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歯科医院の閉院手続きガイド|患者・スタッフの対応、承継・居抜き売却の選択も
監修者:伏江 亜矢 株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長
歯科医院、医療法人(クリニック・病院)、介護業界など担当

歯科医院は経営不振や後継者不在などを理由に年間1,400件以上が閉院しています。閉院を決めたら、患者やスタッフへの対応方針や設備機器などの処分・売却方針、閉院までのスケジュールについて検討します。本記事では歯科医院の閉院の手続きや留意点をわかりやすく解説します。

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歯科医院の閉院手続き

歯科医院の閉院にあたっては、患者やスタッフへの対応のほか、行政手続きや設備や物件などの処分・売却など、余裕を持ったスケジュールで入念な準備を行うことが望ましいです。検討開始時期としては、閉院の1年前頃から詳細なスケジュールを検討されることをおすすめします。関連法令のほか、税金面や労務など様々な留意事項がありますので、早めに顧問税理士・弁護士・社労士・行政機関などに相談されることが望ましいです。

関連記事:歯科医院売却・承継の流れ・相場・税金をわかりやすく解説

歯科医院閉院時に検討が必要な事項

歯科医院閉院時に検討が必要な事項としては主に次の6つです。[3]

・歯科診療所・設備の売却・処分(居抜き売却)
・医療機器の処分
・残存医薬品の処分
・保管義務のある書類の保管方法
・スタッフ・取引業者への告知時期
・患者への告知時期

歯科診療所・設備の売却・処分(居抜き売却)

歯科診療所の不動産を自社で所有している場合には不動産売却を検討します。賃貸の場合には、居抜き売却を検討します。

医療機器の処分

医療機器のなかで、X線機器は廃棄証明取得が必要です。またX線フィルムは3年間保管が必要となります。

残存医薬品の処分

残存医薬品については、返品可能・不可能の分類と廃棄方法について検討します。

特に返品不可能な医薬品を処分する場合は要注意です。

保管義務のある書類の保管方法

カルテ5年間・X線フィルム3年間という保管義務のほか、保管義務が課されている物をチェックします。

スタッフ・取引業者への告知時期

スタッフ・取引業者への告知時期は、3ヶ月前程度が目安となります。

患者様への告知時期

患者様への告知時期は、スタッフ・取引業者への告知が完了後、随時が目安となります。

歯科医院閉院に必要な手続き書類一覧

医院の閉院届に関連するものとしては、以下の5つです。[3]

申請先提出先
1.診療所廃止届
  X線廃止届
保健所
2.保険医療機関廃止届厚生局
3.麻薬廃止届都道府県庁
4.事業廃止届(完全廃業の場合)税務署
5.医師会退会届(加入者のみ)医師会

スタッフの社会保険関連の手続きとしては、主に以下の4つです。[3]

申請先提出先
1.雇用保険適用事業所廃止届
  雇用保険喪失届
  雇用保険離職票
ハローワーク
2.労災保険確定保険料申告労働基準監督署
3.健康保険喪失届+健康保険証回収健康保健加入団体
4.スタッフの退職証明書の発行院内

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歯科診療所の新規開業・閉院の最新状況

厚生労働省の医療施設調査(2023年12月末)によると、全国の歯科診療所の数は、67,004件でした。[1]

直近の新規開設数と廃止数(2021年10月~2022年9月の1年間)を見てみると、新規開設数は1,333件、再開は107件、廃止数は1,410件、休止は174件となっており、稼働している歯科診療所数は年間で144件減少となっています。[2]

[1] 医療施設動態調査(毎月末概数)

[2]令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況

歯科医院の主な閉院理由は?

院長の後継者不在

歯科診療所67 ,755 件(2022年10月1日時点)のうち、開設者別にみた施設数は、個人50,896 件(75%)、医療法人16,241 件(24%)となっており、個人の歯科医院の割合が多くを占めています。[2]

個人の歯科医院の場合には、院長の歯科医師が退任すると歯科経営を継続できないケースが多いため、院長に後継者がいない場合には、院長である歯科医師の退任が閉院理由となります。

競争激化によるスタッフ不足や稼働率の低下による経営不振

分院展開をしている医療法人において、従業員で院長を務めている歯科医師の退職や体調不要などにより、歯科医師が不足し、閉院・他院との統合するケースが見られます。

また、歯科医院数はコンビニよりも多いと言われて久しいですが、特に都心部では競争は激化しており、集患がうまくいかず、稼働率低下により経営不振に陥る歯科医院も少なくありません。

医院承継・譲渡という選択肢

医院承継・譲渡の検討・実施時期

医院承継や譲渡という選択肢を検討される場合には、閉院後よりも開業中の承継が望ましいです。院長先生の体調不良やご病気等でやむなく閉院することになった場合以外には、開業中に承継することが、院長先生ご自身のほか、承継先のドクター、患者様にもメリットがあります。

承継者が決まった後は、閉院予定の3ヶ月前には、スタッフと取引業者に通知をします。その後患者様への通知となりますが、可能であれば承継者とともに1〜3ヶ月間くらい、引き継ぎをかねて患者様を診察することが望ましいでしょう。

歯科医院の承継・譲渡の評価

歯科医院の評価は譲渡対象となる資産の額(直近の帳簿価格や時価評価額など)のほか、営業権(のれん代)の評価が加算されることがあります。評価額を高くしたい場合には、承継直前の収益は高くする(業績好調の状態で承継する)ことがポイントになります。

営利企業のM&Aでは、一定の手法で評価した企業価値をベースとして、売り手・買い手の交渉により売却価格を決定します。歯科医院の場合も基本的には同様の仕方で価値を評価し、それをもとに価格交渉を行います。価値評価は売却価格の交渉準備として有用です。

歯科医院の価値評価方法として、比較的よく用いられるのは「時価純資産(≒不動産や設備の時価評価額)+営業権(診療ノウハウ、人材力、地域での認知度、集客力など)」で評価する方法です。

個人歯科医院の売却価格【計算例】

個人歯科医院では、時価純資産+営業権(医業利益の0~1年分程度)が目安

例えば、時価純資産1,000万円、医業利益1,000万円の歯科医院の場合、営業権の1年分とすると、価値評価額は2,000万円となります。

医療法人化された歯科医院の売却価格【計算例】

医療法人化された歯科医院では、時価純資産+営業権(医業利益の2~3年分程度)が目安

例えば、時価純資産2,000万円、医業利益500万円の歯科医院の場合、営業権の3年分とすると、価値評価額は3,500万円となります。

価値評価をもとにした価格交渉の流れ

価値評価の結果はあくまで目安に過ぎません。どのようなポイントを重視するかによって結果は変わりますし、予測や主観も入ります。評価する立場(売り手か買い手か)によっても変わり、売り手はより甘く、買い手はより厳しく評価しがちです。最終的には、価値評価を参考としながら、売り手と買い手の双方が納得する価格を交渉により決定します。

事業の引継ぎ易さ、立地、不動産・設備の状況などによって、先ほど記載した営業権の目安に±αの評価がされることになります。ご自身の医院がどの程度で売却できそうなのかを知るためには、歯科医院のM&A専門家に相談することが一番の近道になります。

個人歯科医院の売却手法

個人歯科医院の売却方法は主に次の2つです。

・事業譲渡
・居抜き売却(造作譲渡)

事業譲渡

事業を構成する権利義務(有形無形の資産、債権債務、契約など)の全部または一部を買い手に個別に移転します。

買い手は診療所・病院の開設許可を得ている(得る予定の)医師・医療法人などの非営利法人に限定されます。医療法人が経営上重要な資産を譲り受ける際には、理事会による承認が必要です。[4]

個人の歯科医院の事業譲渡では、以下のような資産および権利義務が承継対象となります。事業譲渡の対象となる資産などについては、事業譲渡契約書の中に定めますが、実際の譲渡行為については、売り手と買い手との間で譲渡することについて合意が確定できるものと、第三者の事前承諾が必要なもの(賃貸借契約、雇用契約、リース契約など)があります。

■各種設備・内装
※リース物件の場合、買い手がリース契約を承継するか、売り手が残債を支払い自己所有物件としてから譲渡するかのいずれか
■自己所有の土地・建物
■借地権・借家権・店舗賃借権
■スタッフの雇用契約
■歯科材料の卸売業者・納入業者との取引契約

居抜き売却(造作譲渡)

賃貸物件で営業していた事業者が、自ら設置した造作(内装・設備・機器など)を次の入居者にまとめて譲渡し、そのままの状態で物件を引き渡すことを、居抜き(造作譲渡)と言います。貸主の承諾のもとで次の入居者(買い手)が物件の賃借権を承継することが前提となります。

賃貸物件では通例、退去時に造作を解体して借りたときの状態に戻すこと(原状回復)が必要になりますが、居抜きを行うことで原状回復費用が不要になるだけでなく、造作をリユース業者などに売却する場合に比べて高額での売却が期待できます。

居抜きは事業譲渡の特別な場合(譲渡対象が賃借権と造作一式のみの場合)に当たります。純粋に資産のみの値段になるので、売却価格は一般的な事業譲渡よりも低くなるのが通常です。

[3] 医業経営ツールボックス 閉院編 Vol.1

[4] 医療法人の機関について(厚生労働省)

歯科医院のM&A売却・承継案件一覧|歯科居抜き・歯科開業物件

東京都世田谷区|歯科医院の事業譲渡(下北沢駅徒歩5分以内・設備一式つき)

強み・特徴

・下北沢駅徒歩5分以内の好立地
・設備一式(自社資産・リース)は引継ぎ対象
 (ユニット3台以上、CT、パノラマ、レセコンなど|減菌機器、ウォッシャーまで完備)
・開業から数年のため、機器等は新しい。
・診療内容は一般歯科、審美歯科、予防歯科など
・患者情報の引継ぎは応相談

神奈川県横浜市|歯科医院譲渡、歯科医師・スタッフ・設備一式(ユニット5台以上)引継可

強み・特徴

スタッフ設備一式引継ぎ可(ユニット5台以上、CTあり)。駅徒歩数分の好立地。
診療メニューは、一般歯科~インプラントやホワイトニングなどの審美歯科、予防歯科。
一日平均来患数約40人、自費割合20%程度。
歯科医師引継可。
診療所は賃貸借。

【1都3県】歯科医院の事業譲渡|矯正歯科専門/自由診療/駅直結ビルの好立地

強み・特徴

・駅直結のビル施設で利便性も良く、盛業中のデンタルクリニックとなります。
・現院長引退に伴う引継ぎ期間は、十分な期間を設ける等の柔軟な対応が可能です。
・スタッフ(歯科医師・歯科衛生士・助手)雇用の引継ぎを希望いたします。
・完全予約制クリニックであり、コロナ禍による影響もなく安定した経営状況となります。

愛知県一宮市)歯科医院の譲渡|好立地・歯科開業物件

強み・特徴

【立地】愛知県尾張地区。周辺に医療機関等が複数あり、集客しやすい立地。
【開業】10年未満

【診療メニュー】予防歯科・審美歯科など
【レセプト枚数】月300~400枚
【譲渡対象資産】 建物・建物附属設備・設備一式(CT・ユニット・バキューム・コンプレッサーなど/取得価格は2000万円以上)※譲渡対象資産は柔軟に調整可能 ※レセプトはリース契約

>>歯科医院のM&A売却・事業承継案件一覧(歯科居ぬき物件・歯科開業物件)はこちら

まとめ

本記事では、歯科医院の閉院を検討されている院長先生に知っておいて頂きたい手続きや検討事項などについて解説しました。閉院ではなく、医院承継や譲渡という選択肢を検討される場合には、閉院後よりも開業中の承継が望ましいです。ご病気等でやむなく閉院することになった場合以外には、開業中に承継することが、院長先生ご自身のほか、承継先のドクター、患者様にもメリットがあります。閉院検討をされる際には、まず顧問税理士や医院承継やM&Aの専門家に相談されることをおすすめします。

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伏江亜矢
監修者:伏江亜矢
株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長
金融機関で法人営業を担当後、2012年にコーポレート・アドバイザーズ入社。M&Aの事前準備から、候補先のソーシング、企業価値評価、条件交渉、クロージングまで一気通貫した支援を行っている。 ヘルスケア・ライフサイエンス(医療・介護・メーカー・卸商社)、IT・ソフトウエア(Webサービス、システム開発)、人材サービス(派遣、警備、ビルメンテナンス)などのM&A支援経験が豊富。 M&A成功のために必要な情報をわかりやすく解説するコラムサイト「よくわかるM&A」の運営責任者。
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■社員数
417名(グループ全体 / 2023年10月現在)
税理士(試験合格者含む)56名
公認会計士(試験合格者含む)15名
特定社会保険労務士2名
社会保険労務士(試験合格者含む)12名
弁護士 2名
相続診断士41名
中小企業診断士1名
行政書士4名

■関与先
法人 3,240社(うち上場企業85社)
社会福祉法人 133件
クリニック・医療法人・介護福祉等 593件
個人 4,015名
合計 7,981件

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