
監修者:中村 亨 (日本クレアス|コーポレート・アドバイザーズ 代表 公認会計士・税理士) |
本記事では、会社売却の事前準備としてのプレデューデリジェンス(プレDD)について解説します。プレDDを行う理由、M&Aリスクを低減し、企業価値を高めるポイントとは?
事業承継の選択肢としてM&Aが増えている理由
中小オーナー企業の事業承継の選択肢として、M&A(第三者への承継)は一般的になりつつあります。親族承継では該当者がいない、社内承継ではNo2はいるもののオーナー社長と年齢が近く、かつ営業・開発・技術などすべてを担ってきたオーナー社長の後を継ぐのは難しい、そのようなケースが多いためです。
これまで「消去法」で最後の選択肢として考えられがちであったM&Aですが、成功させるためには数年単位の準備期間が必要であるため、親族承継、社内承継、M&Aという順に検討するのではなく、3つ同時に、もしくは「M&Aこそ一番初めに検討すべき」と言えます。
M&Aを選ぶオーナー社長のインセンティブ(心情)は?
オーナー社長がM&Aの検討を始めると、一般的に次のような気持ちが湧いてくるため、それを前提としながら事前準備を進めていく必要があります。
高く売りたい
創業者利潤を確保したい(創業家や出資者)
正当に評価されたい
絶対額も大事だが、相対的な価格(正当な評価が欲しい)
よいM&Aでありたい
相手方の評判(残る従業員・取引先にとってもよい相手)
早く決着させたい
精神的負担(経営とM&A準備の両立、孤独感の増加)
M&A成功のための事前準備(短期・中期)

価値を上げるための事前準備は、2~5年程度の中期視点の話です。一方、アドバイザーの選任、相手先探しや条件交渉などは、半年~2年程度の短期視点の話です。2年~5年かけて価値を上げるためのポイントとして、まず財務内容と収益性、成長性と業界構造を確認します。

一般的に評価されやすいのは、次のような状態の会社です。
財務内容と収益性(BS、PL)
高く評価されやすいのは・・・
⇒借入が少ない、設備投資や在庫が少ない(キャッシュの回転が良い)、利益率が高い、売上・利益が成長過程にある、会社規模が大きい など
成長性と業界構造
高く評価されやすいのは・・・
⇒市場拡大している、差別化できている(ただしニッチすぎると相手が見つかりにくい)、契約の継続率が高い、合理化余地がある など
※顧客の属性はシナジー検討のうえで重要だが、評価の基準はケースバイケース
もう一つ重要なのは、管理体制と組織運営です。M&Aにおいて買い手は次のようなポイントを確認していきます。
管理体制と組織運営
買い手からみた確認ポイントは・・・
全般的事項
オーナー経営者への依存度合い、権限移譲の度合、リスク管理(BCP、災害対応保険)
財務・BSの適正性
資産評価の適正性、負債項目の網羅性(退職金、未払残業代)、月次決算スピード
人事・労務
各種規定の存在と網羅性・実態とのギャップ・適法性、研修制度の有無、人事評価制度の有効性
法務
重要な契約書の有無や不利益事項の存在、未解決訴訟、潜在的訴訟事項の有無、株主の状況
IT
災害等への対応(クラウド化)、サーバー攻撃への対応、情報漏洩対策

財務内容や収益性は当然大事ですが、買い手によるデューデリジェンスの結果、管理体制が悪く組織運営ができていない、という結果になると、PMI(M&A後の統合作業)に労力がかかる、ということになり、価格にも影響を与えます。そのため、時間的余裕がある場合には、売り手による事前調査「プレデューデリジェンス(プレDD)」の実施をお勧めします。
▼以下の記事では、財務デューデリジェンス/人事労務デューデリジェンスについて解説しています。
プレデューデリジェンス(プレDD)とは
プレデューデリジェンス(プレDD)では、【1】財務内容と収益性(BS、PL)、【2】成長性と業界構造、【3】管理体制と組織運営の3つの視点から「M&Aリスク低減」と「企業価値の向上」のために有益な情報を調査し、改善事項とともに報告します。
プレDDの一般的な調査項目は、対象の状況や調査目的によっても変わりますが次の通りです。
【1】財務内容と収益性(BS、PL) |
・資産評価の適正性、負債の網羅性 ・実態純資産の把握 ・収益構造の把握 ・オフバランス項目チェック |
【2】成長性と業界構造 |
・マーケットの拡大余地 ・強み、弱み、参入障壁 ・顧客属性 |
【3】管理体制や組織運営 |
・全般的事項(組織図、決裁権限、会議体の区分、各部門の方針と伝達の状況、各種規程の存在と運用、BCP) ・財務会計(財務・決算に関する内部統制の適切性、会計方針の適切性、予算制度と事業計画の有無と実効性、阻害要因、月次決算のタイムリーさ、内部監査の実施状況、税務調査の実績) ・人事・労務(人事労務に関する各種規程の存在の網羅性と運用のサンプルチェック、研修制度の有無、人事評価制度の有効性) ・法務(未解決訴訟の有無、株主・株式の状況) ・IT(IT投資の実績と計画) |
【4】株価算定 |
・時価純資産法、EBITDAマルチプル等による株価算定 |
一方、今すぐに会社売却をしたい、という場合には、「M&Aの相場」と「自社の価値」の把握ができる「企業価値シミュレーション(無料)」をご活用下さい。
まとめ
本記事では、会社売却の事前準備として、M&Aリスクを低減し、企業価値を高めるプレデューデリジェンス(プレDD)について紹介しました。M&A実施までに数年程度の時間的余裕がある場合には、プレDDの実施をお勧めします。
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