ISIDインターテクノロジーとの事業譲渡契約(キャスレーコンサルティング)
[34]会社概要(SHIFT)
[36]日本ペイメント・テクノロジーの子会社化(ビジネスブレイン太田昭和)
[37]東京都事業引継ぎ支援センターのマッチング(東京商工会議所)
[43]バリューアークコンサルティングの子会社化(コプロ・ホールディングス)
[44]アスカ・クリエイションの子会社化(アウトソーシング)
[45]会社概要(アウトソーシング)
[46]コンピュータシステムを完全子会社化(シノケングループ)
SES会社の主な売却手法(株式譲渡・事業譲渡・会社分割)
SES会社を売却する際に押さえておきたい手法は、株式譲渡、事業譲渡、会社分割後の株式譲渡の3つです。SES会社では、複数事業を持っていたり、生命保険等の節税(利益の繰り延べ)商品を活用していたりするケースが多く見受けられます。
そのような会社では、株式譲渡や事業譲渡のほか、会社分割も含めた手法の検討が有効です。それぞれの想定される主なケース、メリット・デメリット、会計税務(キャッシュフロー)について、簡単にまとめましたので、ご参考にしていただければと思います。
>>【実例つき】SES企業の価値試算シートを無料でダウンロードする
会社・事業の売却時に押さえておきたいM&Aの手法
■株式譲渡 | |
想定される主なケース | 売り手側が単一の事業である |
メリット | スピーディー/手続きが容易 (株式譲渡契約) |
デメリット | ・株主が分散していると説明や説得に時間労力がとられる ・資産負債や人材などの取捨選択がしにくい |
会計税務 (キャッシュフロー) | 株主に所得税がかかる (個人にお金が入る) |
■事業譲渡 | |
想定される主なケース | ・売り手側が複数の事業を持っており、そのうちの一部を譲渡する ・売り手側が個人事業主である |
メリット | 複数事業の一部譲渡が可能 |
デメリット | 時間がかかる/手続きがやや煩雑 *従業員と買い手の個別労働契約 *各種口座、各種契約の巻き直し |
会計税務 (キャッシュフロー) | 売り手側法人に法人税がかかる (法人にお金が入る) |
■会社分割後に株式譲渡 | |
想定される主なケース | ・売り手側が複数の事業を持っており、そのうちの一部を譲渡する ・売り手側に不動産・保険積立金など余剰資産が多額にある |
メリット | ・複数事業の一部譲渡が可能 ・余剰資産の切り離しが可能 |
デメリット | 時間がかかる/手続きがやや煩雑 *会社分割の法定手続きが必要 |
会計税務 (キャッシュフロー) | 所得税・法人税 (会社分割の選択スキームによる) |
>>M&Aスキーム・手法について、以下の記事で詳しく解説しています。
SESの会社・事業を売却するメリット
SES会社・事業の売却では、以下4つのメリットを期待できます。
会社・事業の売却益を獲得できる
SES会社を丸ごと売却する場合は株式の売却益、会社の支配権を残して事業のみを売却する場合は事業の売却益を獲得できます。
くわしくは後述しますが、一般的にSES会社・事業を売却すると、数年分の営業利益に相当する金額の売却益を得られます。買い手企業にとって魅力的な経営資源を持っている、などの条件に合致すればより高い価格で売却できる可能性もあります。
多額の売却益を獲得することで、主力事業や新規事業に資金を投入できます。また、会社の経営からリタイアして精神的・経済的に余裕がある老後の生活を送ることも可能です。
加えて、廃業せずに会社を売却するため、会社を畳む際にかかる費用が発生せずに済む点もメリットとなります。
後継者が不在の企業でも事業承継を行える
東京商工リサーチによると、2022年における情報通信業の後継者不在率は76.93%です。[48]他の業界と比べて代表者の年齢が若いことを考慮しても、後継者がいないことを理由に事業承継を行えないという課題を抱えるSES会社は少なくないと考えられます。また、帝国データバンクの調査によると、休廃業・解散している企業のうち、56.2%は当期純利益が黒字だったとのことです。[49]
以上2つのデータより、経営状態が悪くないにもかかわらず、後継者不在を理由に廃業せざるを得なくなるSES会社は一定数存在すると考えられます。後継者不足を理由とした廃業を防ぐ手段となり得るのが会社・事業の売却です。
SES会社を丸ごと売却(株式譲渡)することで、会社の支配権(≒経営権)を買い手企業に引き継がせることができます。つまり、後継者が不在のSES会社でも、外部の同業他社や優秀な経営者に事業承継できるのです。
経営の安定化・事業の成長加速を実現できる
SES会社を売却すると、基本的には買い手企業の傘下として事業の運営を継続します。資金力が安定しているSES会社や大手IT企業の傘下に入る場合、買い手企業の持つブランド力や資金、営業基盤などを活用して、自社のSES事業を運営できるようになります。
そのため、SES会社を売却する前と比較して、経営の安定化や事業の成長加速を実現できる可能性があります。
従業員の待遇や育成環境の改善を期待できる
大手IT企業に傘下入りすると、エンジニアをはじめとした従業員の待遇が向上する可能性があります。また、相手企業から新しい技術を教えてもらったり、エンジニア同士で人材交流を図ったりすることで、エンジニアの育成が加速する効果も期待できます。
加えて、待遇が良くなったり自社の知名度が高まったりすることで、優秀なエンジニアを採用しやすくなったり、離職率が低下したりする可能性もあります。
[48] 2022年「後継者不在率」調査(東京商工リサーチ)
[49] 全国企業「休廃業・解散」動向調査(2021年)(帝国データバンク)
SES会社の売却価格の相場
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SES会社の売却を検討する際に、「どのくらいの価格で売却できるのか?」は気になる部分かと思います。売却価格の目安を知るためには、相場の理解が役に立ちます。この章では、SES会社の売却価格に関する相場の簡易的な算出方法、売却価格の決め方をわかりやすく解説します。
簡易的な売却相場の算出方法
年倍法(年買法)による算出方法
中小企業のM&Aでは、時価純資産にのれん代(年間利益の数年分)を足し合わせた金額を売却価格の相場として考えることが一般的です。[50]なおこの算出方法は「年倍法(年買法)」と呼ばれており、SES会社の売却価格相場を簡易的に求める際にも役立ちます。足し合わせるのれん代は、2〜5年分とすることが一般的です。
◆売却価格の相場 = 時価純資産 + 営業利益 × 2〜5年分
たとえば時価純資産が7,000万円、各年の営業利益が3,000万円のSES会社について、3年分の営業利益をのれん代とした場合の売却価格相場は以下のとおり算出できます。
◆売却価格の相場 = 7,000万円+ 3,000万円 × 3 = 1億6,000万円
エンジニアの人数と単価を基準とする方法
SES会社の売却では、エンジニアの人数と単価を基準として相場の目安を算出することもできます。具体的には、以下の計算式を用いて相場を算出します。
◆売却価格の相場 = エンジニアの人数 × エンジニアの単価
最終的な売却価格の決め方
最終的な売却価格は、市場の状況や事業の成長性などを基準に企業価値や株主価値を算出し、その結果をもとに買い手企業との交渉によって決定します。
企業価値・株主価値とは
企業価値とは、投資家に対する企業全体の価値を表し、「株主価値+負債価値(債権者価値)」で計算できます。一方で株主価値は、企業価値のうち株主に帰属する価値であり、株主に帰属するキャッシュフローの現在価値を合計したものとなります。
企業価値・株主価値の評価方法
企業価値や株主価値を評価するM&Aのプロセスは「バリュエーション」と呼ばれます。バリュエーションの方法は、「インカムアプローチ」、「コストアプローチ」、「マーケットアプローチ」の3種類に大別され、それぞれの特徴やメリット・デメリットは以下のとおり異なります。
インカムアプローチ | コストアプローチ | マーケットアプローチ | |
特徴 | 将来の収益性を基準とする | 過去の蓄積である貸借対照表の純資産を基準とする | 市場取引の視点である過去のM&A事例や類似業種などを基準とする |
主な手法 | ○DCF法 ○配当還元法 ○残余利益法 | ○時価純資産法 ○簿価純資産法 | ○類似会社比較法(マルチプル法) ○類似取引比較法 ○市場株価法 |
メリット | ○将来的な収益性を反映できる ○各SES会社に固有の性質を反映できる | ○客観性の高い評価を行える ○評価を比較的容易に行える | ○客観性の高い評価を行える ○市場の状況を反映できる |
デメリット | ○主観や恣意によって評価が影響される | ○将来的な収益性を反映できない ○市場の取引状況を反映できない | ○短期的な市場の変動に左右される ○各SES会社に固有の性質を反映しにくい |
上記3種類の評価方法を把握し、自社や買い手企業、市場の状況などを踏まえた上で使い分けることが重要となります。また、複数の手法を併用し、より合理性のある評価を行うのも効果的です。
株価評価結果にはこだわりすぎないことが大事!
前述したとおり、最終的な売却価格は買い手企業との交渉によって決定されます。実際のM&Aでは、複数の買い手から提示を受けた結果が現時点における自社の評価となります。そのため、バリュエーションの結果にこだわりすぎないことが大事になります。
買い手企業が自社の有する経営資源(優秀なエンジニアの存在や技術力など)を高く評価してくれれば、バリュエーションの結果よりも高い金額で売却できる可能性があります。一方で、自社の希望金額よりも買い手企業によるバリュエーションの評価額が低かったり、バリュエーションの結果よりも買い手企業の希望買収額が低かったりする場合もあります。
たとえば、「自社の希望金額と買い手企業による評価額の間にギャップがあるものの、できるだけ早くSES会社を売却したい」という場合には、別のM&Aスキームを検討したり、希望金額に近い提案を行う買い手候補を探したりする、などの選択肢が考えられます。
また、SES会社の売却までに時間的な余裕がある場合は、数年かけて企業価値を高める選択肢もとれます。企業価値を高める場合には、プレデューデリジェンス(プレDD)を実施するのがおすすめです。
プレDDとは、M&Aや買い手企業による本格的なデューデリジェンスに先立って、売り手企業の財務状況や収益性、成長性などを分析するプロセスです。プレDDの実施により、M&Aに関係するリスク項目や企業価値を高める上で必要となる要素などを洗い出すことが可能です。
SES会社を高く売却するための交渉術
SES会社を高い金額で売却するにはコツがあります。コツとなる交渉術を知っているかどうかで、高値で売却できる可能性は変わってきます。この章では、事前準備と交渉時に分けて、高い金額で売却するための交渉術をお伝えいたします。
事前準備として行うべきこと
SES会社の売却前にあらかじめ準備した方が良いこととして、以下の4点があります。
経営状況をよく把握する
SES会社の売却金額は、営業利益や市場シェアなどの経営状況によって変わってきます。したがって、まずは経営状況を入念に把握することが重要となります。経営状況に問題点があれば、事前にできる限り解決しておくことが最善策となります。
たとえば営業利益が赤字の場合は、有利子負債の削減や不要な固定費の削減などにより、黒字化を図ることが効果的です。赤字を黒字に変えるだけでも、高値で売却できる可能性は大きく高まります。
買い手が魅力に感じる強みを把握する
買い手がどのような強みに魅力を感じるかを把握しておくことも重要です。たとえばSES会社が買い手企業の場合、人材不足の課題を解決する目的でM&Aを行うケースが多いです。したがって、優秀なエンジニアやシステム開発に関する技術力などを高く評価する可能性が高いと考えられます。
買い手が魅力に感じる強み(経営資源)を持っているSES会社は、そうではない会社と比べて高値で売却できる可能性が高まります。そのため、買い手が魅力に感じる強みを把握し、それを自社が持っているかどうかを確認することが重要です。
保有していない場合は、強みを確保・強化するのが最善策となります。具体的に買い手企業が強みと感じる要素はケースバイケースですが、一般的には以下の要素が強みとなります。
○優良な財務状況
○優れた技術を持つエンジニア
○汎用的な技術・ノウハウ
○安定的な収益に直結する取引先
○技術者の教育体制(次項で解説)
エンジニアの教育体制を整えておく
SES会社の買い手企業は、前述のとおりエンジニアなどの人材確保を目的としてM&Aを行うケースが多いと言われています。そのため、現時点におけるエンジニアの量・質だけでなく、「優秀なエンジニアを育成できる環境があるかどうか」という中長期的な要素も評価対象となります。
したがって、エンジニアの教育体制を整備することも、SES会社を高く売却できる可能性を高める手段として効果を発揮します。たとえば、社員が最新技術を学ぶ際にかかる費用の一部を補填したり、定期的に勉強会を社内外で実施したりする施策が考えられます。
また、優秀なエンジニアを育成するだけではなく、育成したエンジニアが社外に流出する事態を防ぐ施策も求められます。具体的には、待遇の改善や福利厚生の充実、成果が評価されるような制度の整備などが考えられます。
社会保険の加入状況をチェックしておく
すべての法人および5人以上の常時従業員を雇用している一部業種を除く個人事業所は、社会保険(健康保険、厚生年金)への加入が法律で義務付けられています。[51][52]正当な理由がなく未加入の場合、懲役刑や罰金刑、追徴金などが科されるおそれがあります。
ペナルティがあることはもちろんですが、買い手企業から見ても社会保険の未加入は印象が悪くなるおそれがあります。なぜなら、買い手企業から見て社会保険の未加入は「簿外債務(帳簿に載っていない債務)」となるためです。
したがって、SES会社を高く売却したいならば、社会保険の加入状況を確認し、未加入などの問題があれば迅速に解決しておく必要があります。
交渉時のポイント
買い手企業との交渉時には、以下3つの交渉術が役に立ちます。
複数の買い手候補と交渉する
売り手企業がまったく同じでも、買い手候補によってバリュエーションの結果は異なることが一般的です。
たとえば優秀なエンジニアを多く有するSES会社が売り手の場合、人材獲得を目的とする買い手候補である方が、そうでない買い手候補と比べて高く評価する可能性が高いです。また、SES会社の買収に対する緊急度が高い買い手候補であるほど、ある程度は高い金額でも売却できる可能性があります。
したがって、複数の買い手候補と交渉することが、高くSES会社を売却するコツとなります。できる限りたくさんの買い手候補と交渉するほど、より高い評価額を提示してくれる相手と出会える可能性が高まるからです。
また、複数の買い手候補と交渉することで、オークションのように買い手候補間で条件面の競争を促せる場合もあります。
買い手企業が魅力に思う自社の強みを積極的にアピールする
SES会社を高く売却するには、買い手企業との交渉で自社の価値を認めてもらう必要があります。買い手企業から魅力がある自社の強みを積極的にアピールし、価値を認識してもらうことが重要です。
自社の強みをアピールするには、前述のとおり買い手企業から見て魅力的な強みを整理することが重要です。また、整理した強みを買い手企業に伝わるようにアピールする必要があります。以下4つのポイントを押さえることで、自社の強みを最大限買い手企業に訴求できます。
○買い手企業のニーズを満たすことを明示する
○売上などの客観的なデータを使う
○他社よりも客観的に優れていること、差別化できていることを訴求する
○図やイラストなどの視覚的な訴求手段を用いる
経営課題をしっかり伝える
強みだけでなく、現時点の経営課題をしっかり伝えることも重要です。経営課題を正直に伝えることで、買い手企業から良い印象を持ってもらえる可能性があるためです。また、買収後に何をすべきかが明確となるため、PMI(経営統合)も計画的に行えます。
事前準備段階から、SES業界の現状に詳しい専門家のサポートを受けることも重要
SES会社を高い価格で売却するには、事前準備の段階からSES業界の現状に詳しいM&A専門家によるサポートを受けることも重要です。
SES会社を高く売却するには、バリュエーションの際にエンジニアや技術、取引先などの価値を正しく評価する必要があります。技術をはじめとした経営資源の価値を見極めるには、SES業界に関して詳細な知見を有していることが求められます。また、シナジーを最大限生み出せる買い手企業を見つけることも、取引価額を高く売却する上では重要な要素であり、そのためにもSES業界の知見が重要となります。
つまり、SES業界に詳しいM&A専門家のサポートを受けることで、自社の強みを実態に即して高く評価してもらえたり、シナジー効果を見込める買い手候補とマッチングしてもらえたりするため、結果的に高い価格で売却できる可能性が高まるのです。
また、M&Aのプロセスでは、契約書の作成やバリュエーション、デューデリジェンスなど、ファイナンスや法務などの専門知識を要する実務がたくさんあるため、専門家の協力を得ずに進めることは困難です。
そのため、SES会社を高い価格で売る目的だけでなく、M&Aを円滑に進める目的でも、専門家によるサポートは非常に重要になると考えられます。
[51] 適用事業所と被保険者(日本年金機構)
[52] 適用事業所とは(全国健康保険協会)
SES会社を売却する上での注意点
SES会社の売却は、社員や外注先のエンジニア、取引先、顧客などに悪影響を与えてしまい、トラブルの生じるおそれがあります。また、買い手企業との交渉やM&A後のタイミングでも、トラブルに発展するケースが考えられます。
トラブルを回避するためには、以下で紹介する4つの注意点を理解し、対策を講じることが重要です。
早い段階で会社や事業の売却に着手する
SES会社を売却するには、事前準備(企業価値の向上など)や買い手候補探し、資料作成、交渉、デューデリジェンスなど、たくさんの手続きを行う必要があります。そのため、会社を売りたいと思ってから実際に売却するまでには、相応の時間を要することが一般的です。
経営者の体調悪化や業績不振などを理由に慌てて売却しようとすると、買い手が見つかる前に事業の継続が不可能となったり、準備に十分な時間を割けなかったことで安い価格で売却せざるを得なかったりする事態が考えられます。
こうした事態を防ぐためにも、早い段階でSES会社・事業の売却に着手することが大切です。早い段階からM&Aの準備を進めることで、希望条件に合致する買い手候補を慎重に探したり、企業価値の向上に十分な時間を確保したりできます。
また、業績が好調な段階からM&Aの準備を進めれば、より高い価格でSES会社を売却できる可能性もあると考えられます。
関係者への影響を考慮して売却相手を決める
SES会社の売却によって支配権が買い手企業に移ると、基本的には売却先が従業員の待遇や取引先との契約条件などを決定できるようになります。そのため、売却先次第では、従業員や取引先などの関係者に悪影響が生じると考えられます。
たとえば顧客との長期的な関係性よりも短期的な利益を重視する買い手企業の場合、不利な契約条件やサービスの品質低下などにより、顧客に迷惑を与えるおそれがあります。また、待遇の悪化によって従業員のモチベーションの低下などを招く事態も考えられます。
こうした事態を防ぐためにも、従業員や取引先などの関係者を大事にしてくれる買い手企業にSES会社を売却することがおすすめです。
デューデリジェンスの準備・実務に注力する
M&Aが成立するかどうか、希望条件に近い形で合意できるかどうかは、買い手企業およびM&Aの専門家が行うデューデリジェンスの結果に大きく左右されます。
デューデリジェンスによって多大な簿外債務などのマイナス要素が発見されると、会社の評価額が減額されたり、M&Aの契約が白紙となったりするおそれがあります。したがって、デューデリジェンスで問題となり得るマイナス要素に関しては、事前に対処してできる限り減らしておくことが大切です。
また、デューデリジェンスの際には、資料(財務諸表など)の提出が求められるなど、売り手企業の協力も不可欠です。そのため、事前に専門家と協力して資料を準備しておくなどして、円滑にDDのプロセスを進められるようにすることも重要です。
従業員に会社売却する旨を伝える際には、タイミングに注意する
従業員にとって、M&Aは自身の職場環境や働き方、待遇などが大きく変わる可能性のあるイベントです。そのため、M&Aの実施を知ることで、待遇悪化などの事態を不安に思い、モチベーションが低下したり、転職したりするおそれがあります。
こうした事態を防ぐためにも、SES会社の売却が確定したタイミングで、M&Aを行う旨を従業員に伝えるのが最善策となります。また、買い手企業との間で従業員の待遇を維持もしくは向上する旨を確約しておくのも効果的です。
会社売却する旨と併せて、待遇が維持される(または向上する)旨を従業員に伝えれば、安心してもらえるため、モチベーションの低下や離職を防ぎやすくなります。
まとめ
SES業界の市場規模は右肩上がりに拡大しており、それに伴って人材の確保や事業規模の拡大を行う重要性は高まると考えられます。こうした重要な課題を達成する手段としてSES会社の売却は選択肢の1つとなります。
今回お伝えしたSES会社の売却に関する手法や交渉術などを参考に、M&Aの実施を検討していただけますと幸いです。
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417名(グループ全体 / 2023年10月現在)
税理士(試験合格者含む)56名
公認会計士(試験合格者含む)15名
特定社会保険労務士2名
社会保険労務士(試験合格者含む)12名
弁護士 2名
相続診断士41名
中小企業診断士1名
行政書士4名
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