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バイオ関連企業のM&A・売却事例11選と業界動向|2023年最新
監修者:伏江 亜矢(株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長)
製造業(食品・バイオ・化学・金属ゴムプラスチックなど)担当

バイオ関連業界(検査薬・試薬/分析機器)では、どのようなM&Aが行われているのか?本記事では、当該業界の動向(検査制度確保のための連携や、感染症拡大による市場変化など)に基づき、主なプレーヤーやM&A事例を、実務に精通した専門家が解説します。

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バイオ関連企業のM&A売却・事業承継案件一覧

関東)バイオメーカー日本総代理店の譲渡

強み・特徴

【事業】欧米・アジア諸国に展開しているバイオテクノロジーメーカーの日本総代理店事業。
【製品】主力メーカー以外にバイオテクノロジー企業5社の製品・サービスの取り扱いあり。
【販売先】主にバイオ関連の研究開発部門(製薬会社や大学等)。大手化学品メーカーとの直接契約あり。

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東京都内)クリーンルーム消耗品、機器などの輸入商社|株式譲渡

強み・特徴

【取引関係】海外メーカーから商材(消耗品、機器)を輸入し、国内代理店数百社に販売しています。
【主力製品】主力の消耗品については、メーカーの国内独占販売権は持たないものの、国内においては9割以上のシェアを確保しています。

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検査薬・試薬・バイオ関連分析機器業界とは

検査薬・試薬・バイオ関連分析機器業界の定義

検査薬とは、体外診断薬などの臨床検査薬を指し、医師が病気を診断したり、治療方針を決めたりするための医薬品です。

試薬は「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」により、「化学的方法による物質の検出もしくは定量、物質の合成の実験または物理的特性の測定のために使用される化学物質」と定義されます。

検査薬・試薬メーカーは、関連する分析機器の製造販売も行っているケースがあり、今回はこれらをまとめて解説します。

検査薬・試薬・バイオ関連分析機器業界の現状・市場規模

検査薬・試薬業界では、検査結果に誤差が生じることを避けるため、検査機器に対応する形で検査薬や試薬を指定するケースが多く見られます。試薬と検査機器の両方を製造販売するメーカーや、試薬メーカーと検査機器メーカーが提携して、検査精度の確保に努めている例があります。

検査薬・試薬は、主に体外診断薬として、医療機関やその関連施設などで使用されています。特に体外診断薬は、臨床検査薬の6割程度を占め、市場は拡大傾向にあります。試薬の大半を占める体外診断薬の売上高は、2021年度が前年度比41.2%増の4902億円と、急激に伸びました。これは新型コロナウイルス感染症の拡大により、PCR検査や抗原検査などの特需があったことが要因です。

一般用検査薬はここ数年、横ばいで推移しています。体外診断薬と一般用検査薬に、検査用試薬、検査用機器・リースを合わせた体外診断薬市場全体では、2021年度が同31.0%増の7924億円となりました。

(表)臨床検査薬等の分野別売上金額推移(2008~2021) 日本臨床検査薬協会調べ

また、経済産業省の「工業統計」における試薬(診断用を除く)の出荷額は、年度ごとに変動はありますが、概ね1100億円前後で推移しています。

この他に、遺伝子検出・解析装置を含むバイオ関連機器の売上高は、日本分析機器工業会の会員企業合計で、2020年度が約70億円でした。2020年度から2021年度にかけては、コロナ禍でPCR検査装置の需要が急拡大しました。

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バイオ企業の業界トピックス

検査薬・試薬業界:一般の検査需要が減少するも、新型コロナウイルス関連製品の特需あり

コロナ禍では一般の検査需要が減少した一方、新型コロナウイルス関連検査薬の需要が拡大、主要各社が製品を開発・販売しました。特にH.U.グループや栄研化学では業績寄与も大きく、2021年度のH.U.グループの試薬事業は売上高の3割強、栄研化学は1-2割がコロナ関連とみられます。

バイオ関連分析機器業界:海外大手とのM&AやOEM契約を積極的に実施

バイオ関連分析機器業界では、遺伝子技術をもつ海外の大手メーカーが高いシェアを持つ分野が多い。そのため、日本企業は海外大手メーカーとのM&AやOEM契約などによって事業拡大を図っている。例えば、タカラバイオについては、研究用試薬の製品展開や遺伝子解析分野の強化のため、以下のようなM&Aが実施されています。(https://www.takara-bio.co.jp/kaisha/research.htmを参照)

2005年:遺伝子解析分野での強みを持つClontech(USA)を買収

2014年:Cellectis (FRA)より幹細胞事業を担う子会社Cellectis AB社を買収

2016年:研究用試薬メーカーRubicon Genomics(USA)を買収

2017年:DNAサンプル解析用調製技術を持つRubicon Genomics(USA)を買収

シングルセル解析装置などを展開するWaferGen Bio-systems(USA)を買収

検査薬・試薬/バイオ関連分析機器業界のM&A・売却事例11選

検査薬・試薬業界

シスメックス:JCRファーマと再生・細胞医療領域で合弁会社を設立

シスメックスと、JCRファーマは2022年10月3日、造血幹細胞をはじめとする幹細胞やその他の細胞を用いた再生医療等製品の研究開発、製造および販売を行う合弁会社を設立したと発表しました。 [1]

シスメックスはこれまで、再生医療等製品の開発企業に品質管理検査を提供し、移植される臓器や組織に対する患者の免疫応答を調べる、新規の移植前適合性試験に関する研究開発を進めてきました。一方でJCRは、再生医療・遺伝子組換え・遺伝子治療技術による医薬品の研究開発・製造・販売を行ってきました。

新会社においては、現在両社で推進している造血幹細胞の増殖技術を用いたプロジェクトをはじめ、その他の技術開発および事業化に関する可能性についても検討を進めるとしています。

日水製薬:ウイルス感染をリアルタイムPCRで検出できる試薬製造販売の日本テクノサービスに出資

日水製薬は2020年3月27日開催の取締役会において、日本テクノサービス株式会社が実施する第三者割当増資の引受、並びに株式の一部取得を行うことを決議しました。日本テクノサービス社は理化学製品の製造及び販売を行うとともに、試薬の製造及び販売を行う。本件出資により、日水製薬は、日本テクノサービス社と協力し、再生医療技術を応用した研究開発への取り組みを加速させ、再生医療等製品の安全性向上に貢献することを目指す。[2]

JNC:動物用診断薬事業を遺伝子工学研究用試薬等開発のニッポンジーンに譲渡

JNC株式会社は2020年10月2日、動物用診断薬事業を株式会社ニッポンジーンに譲渡した。ニッポンジーンは、感染症の拡大防止などに役立つ動物用診断薬の需要拡大を鑑み、本件M&Aを行った。[3]

東北大学ベンチャーパートナーズ運営ファンド:試薬開発ベンチャーの五稜化薬に出資

東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社を無限責任組合員とするTHVP-1号投資事業有限責任組合は2019年11月29日、五稜化薬株式会社へ100百万円の投資を行った。五稜化薬は、がんを”見える化”する薬の開発を目指す。本件出資によって、がんの外科手術向けナビゲーションドラッグの事業化を加速させる。[4]

三井金属:研究用試薬・診断用医薬開発の五稜化薬に出資

三井金属鉱業株式会社とSBIインベストメント株式会社が共同で設立したプライベートファンドである「Mitsui Kinzoku-SBI Material Innovation Fund」。当ファンドは2019年1月18日、五稜化薬へ出資を行った。三井金属は2016年の中期経営計画にて、成長商品・成長事業の創出を図り、三井金属の既存事業とのシナジーが見込まれる企業への投資を行っていた。本件出資によって、三井金属の持つマテリアルを、五稜化薬の製品開発へ応用していき、ライフサイエンス領域における事業機会の創出を目指す。[5]

ファーマフーズ:アンテグラルからバイオサイエンス事業を譲り受け

株式会社ファーマフーズは2022年2月25日、株式会社アンテグラルのバイオサイエンス事業及びバイオサイエンス事業に必要な管理部業務部門に関して有する権利義務を承継する旨の広告をした。2022年4月1日付で吸収分割により、当該承継を行った。本件吸収分割により、抗体医薬品の開発を加速させることを目指す。[6]

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理化学・分析機器業界

米カーライル・グループ:総合研磨メーカーの三共理化学を買収

カーライル・グループは2019年3月15日、三共理化学株式会社の発行済み全株式を取得した。三共理化学は、研磨材と研磨装置の製造・販売を行う総合研磨メーカーである。本件出資を通じて、三共理化学の海外展開強化と国内事業基盤強化を行う。[7]

三共理化学:理研コランダム<5395>等から中国の理研泰山の株式を取得

三共理化学株式会社は2022年4月19日、理研コランダム株式会社及び淄博中理磨具有限公司が保有する淄博理研泰山涂附磨具公司の株式を取得することで合意し、株式譲渡契約を締結した。理研泰山は中国山東省を拠点とする研磨材メーカー。三共理化学は、理研泰山の株式53%を保有することとなる。本件株式取得を通じ、競争力の強化と国内外でのさらなる事業拡大を図る。[8]

ジェイテックコーポレーション:理化学機器事業の電子科学を買収

株式会社ジェイテックコーポレーション2021年5月14日開催の取締役会にて、電子科学株式会社の全株式を取得し、子会社化することについて決議した。電子科学は理化学機器の開発・製造・販売及び分析業務を得意とする企業である。本件株式取得により、営業体制の連携強化や製造の効率化、開発の高度化を図る。[9]

日本化学工業:子会社の日本ピュアテック、理化学機器製造販売のロックゲートを買収

日本化学工業株式会社の連結子会社である日本ピュアテック株式会社は2018年7月2日開催の取締役会にて、ロックゲート株式会社の全株式を取得することを決議した。本件株式取得による、更なる事業の拡大および多様化を図る。[10]

理化学器械・消耗品等の卸売会社の譲渡【株式譲渡】

■対象会社の概要

所在地関東
事業内容理化学器械、消耗品等の卸売
譲渡理由後継者不在

譲渡企業は、理化学器械、試薬、消耗品等の卸売を行う企業。社内で後継人材の育成に力を注いできたため、実務面を任せられる人材は育ちつつありましたが、将来の先行き不安や、株式の承継の問題を抱え、事業承継の選択肢としてM&Aを検討してきました。M&Aの相手先を検討するうえでは、①自社の強みである優良な取引先基盤を生かしてくれること、②社風があうこと(従業員が安心して働ける環境)、③安定した経営基盤を持っていること、といった点を重視し、最終的に買収企業への株式譲渡を決断しました。

■買い手の概要

所在地九州
事業内容研究用試薬・機器の卸売
買収理由商圏の拡大

以下記事では、本件の事業承継について、担当アドバイザーが解説・コメントしています。

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[1] シスメックス、JCRファーマと再生・細胞医療領域で合弁会社を設立

[2] 日水製薬<4550>、ウイルス感染をリアルタイムPCRで検出できる試薬製造販売の日本テクノサービスに出資

[3] JNC、動物用診断薬事業を遺伝子工学研究用試薬等開発のニッポンジーンに譲渡

[4] 東北大学ベンチャーパートナーズ運営ファンドなど、試薬開発ベンチャーの五稜化薬に出資

[5] 三井金属<5706>、研究用試薬・診断用医薬開発の五稜化薬に出資

[6] ファーマフーズ<2929>、アンテグラルからバイオサイエンス事業を譲り受け

[7] 米カーライル・グループ、総合研磨メーカーの三共理化学を買収

[8] 総合研磨材メーカーの三共理化学、理研コランダム<5395>等から中国の理研泰山の株式を取得

[9] ジェイテックコーポレーション<3446>、理化学機器事業の電子科学を買収

[10] 日本化学工業<4092>子会社の日本ピュアテック、理化学機器製造販売のロックゲートを買収

まとめ

バイオ関連業界では、試薬と検査機器の両方を製造販売するメーカーが主要プレーヤーとして上位に位置しています。その一方で、試薬メーカーと検査機器メーカーが提携して検査品質を担保している例も見られます。

診断薬は、臨床検査薬の6割程度を占め、新型コロナウイルス感染症の拡大により、PCR検査などの特需で一時的に市場が急拡大しました。また、遺伝子解析機器の需要は底堅く、再生医療分野などにおいて、大手企業同士の提携や合弁設立といった動きが活発化する可能性もあります。

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▼以下の記事では、調剤薬局のM&A動向について解説しています。

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伏江亜矢
監修者:伏江亜矢
株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長
金融機関で法人営業を担当後、2012年にコーポレート・アドバイザーズ入社。M&Aの事前準備から、候補先のソーシング、企業価値評価、条件交渉、クロージングまで一気通貫した支援を行っている。 ヘルスケア・ライフサイエンス(医療・介護・メーカー・卸商社)、IT・ソフトウエア(Webサービス、システム開発)、人材サービス(派遣、警備、ビルメンテナンス)などのM&A支援経験が豊富。 M&A成功のために必要な情報をわかりやすく解説するコラムサイト「よくわかるM&A」の運営責任者。
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■事業内容
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人事労務 / 給与計算
相続・事業承継
企業法務・法律顧問
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内部統制(J-SOX)・内部監査
海外現地法人サポート
非上場株式売却コンサルティング(非上場株式サポートセンター

■社員数
417名(グループ全体 / 2023年10月現在)
税理士(試験合格者含む)56名
公認会計士(試験合格者含む)15名
特定社会保険労務士2名
社会保険労務士(試験合格者含む)12名
弁護士 2名
相続診断士41名
中小企業診断士1名
行政書士4名

■関与先
法人 3,240社(うち上場企業85社)
社会福祉法人 133件
クリニック・医療法人・介護福祉等 593件
個人 4,015名
合計 7,981件

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