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美容室の居抜き売却手続き・相場・契約書・事例|高値売却のポイント解説

監修者:蛯原 大晴(株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部)
美容室・理容室業界担当

美容室の高値売却の可能性を上げるには、買い手企業と売り手企業とのシナジーが見込めることが重要です。本記事では、美容室サロンを高く売る方法から、売却の方法・流れ、売却する上で問題となりやすいポイントや成功ポイント等について、M&Aの実務に精通した専門家が詳しく解説します。

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美容室・整骨院・整体サロンのM&A・売却・承継案件一覧

神奈川県川崎市)美容室の事業譲渡|10席以上・好立地・駅徒歩5分以内|居抜き売却も可

強み・特徴


立地)神奈川県川崎市内、駅徒歩数分の好立地。
席数)セット面:10~20席、シャンプー台:5席以上、待合室あり。
譲渡対象資産) 建物・建物附属設備・設備一式。設備はパーマ用機器やシャンプー台などあり。

大阪府堺市)鍼灸整骨院1店舗の譲渡|ショッピングモール内の好立地

強み・特徴

【業歴】20年以上の営業実績
【運営体制】複数事業を運営する会社の代表者1名で対応。原則週5日・午前中のみの営業。
【財務】年間売上約1000万円以上、家賃(水道光熱費込)で年間約300万円。
【資産】譲渡対象資産としては、施術台(ベッド)3台、トレーニングマシーン等の事業に必要な設備一式。
【顧客】顧客層は40~80代中心。近隣に医療機関があり、集客しやすく新規営業(広告等)は特段していない。

関東)セラピスト養成スクール・整体サロンの運営事業|妊活・産前産後・更年期ケア領域

強み・特徴

【財務】純資産350万円、現預金400万円、借入なし、黒字。
【地域】関東・甲信越

当該領域のスクール運営・FC店舗展開、マーケティングなどのノウハウをお持ちの企業様にぜひご検討頂きたい案件です。

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美容室・理容室・エステサロンを高く売る方法

美容室・理容室・エステサロンを高く売るためのポイントを解説します。

美容室・サロンの収入増加やスタッフ処遇改善ができる先に売却する

【美容室経営者のお悩み例】
・先行きに不安がある
・人材が育っても辞めてしまう
・売上が伸びない
・収入を安定させたい
・長時間労働を改善したい
・休日を増やしたい
・経営管理を誰かに任せたい(接客に集中したい)

美容室やサロンのチェーン展開をしている企業のなかには、多くの経営課題(採用・人材育成や長時間労働など)を抱えている美容室やサロンを譲受け、独自の経営ノウハウに基づいてそれらの経営課題を解決することにより、店舗の売上・利益・スタッフの処遇を改善している企業があります。そのような企業は、経営改善後の利益(シナジー価値)を見込んだ価格提示も可能なケースが多くあります。

そのため、独自の経営ノウハウに基づいてそれらの経営課題を解決することができる企業を売却先として選ぶことで、相場よりも高い価格で売却できる可能性が高まります。

早期に検討を開始する

経営悪化や経営者の年齢・体調などの問題ですぐにでも退店しなければならないような状況に陥ってから店舗売却に取りかかった場合、戦略策定や買い手探し、貸主との協議などに時間をかけることができず、買い手との交渉においても不利になるため、満足のいく条件で売却を成立させることは難しいと考えられます。

時間的・資金繰り的に余裕がある段階で検討を開始することが重要です。

関連記事:店舗売却の基礎知識|飲食店などを売る方法・相場・費用・税金

適切なタイミング・方法で関係者との協議や情報開示を行う

居抜きでは貸主との協議が大きなポイントとなります。協議のタイミングや方法について、居抜きの専門家などと相談しながら十分に検討しておく必要があります。

事業売却の場合、貸主だけでなく、場合により従業員、取引先、債権者、債務者などの関係者から同意を得る必要が生じます。

また、従業員や取引先に対して事業売却に関する情報開示を適切に行うことは売却後の事業にとって重要であり、売り手側の義務として求められることがあります。

M&Aの専門家と相談しながら、これらの点について事前に検討しておくことが必要です。

リスク・問題点をチェックしておく

店舗内見やデューデリジェンスの際には買い手により設備の状態や財務状況などが調査されますが、売り手の方でも事前にリスク・問題点をチェックし、是正できる部分は是正しておくことで、売却をより有利に進められるようになります。

▼以下の記事では、売却の事前準備について解説しています。

居抜き以外の選択肢を考慮しないのであれば、居抜き専門の業者を利用するのがよいと考えられます。事業売却の場合はM&A仲介会社が適しています。

居抜きには店舗売却専門業者がおすすめ

居抜き専門業者は「店舗売却」や「店舗買取」の名称でサービスを展開し、造作譲渡の仲介や退店・開業コンサルティングなどを行っています。貸主との交渉についても相談が可能です。

多くの業者が自社サイトに居抜き売却案件を掲載して購入希望者を募集しています。買い手候補に対して直接営業により交渉打診を行うこともあります。

居抜き専門業者を利用すれば自分で探す場合に比べてはるかに広範囲の相手から買い手を探すことができるので、より高額での売却が期待できます。

居抜き業者の中には事業売却にも対応しているところがありますが、居抜きと事業売却(M&A)ではまったく異なったノウハウが求められるため、事業売却を考えるのであればM&A専門の業者に相談した方がよいと考えられます。

店舗の事業売却にはM&A仲介会社がおすすめ

M&A専門業者にはFA(ファイナンシャル・アドバイザー)、M&Aマッチングサイト、M&A仲介会社などがあります。

FAは売り手・買い手の一方とのみ契約し、依頼主の利益最大化を目指して専門的なサポートを提供します。上場・大手企業などがじっくりと時間・コストをかけて大きなM&Aを成功させようとするようなケースでは最適な相談先ですが、一般的な店舗売却には適しません。

M&Aマッチングサイトは売り手と買い手のマッチングに特化しており、交渉相手を見つけるところまでがサービス範囲です。それ以降は自社で直接交渉を行うか、別途FAやM&A仲介会社に支援を依頼することになります。

M&A仲介会社は売り手・買い手の双方と契約し、適切な相手とのマッチングやスムーズな取引をサポートします。中小企業・個人事業主の案件を得意としているところが多く、店舗の事業売却では最初に検討すべき相談先と言えます。

▼以下の記事では、M&Aアドバイザーについて解説しています。

美容室・理容室・エステサロンの相場価格

居抜きの相場

一般的な小規模店舗(10~15坪程度)の居抜きの場合、100万円~250万円程度が売却価格の相場と言われています。

高額売却につながる要因としては以下のような事項が挙げられます。とくに条件がよい店舗の場合、相場を上回る金額(例えば500万円程度)で売却できることもあります。

高額売却につながる要因の例
業種〇地域において開業ニーズが高い(供給過剰でない/供給が不足している)
〇中長期的にニーズの維持・拡大が期待される
立地〇アクセス・視認性が良好(駅周辺・繁華街、1階路面、幹線道路沿いで駐車スペースが十分など)
〇人通りが多い
サイズ・形状・間取り〇営業に手頃なサイズ(広すぎる・狭すぎる店舗は買い手が集まりにくい)
〇形状・間取りが一般的でスペースを有効に活用できる(変則的だとデッドスペースが生じてしまう)
〇他の業種・業態に転用しやすい(買い手の範囲が広がる)
設備〇新しい
〇手入れが行き届いていて清潔
〇法令や製品仕様に従って適切に設置されている
〇リース残債がない
〇他の業種・業態に転用しやすい
内装〇新しい
〇手入れが行き届いていて清潔
〇流行に沿っている
〇他の業種・業態に転用しやすい
賃貸条件〇家賃が相場より安い
〇貸主との関係が良好で、引き継ぎが容易
〇解約予告を出していない(解約予告を出してしまうと買い手を探す期間が限られる。買い手にそれが伝わり交渉上不利になることもある)

事業売却の相場

M&Aの売却価格は、企業価値評価をもとにして売り手・買い手の交渉により決定されます。

店舗の事業売却では、以下の式(年買法/年倍法)で価値評価を行うのが通例です。

 価値評価額
=譲渡する資産の時価-譲渡する負債の時価+営業利益(または経常利益)の1~5年分

「営業利益1~5年分」は店舗事業の収益力に対する評価です。利益は直近年度のものや、直近3年ほどの平均値が用いられます。

買い手としては、事業譲渡によって最初からまとまった形で経営資源を入手し、サービス開発・ノウハウ蓄積・人材採用・集客・認知獲得などにかかる時間を節約して、ある程度の収益性が担保された状態で店舗運営を開始することができます。

そうしたメリットに対する評価が「営業利益1~5年分」として表されます。

例えば、譲渡資産は造作一式(時価1,000万円)で、負債は譲渡せず、営業利益(1,000万円)の3年分を収益力として評価する場合、価値評価額は「1,000万円+1,000万円×3=4,000万円」となります。

事業売却の企業価値評価に影響する要因としては以下のような事項が挙げられます。

プラス要因

■資産・負債

〇造作の質・状態がよく、時価が高い
〇店舗の敷地・建物が自己所有で、時価が高い
〇そのまま引き継いで利用できる在庫が豊富にある

■収益力

〇利益が高水準で安定している、または成長している
〇立地がよい
〇認知度が高い
〇ニーズが安定(拡大)している業種に属する
〇有能な人材がおり、M&A後も継続的な雇用が期待できる
〇ノウハウ・ブランドなどを引継ぎやすい

マイナス要因

■資産・負債

〇リース債務などの負債も譲渡する必要がある
〇譲渡対象資産に潜在的な問題がある(設備の不調、周辺環境の問題、業法・建築法規・労働法の違反、売掛金の滞留・不良債権化など)

■収益力

〇業績が低迷している
〇立地が悪い
〇認知度が低い
〇ニーズが不安定な(低迷している/先細りの)業種に属する
〇重要な人材が離職する恐れが高い
〇ノウハウ・ブランドなどの引き継ぎが困難で、オーナーが変わることで顧客が流出する恐れが高い

現在のオーナーのもとで店舗が好成績を上げていたとしても、その事業を買い手がうまく引き継げないのであれば、企業価値評価における収益力の評価は下がります。

例えば、現オーナーの技術力や人柄、知名度などが集客力の源泉となっている店舗で、売却を機にオーナーが店を離れるケースでは、集客力の大半が引き継げないと判断され、収益力に対する評価がかなり低くなることがあります(例えば営業利益1年分など)。

そうした店舗であっても、現オーナーが売却後も店舗に在籍して中心的なポストを担ったり、一定期間は事業引継ぎに協力したりする取り決めにすれば、収益力の評価や売却価格を高めることができます。

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美容室・理容室・エステサロンの売却方法

居抜き売却(造作譲渡)

居抜きとは、賃貸店舗を現状のまま(内装・設備などの造作を解体せずに)次の借主に引き渡すことを言います。契約としては、造作一式の譲渡(造作譲渡)という形になります。

居抜きを行う目的は、主に退店コストの削減です。

賃貸店舗を退去する場合、通常であれば造作を解体して借りたときの状態(原状)に戻してから明け渡すこと(スケルトン渡し)が必要で、原状回復工事の費用がかかります。居抜きであればこの費用が不要になります。

また、6か月程度の解約予告期間が設定されているのが通例であり、貸主に解約を告げてから解約予告期間が経過するまでは賃料がかかります。この間に営業できない(営業しても採算がとれない)期間があれば、賃料が退店コストになります。

居抜きであれば、買い手が見つかり次第退店できるため、退店コストが削減できます。

ただし、居抜きを行うには貸主の同意が必要です。また、居抜き売却額の10%程度を承諾料として請求される場合もあります。

居抜きを禁止する条項が契約に含まれているケースもありますが、その場合も貸主との交渉で居抜きが可能になることがあります。

事業売却(事業譲渡)

事業売却とは、事業そのものを買い手に譲り渡すことを意味し、法律上は事業譲渡と呼ばれます。

店舗の事業は、下の表に挙げたような多種多様な資産・負債で成り立っています。事業売却では、これらの全部、または重要な部分をまとめて買い手に売却することで、事業を買い手に譲り渡します。

帳簿上の資産〇有形固定資産:造作(内装・什器・設備)、自己所有の敷地
・建物
〇無形固定資産:業務用ソフトウェア、借地権
〇流動資産:売掛金、棚卸資産(在庫)
帳簿外の資産〇収益力のもととなる無形の経営資源:運営ノウハウ、サービスメニュー、店名、ブランド、人材(雇用契約)、継続的な取引関係
帳簿上の負債〇買掛金
〇借入金
〇リース債務
〇退職金債務(退職給付引当金)
帳簿外の負債〇未計上の負債(残業代・退職金関係など)
〇労使問題・顧客トラブルなどによる訴訟・損害賠償リスク

居抜き(有形資産の一部である造作のみの譲渡)に比べ、はるかに広範囲の項目が取引対象となります。譲渡する資産・負債の範囲は売り手と買い手の協議で決定し、事業譲渡契約書に明記します。

買い手が従業員を引き継ぐ場合、従業員が売り手のもとでいったん退職して買い手と新たに雇用契約を結ぶ方法と、現在の雇用契約をそのまま買い手が承継する方法があります。いずれの場合も従業員の同意が必要です。

その他の契約や債権・債務についても、買い手が承継するためには相手方の同意が必要になります。また、造作を譲渡する場合は居抜きと同じく貸主の同意が求められます。

負債は譲渡対象に含めない(売り手において清算する)のが通例ですが、残債のあるリース設備をリース債務とともに譲渡するケースや、従業員の雇用と合わせて勤続年数を買い手が引き継ぐ(これまでの勤続年数分の退職金を買い手が将来的に負担する)ケースもあります。

事業売却は以下のような様々な目的で利用できます。

◆新たな事業や引退後の生活のための資金獲得

◆身内に後継者がいないオーナーが第三者に事業を譲渡し、ブランドや雇用を維持

◆(経営者以下現体制のままで)大手企業グループの一部となり、経営基盤を強化して事業成長を図る

◆不採算の店舗を譲渡し、経営資源を主要店舗に集中して、事業成長を図る

▼以下の記事では、事業譲渡について解説しています。

居ぬき売却する流れ    

居抜きは以下のような流れで行われます。

1.売却計画立案

2.貸主との居抜き交渉

3.買い手探し

4.内見・条件交渉

4.買い手と貸主の賃貸借契約交渉~造作譲渡契約締結

5.賃貸借契約解約

6.店舗引き渡し・対価受け取り

1.売却計画立案

売却の対象・時期、売却希望価格、売却対象外の資産・負債の扱い(清算方法など)を検討し、売却までの事業遂行方針も含め、売却計画を策定します。

居抜き業者を利用する場合、業者が店舗を実地に調査し、売り出し価格の査定を行います。査定に納得がいけば正式に業者に仲介を依頼します。業者を利用しない場合は自分で売り出し価格を決める必要があります。

2.貸主との居抜き交渉

貸主と以下の点について協議します。

◆居抜きへの同意

◆解約予告の要否

◆居抜きの承諾料

居抜きへの同意

通例、賃貸物件の賃借権は貸主の同意がなければ譲渡できません(契約書にそう明記されていなくても、民法612条[1]の規定により譲渡は制限されます)。

居抜きを行う場合、以下のいずれかの取引について貸主の同意を得る必要があります。通例は②の取引が用いられます(契約関係が明快で、契約条件の見直しも行えるため)。

①賃借権の譲渡(買い手が契約内容を引き継いで店舗の賃借人となる)

②売り手が現状のままで(造作解体を行わずに)賃貸借契約を解約し、造作を引き継いだ買い手が新たに賃貸借契約を締結して店舗の賃借人となる

解約予告の要否

②の取引を行う場合、解約予告の要否が問題となります。

貸主が居抜きを認める条件として解約予告を要求した場合、解約予告期間内に買い手を探さなければならなくなり、売り手としては不利な状況に立たされます。したがって、解約予告なしで居抜きを行えるよう貸主と交渉するのが得策です。

経営不振による退店などの場合、買い手がなかなか見つからずに退去が遅れるとコストがかさんでしまうため、貸主との交渉の時点で(あるいはしばらく買い手を探してみてから)解約予告を出し、期限が来たらスケルトン渡しに移行する、という考え方もあります。

居抜きの承諾料

現在ではまれなケースですが、居抜きに同意する条件として貸主が承諾料を求めてきたり、賃貸借契約に承諾料の規定が存在していたりすることもあります。契約書に規定がなければ貸主と金額について交渉します。

3.買い手探し

居抜き業者のサービスを利用するか、付き合いのある同業者や取引先のつてをたどるなどして、買い手候補を探します。

関連記事:ドラッグストア売却の価格相場・交渉術・手続き・最新M&A事例|2023年最新

4.内見・条件交渉

資料による情報交換や店舗内見を経て、譲渡価格などの条件交渉が行われます。

5.買い手と貸主の賃貸借契約交渉~造作譲渡契約締結

条件面で折り合いがついたところで、買い手候補が貸主との間で賃貸借契約に向けた交渉を行います。

買い手候補と貸主の交渉が落着し、買い手候補が入居審査に合格したら、造作譲渡契約を締結します。

5.賃貸借契約解約

貸主と退去日や保証金返還の金額・時期について協議した上で、賃貸借契約解約の取り決めをします。

6.店舗引き渡し・対価受け取り

造作譲渡契約にしたがって店舗を引き渡し、対価を受け取ります。

[1] 民法612条(e-Gov法令検索)

事業譲渡の流れ

事業譲渡は一般的に以下のような流れで行われます。

売却目的・戦略の検討

自社・競合・市場環境などの分析を行い、売却後の事業展開も考慮しつつ、売却の目的、希望価格、スタッフの処遇、買い手候補に求める条件などを検討し、売却戦略を策定します。

M&A取引では多方面の専門知識・ノウハウが求められることから、M&A仲介会社などの専門機関に支援を依頼するのが一般的です。自社に合った専門機関を選定することも戦略策定上重要なポイントです。

買い手探し

通例はM&A専門機関のサービスを利用して買い手候補を探します。

ノンネームシート(社名などの売り手が特定できる情報は伏せ、売却対象事業の概要や売却希望条件などを簡単にまとめた資料)を有望な買い手候補に提示し、交渉を打診します。

秘密保持契約締結~初期交渉

交渉相手が決まったら秘密保持契約を締結し、社名を含むより詳細な情報を交換して交渉を開始します。

相手企業に対する分析やより現実的な売却条件・売却スケジュールの検討などを行い、経営者同士の面談(トップ面談)で互いの考え方やM&Aに関する意思を確認します。

▼以下の記事では、M&Aの秘密保持契約書について説明しています。

基本合意締結

M&A取引の見通しが立ったところで基本合意を締結します。基本合意書には主に以下の内容が記載されます。

〇現時点での暫定的な合意内容(譲渡の対象・価格など)

〇以後の交渉・手続きに関する義務事項(独占交渉権、デューデリジェンスへの協力など)

▼以下の記事では、基本合意について説明しています。

デューデリジェンス

買い手側が売り手店舗の財務データを調べたり店舗内見などを行ったりしてM&Aに関わるリスクや問題点を精査します。これをデューデリジェンス(買収監査)と言います。売り手側は内部データの提供や内見立ち会いなどを通してデューデリジェンスに協力します。

最終交渉~事業譲渡契約締結

デューデリジェンスの結果を踏まえて最終的な条件交渉を行い、協議がまとまれば事業譲渡契約を締結します。

譲渡実行

譲渡対象資産・負債の1点1点を買い手に移転する手続きを行います。すべての手続きが完了した時点で事業譲渡が最終的に成立します。

売り手が株式会社で、事業の全部や重要な一部を譲渡する場合、譲渡実行前に株主総会で譲渡承認の決議を得る必要があります。[2]

[2] 会社法467条(e-Gov法令検索)

美容室の売却する上で問題となりやすいポイント

多くの業種に共通する一般的なポイントと、とくに製造業で問題になりやすいポイントがあります。

簿外債(労務問題)の有無

美容業界は従業員の定着率が低いとされ、その背景には労働環境や待遇の問題があると指摘されています。労務問題が大きな簿外債務(偶発債務)となる可能性は高いといえます。

残業代未払いや不当解雇などの問題があると、M&A後に元従業員から訴訟を提起され、損害賠償の負担やレピュテーションの低下などを引き起こす恐れがあります。

簿外債務(帳簿に載らない債務)については慎重な調査と検討が必要のため、専門家に対する早い段階での相談が良いかと存じます。

>>簿外債務について、アドバイザーに相談する

関連記事:財務デューデリジェンスとは|PMIを見据えた活用ポイントを解説

関連記事:人事労務デューデリジェンスとは|労務リスクと人事マネジメント上の課題抽出

優秀な美容師・継続顧客の流出

M&A成立前の段階から離職防止の対策を可能な限り講じておくことが重要です。

というのも、M&Aによる経営方針や職場環境変化が美容師の離職を引き起こす可能性があります。さらに、良い技術力・提案力を持つ美容師・多くの継続顧客を有する美容師が離職してしまう可能性があり、サービス品質の低下や顧客の流出などにつながります。

関連記事:事業譲渡の従業員への影響は?退職金・処遇・注意点を解説

売却成功に必要なポイント

売却を成功させる上で、一般的には以下のようなポイントが重要になります。

◆早期に検討を開始する(経営者引退や倒産が差し迫ってから行動を開始すると、好条件での売却や、納得のいく事業承継・雇用引継ぎは難しい)

◆余裕があれば、事前に自社に対するデューデリジェンス(プレデューデリジェンス)を行い、問題点と改善策を明確化し、数年程度かけて企業価値を高めてから売却する

◆相性のよい買い手企業を選ぶ

◆労務関係のコンプライアンスの確認・改善

◆従業員のモチベーション低下・人材流出の防止

◆会計処理の透明化、資産所有・資金移動におけるオーナー個人と会社の明確な分離

◆過度な競業避止義務(売却した事業と競合する事業を営むことを禁止する規定)を課されないように慎重に協議する

関連記事:酒蔵の廃業回避と売却事例2023|最新動向・メリット・手順・費用を解説

店舗売却にかかる費用・税金

事業売却にかかる費用・税金

費用

主な費用はM&A専門業者に支払う手数料です。手数料には以下の種類があり、料金体系は業者ごとに異なります(とくに着手金・リテイナーフィーの扱い)。

手数料の種類発生タイミング相場
相談料相談時無料のケースがほとんど
着手金契約時無料または100万円~200万円程度
リテイナーフィー契約後・月ごと無料または月額数十万円程度
中間報酬基本合意成立時無料または以下のいずれか
〇100万円~200万円程度
〇予想される成功報酬の10~20%程度
成功報酬譲渡契約成立時店舗売却などの小規模M&Aでは、譲渡価格の5%程度
企業価値算定費用専門的な算定を別途依頼する場合50万円~
デューデリジェンス費用専門的な調査を別途依頼する場合100万円~

税金

売り手が個人の場合、所得税・復興特別所得税(所得税の2.1%)・住民税、法人の場合は法人税・地方税が課されます。

消費税の課税事業者の場合、土地・建物・株式類・債権以外の譲渡には消費税の納付も必要です。一部の品目では印紙税もかかります。

 ■所得税・住民税

土地・建物や株式類の譲渡による所得は、他の所得とは分けて課税されます(分離課税)。「譲渡所得=譲渡価格-購入代金-購入・譲渡にかかった費用(手数料など)」がプラスの場合、一律で以下の所得税・住民税がかかります。

〇土地・建物(所有期間5年超):所得税15%、住民税5%[8]
〇土地・建物(所有期間5年以下):所得税30%、住民税9%
〇株式類:所得税15%、住民税5%[9]

それ以外の資産の譲渡については総合課税となり、他の所得との合計額に対して所得税(5%~)[10]、住民税10%+5,000円[11]が課されます。

資産の品目により、所得の種類(事業所得または譲渡所得)や課税対象となる所得額(課税所得金額)の計算方法が異なります。[12]

資産の品目所得の種類課税所得金額の計算
棚卸資産事業所得事業所得=譲渡価格-必要経費(原価や手数料など)[13]
以下に該当する減価償却資産
〇使用可能期間が1年未満
〇取得価額が10万円未満(業務上基本的に重要なものは除く)
〇取得価額が20万円未満で、「一括償却資産の必要経費算入」規定を適用したもの
事業所得事業所得=譲渡価格-必要経費(原価や手数料など)[13]
上記以外譲渡所得【所有期間5年以下の資産】
譲渡所得=譲渡価格-取得費-購入・譲渡にかかった費用(手数料など)-50万円
取得費=購入代金-減価償却費累計額
 
【所有期間5年超の資産】
譲渡所得=所有期間5年以下の場合の半分[14]
 ■法人税・地方税

譲渡される資産の時価(売却価格)と簿価との差額に対し、法人税・地方税が課されます。法人税・地方税を合わせた実効税率は30%程度です。[15]

 ■消費税

土地・建物、株式類、金銭債権(売掛金など)の譲渡は非課税取引であり、消費税はかかりません。[16]

それ以外の資産の譲渡では消費税がかかります(酒類を除く飲食料品と一部の新聞は税率8%、他は税率10%)。[17]

 ■印紙税

不動産、債権、無体財産権(商号・商標権・特許権など)を1万円以上で譲渡する場合、契約金額に応じて200円~60万円の印紙税がかかります。[18]

居抜きにかかる費用・税金

費用

場合により以下の費用がかかります。

費用項目金額
居抜き専門業者の仲介手数料業者ごとに料金体系は異なり、以下のようなパターンがある
①成約時に売り手が数十万円程度または造作譲渡価格の10%程度(高い方)を負担
②成約時に買い手が(賃貸不動産の仲介手数料に加えて)賃料1ヶ月分程度を負担
③売り手は①の金額、買い手は②の金額を負担
貸主承諾料造作譲渡価格の10%程度
その他の費用譲渡対象外の什器・設備や在庫の廃棄費用など

税金

造作譲渡による所得に対し、事業売却と同様に所得税・住民税(または法人税・地方税)、消費税がかかります。

[8] 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)(国税庁)

[9] 株式等を譲渡したときの課税(同上)

[10] 所得税の税率(同上)

[11] 個人住民税(総務省)

[12] 譲渡所得の対象となる資産と課税方法(国税庁)

[13] 事業所得の課税の仕組み(同上)

[14] 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)(同上)

[15] 実効税率(EY)

[16] 非課税となる取引(国税庁)

[17] 消費税の軽減税率制度(同上)

[18] 印紙税額(同上)

A社は美容室の運営と美容関連商品の販売を行っている美容室グループで、これまでに多く美容室の譲受を行い、実績を積み上げてきました。

グループの収益力の源は「物品販売営業の手法」と「WEBマーケティング」で、これらを活かすための組織づくりノウハウがあります。また、経営理念として美容師の待遇改善を掲げていて、物品販売の従業員還元率が高いなどの効果的な待遇向上施策を行っています。

これら強みと、多くの経営課題(採用・人材育成や長時間労働など)を抱えている美容室やサロンがグループインし、相乗効果を発揮することで、店舗の売上・利益・スタッフの処遇を改善してきました。

グループイン後、従業員の離職はゼロです(2023/7時点)。

売却先を検討する場合には、自社の経営課題とグループイン先の強みがマッチしているかどうか(=相乗効果が出るかどうか)も検討ポイントの一つとなります。

>>美容室・サロンの売却について、アドバイザーに相談する

美容室・理容室・エステサロンの業界動向

美容室・理容室・エステサロン業界の定義

総務省「日本標準産業分類」によりますと、主として頭髪の刈り込み,顔そりなどの理容サービスを提供する事業所を指し、美容業は主としてパーマネントウェーブ,結髪,化粧などの美容サービスを提供する事業所をいいます。

「エステティック(Esthetic)業」は、「手技または化粧品・機器等を用いて、人の皮膚を美化し、体型を整えるなどの指導又は施術」に該当する業種となります。

本稿では、前述の3業種をまとめて美容・エステサロン業界として取り扱います。

美容室・理容室・エステサロン業界の現状・市場規模

理美容業界は長引くデフレや実質賃金の低迷を背景に、消費者の節約志向を受けた低価格の理髪店チェーンが台頭するなど、近年は市場が縮小傾向にありました。加えて2020年に新型コロナウイルス感染症が広まり、一気に市場が縮小しました。

また、エステサロン業界は、複数回の施術サービスを一度に数十万円といった高額で購入するパターンが多いのが特徴です。このため、契約トラブルが後を絶たず、消費者庁など行政も問題視し、契約の適正化が業界全体の課題となっています。さらに、レーザーによる熱傷といった施術をめぐるトラブルも社会問題化しています。

市場規模については、経済産業省・総務省「経済構造実態調査」から理美容業の市場規模を見てみますと、2019年度は理容業が1,823億円(前年比7.2%減)、美容業が9,403億円(同0.1%減)と、合計1兆1,226億円(同1.3%減)となりました。

矢野経済研究所が公表した、エステも含む理美容サロン市場に関する調査(2022年,日本経済新聞)では、2021年度の理美容サロン市場は、前年度比3.9%増の2兆470億円でした。2021年以降は客足が戻り始め、美容・エステ市場は回復傾向にありますが、コロナ前までの水準には戻っていません。2021年度の同市場は、事業者売上高ベースで2兆470億円(同3.9%増)と推計されます。

関連記事:整骨院・整体サロンの動向と売却のメリット・事例・価格を解説|2023年最新

(出所)総務省「家計調査」

美容室・理容室・エステサロン業界の主なプレーヤー

業種企業名主なブランド
理容阪南理美容プラージュ
理容キュービーネットホールディングスQBハウス
理容カットツインCut-A
美容AB&CompanyAgu.、FADE&LINEなど
美容アルテ サロン ホールディングスAsh、NYNY、Choki Petaなど
美容アースホールディングスEARTH
美容エム・ワイ・ケーイレブンカット
美容田谷TAYAなど
美容エム・エイチ・グループモッズ・ヘア
エステミュゼプラチナムミュゼプラチナム・マキア
エステTBCグループエステティックTBC
エステミス・パリ・グループダンディハウス
エステ不二ビューティたかの友梨ビューティクリニック

理容業界は個人店舗が多いのが特徴で、大手としては美容室も手がける阪南美容、超低価格チェーン「QBハウス」を展開するキュービーネットホールディングス(HD)、カットツインなどがあります。

キュービーネットHDは、シャンプーやブロー・シェービングは行わず10分1200円といった料金を実現。同社は2016年に持株会社体制へ移行、2018年には上場しました。

美容室ではAB&Company、田谷、アースホールディングス、アルテ サロン ホールディングス、エム・エイチ・グループなどがチェーン展開しています。

また大手化粧品メーカー資生堂グループとして、資生堂美容室もあります。アルテ サロン ホールディングスは、子会社を通じ「Ash(アッシュ)」「NYNY(ニューヨーク・ニューヨーク)」「SD(スタイルデザイナー)」などのフランチャイズを展開しています。

エステサロン業界では、脱毛・まつ毛エクステで知られるミュゼプラチナム、脱毛から痩身・フェイシャルまで総合展開するTBCグループ、ソシエ・ワールド、ミス・パリ・グループが大手です。また、ミス・パリ・グループは男性用エステ「ダンディハウス」も手がけています。

エステサロン業界でも、日本メナード化粧品のメナードフェイシャルサロンを、ポーラ・オルビスホールディングス傘下のPOLA THE BEAUTYなどがあり、化粧品会社が展開するサービスもあります。

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美容室M&A売却の目的・メリット(売り手・買い手視点)

東京商工リサーチ「中小企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート」(調査日: 2020年11~12月)によると、買い手がM&A検討のきっかけや目的は、「売上・市場シェアの拡大」が最も高く、次いで「新事業展開・異業種への参入」となっています。買い手は他社の経営資源を活用し、企業規模拡大や事業多角化を目指しているといえます。また「人材の獲得」や「技術・ノウハウの獲得」なども上位となっています。

一方、売り手がM&Aを検討したきっかけや目的は、「従業員の雇用の維持」や「後継者不在」といった事業承継に関連した目的の割合が高い一方、「事業の成長・発展」も48.3%と高く、売り手の約半数の企業は、成長のためにM&Aを検討していることがわかります。

売り手からみたM&Aの目的・メリット

前述の調査結果を踏まえると、売り手は「事業承継」「事業成長」「事業改革」を目的としてM&Aを実施しており、売り手が期待しているメリットは以下のようなものが挙げられます。

有名グループ店の傘下となる

美容院・美容室の運営・成長性に課題を感じている場合、経営権を売却し、有力グループ店の傘下となる方法は有効な経営戦略の1つといえます。有名且つ大きい規模の美容院・美容室ブランドを活用することで、集客力の向上見込まれます。

事業の成長と発展

M&Aにより、売り手と買い手が、双方の強み・弱みを補完し、売上向上やコスト削減等のシナジー(相乗効果)を発揮することで、事業の成長と発展が期待できます。

関連記事:フィットネス・スポーツジムの動向・M&A事例・売却メリット・相場を解説2023

後継者問題の解決

売り手の経営陣が高齢化や後継者問題に直面している場合、買い手の経営陣が後継者として就任することにより、企業の存続を図ることができます。なお、引継ぎのタイミングとしては、株式譲渡と同時のケースのほか、株式譲渡後、数年間の引継ぎ期間を経て代表者を交代するケースの2パターンがあります。

スタッフ・従業員の雇用継続

売り手は、M&Aにより会社や事業を維持・発展させることにより、従業員の雇用を継続させることができます。廃業や居ぬきでの売却はスタッフの雇用の維持ができませんので、注意が必要です。

関連記事:廃業かM&Aか?メリット・デメリット、手続き、税金を比較解説

個人保証(経営者保証)の解除

多くの美容室運営会社では経営者が個人保証を行い、金融機関から融資を受けているケースが多く見られます。M&Aでは買い手による融資の肩代わり、もしくは保証そのものを引き受ける形で個人保証(経営者保証)の解除が可能になります。

創業者利益の確保

未上場株式は換金が難しい一方、相続時に相続税が課税されるため、多くの未上場企業において相続税の資金準備が課題になっています。株式譲渡という手法でM&Aを行うことにより、株式を保有するオーナーが譲渡対価として現金化することができます。最近では、50代で株式譲渡を行い、その後、新たな事業を始める、余裕あるセカンドライフを送るという事例も増えています。

事業の再生

連続赤字や債務超過などの状況下において、M&Aを活用し、スポンサー企業の下で事業の再建を目指します。

ノンコア事業の売却による事業改革

本業に経営資源を集中させるため、ノンコア事業(本業ではない事業)や赤字事業を売却する事例も見受けられます。

以上のように売り手からみたM&Aの目的やメリットは多岐にわたっており、M&Aは売り手にとって企業の存続や発展にとって重要な手段の1つです。

買い手からみたM&Aの目的・メリット

基本的に買い手はシナジー(相乗効果)を期待してM&Aを実施します。具体的には以下のようなM&Aの目的・メリットが挙げられます。

売上シナジー(継続顧客の獲得など)

販売チャネル、営業ノウハウ、ブランド力や知名度、開発力、シェア向上による価格支配力の獲得を目指します。

コストシナジー(設備投資の低減)

仕入れコスト、販売コスト、物流コスト、製造コスト等の削減を目指します。新店舗を開店する場合多くの初期投資を要するところ、設備投資の費用を多くの削減が可能です。また、M&A(全株式の売却など)であれば、すべての経営資源を引き継げるため、開業や継続的な収益を得るまでに至る時間を短縮できます。

優秀な美容師の確保

M&Aにより、買い手は売り手から人材を確保することができます。売り手が持つ優秀な美容師人材を自社に取り入れることにより、自社の人材開発や人材確保につながります。

店舗のブランド価値向上

店舗数が多くなるほど、看板が増え人々の認知拡大し、店舗の持つ宣伝力・ブランドが大きく成長します。M&Aによる広告宣伝効果が期待できます。

リスク分散・財務力強化

M&Aにより多角化を行うことで外部環境の急速な変化による経営リスクを分散する効果が期待できます。

美容室・理容室・エステサロン業界のM&A・売却の成功事例

次に理容室・美容室・エステサロン業界は、2019年以降コロナ禍の影響を大きく受けており、大手によるフランチャイジーの買収や、大手企業の異業種の傘下入りなどM&Aが活発化しています。

【電化製品製造×エステサロン】船井電機HD、ミュゼプラチナムの全株式取得

譲渡企業の概要

ミュゼプラチナム:脱毛サロンの運営。全国で約170店を展開。2022年3月期の連結売上高は約300億円。

譲り受け企業の概要

船井電機HD:主力のテレビ等の電化製品製造事業のほか、美容機器の販売も手掛ける。テレビ事業の不振により2021年に書籍出版の秀和システムの傘下となっている。

M&Aの目的・背景

船井電機HDは美容機器の販売を行っており、本件M&Aによる相乗効果が得られると判断していました。

M&Aの手法

船井電機HDは2023年4月11日、脱毛サロンを運営する「ミュゼプラチナム」の全株式を取得し、完全子会社化しました。買収額は非公表です。[1]

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【ファンド×美容室】ジャフコグループとAZ-StarによるヘッドライトのM&A

譲渡企業の概要

ヘッドライト:全国にて美容室やアイラッシュサロン運営

譲り受け企業の概要

ジャフコグループ:日本最大級のベンチャーキャピタル。国内外における運用ファンドの累計コミットメント額は1兆円を超える。

AZ-Star:株式会社あおぞら銀行、株式会社東京スター銀行、兼松株式会社、株式会社エスネットワークスの4社が参画する企業投資ファンド運営

M&Aの目的・背景

ジャフコグループは、AZ-Starの保有する経営ノウハウ等の活用や、内部管理体制整備を行い、企業価値向上と判断し、本件M&Aを行っています。

M&Aの手法

2021年2月にて、日本最大のベンチャーキャピタルであるジャフコグループが管理・運営するジャフコSV6投資事業有限責任組合・ジャフコSV6-6投資事業有限責任組合と、AZ-Starが管理・運営するAZ-Star3号投資事業有限責任組合が、ヘッドライトを子会社化しました。[2]

【美容室FC本部×FC加盟店】AB&Company連結子会社のB-first、フランチャイジーのBELLTREEを子会社化

譲渡企業の概要

BELLTREE:美容室の運営。AB&Companyグループの成長推進の中心を担うフランチャイジーとして事業拡大していた。

譲り受け企業の概要

B-first:美容室フランチャイズシステム事業

M&Aの目的・背景

AB&Companyは、本件M&Aによるフランチャイズ運営体制の強化や収益の取り込みが狙いとしています。

M&Aの手法

AB&Companyは2022年6月、連結子会社で美容室フランチャイズ事業の本部機能をもつB-first(東京都新宿区)を通じ、フランチャイジーのBELLTREE(川崎市)を子会社化すると発表しました。[3]

関連記事:店舗売却の基礎知識|飲食店などを売る方法・相場・費用・税金

【観光コンサル×化粧品輸出・美容室】AcroX Holdings、TACHIAOIを子会社化

譲渡企業の概要

TACHIAOI:化粧品輸出やサロン運営を行う。

譲り受け企業の概要

AcroX Holdings:観光・地域創生・戦略コンサルティングを行う。

M&Aの目的・背景

AcroX Holdingsは、化粧品輸出やサロン運営を手がけるTACHIAOIをグループ会社化することで、ホテル向けのアメニティ開発や観光に照準を合わせたサロン事業の展開が可能になるとしています。

M&Aの手法

AcroX Holdingsは2021年4月、TACHIAOI(東京都大田区)の株式譲渡契約を締結し、同社をグループ会社化しました。[4]

【美容室×美容室】ヤマノホールディングスがL.B.Gを株式譲渡により子会社化

譲渡企業の概要

L.B.G:「La Bonheur」のブランドで中価格帯美容室を展開(20~30代の女性をターゲット)[5]

譲り受け企業の概要

ヤマノホールディングス:美容室・和装宝飾専門店・学習塾運営、生活・健康関連商品の訪問販売・展示販売など行う。

美容事業は、ファミリー層・中高年層向け低中価格帯美容室を全国展開。

和装宝飾事業との連携による充実した着付けサービスも提供。[6]

M&Aの目的・背景

ヤマノホールディングスは、ノウハウ提供や人材教育強化などの支援により、L.B.Gの持つ「La Bonheur」の全国展開の推進を目指します。

M&Aの手法

2019年10月にて、ヤマノホールディングスはL.B.Gの株式を取得し、議決権比率52%の株主となり、同社を子会社化しました。[7]

関連記事:化粧品OEM業界の動向・M&A事例・売却メリット2023

【美容室×アイラッシュサロン】アルテサロンホールディングスがダイヤモンドアイズを株式譲渡により子会社化

譲渡企業の概要

ダイヤモンドアイズ:アイラッシュサロン運営。

新設分割の手法によりアイラッシュ事業運営のルルテールから分割されて設立されました。[8]

譲り受け企業の概要

アルテサロンホールディングス:複数の美容室チェーンを展開。[8]

M&Aの目的・背景

アイラッシュ分野の市場規模の成長性を加味し、アテサロンホールディングスは、アイラッシュ事業への進出と事業内容・サービス内容の拡充のため、本件M&Aを行いました。[9]

M&Aの手法

新設分割によりルルテールから譲渡対象事業をダイヤモンドアイズとして分割・会社設立。2014年12月にアルテサロンホールディングスがダイヤモンドアイズの発行済全株式を取得しました。取得対価は1億2,400万円です。[9]

まとめ

理容室・美容室・エステサロンなどの店舗事業は造作、ノウハウ、ブランド、人材などの経営資源が集まって成り立っています。居抜きや事業売却によりそうした資源をまとまった形で売却すれば、売却益が得られるだけでなく、事業の価値が新たな環境の中でこれからも活かされていくことになります。

とくに、事業売却は広範囲の資産を譲渡・譲受することが可能で、事業基盤強化や資金調達、事業承継など、様々な目的で活用できることから、店舗オーナーの間で積極的に活用する動きが広がっています。

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蛯原大晴
監修者:蛯原大晴
株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部
早稲田大学・同大学院にて、米国取締役会制度の法的展開について研究。大学院卒業後、2022年4月に当社へ新卒入社。ソーシング~クロージングまで一気通貫のM&A支援業務に携わる。
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社会保険労務士(試験合格者含む)12名
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