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医療機器メーカーのM&A・売却事例5選と業界動向 | 2023年最新
監修者:伏江 亜矢(株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長)
製造業(医療機器・バイオ・化学・食品など)担当

医療機器業界では、どのようなM&Aが行われているのか?本記事では、当該業界の動向(医療機器市場規模の推移や、感染症拡大の影響など)に基づき、主なプレーヤーやM&A事例を、実務に精通した専門家が解説します。

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医療機器業界とは

医療機器業界の定義 

医療機器業界は、注射器具やチューブ・カテーテルなどの医療用器具や、電子機能をもつ医療用機器などを製造販売する企業群を指します。

日本標準産業分類の細分類では、細分類2741「医療用機械器具製造業」や、同2742「歯科用機械器具製造業」、同「医療用電子応用装置製造業」などが当てはまります。

関連記事:製造業のM&A動向・事例15選・売却相場を解説|2023年最新

医療機器業界の現状・市場規模 

経済産業省によりますと、日本国内の医療機器市場規模は、2004年以降増加に転じ、2兆円超で推移しているといいます。その後2017年には、国内医療機器市場は約3兆円となり、過去最大の市場規模となりました(経済産業省「経済産業省における医療・福祉機器産業政策について」より)。

ただし、2020年以降は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、患者の通院控えが起こり、医療機関がコロナ対応に追われ、通常の医療に十分な人員を割けなくなったことなどが影響し、医療機器の需要が減少しています。

医療機器市場(約2.9兆円)のうち、金額ベースでは治療機器(カテーテル、ペースメーカー等)が59%、診断機器(内視鏡、CT、MRI等)が20%を占めています。一般的に治療機器の成長率が高く、市場規模も大きいとされます。ただし、医療機器は輸入比率が相対的に高い状況にあります。

医療用器具では、注射筒や注射針、チューブやカテーテル、縫合糸、メスといった鋼製器具などがあります。医療用電子機器としては、検査・診断用の機器のほか、カテーテル類など検査や治療のため体内に挿入する機器もあります。

医療用器具の製造販売は、輸入も含めて薬機法で規制されており、国から許可や承認が必要となっています。製造販売に関する規制では、医療機器の人体に対するリスクレベルによって、リスクが極めて低いリスクⅠから、不具合が生命の危機に直結するクラスⅣまで、4つに分類されます。

経済産業省「経済産業省における医療・福祉機器産業政策について」

医療機器業界の主なプレーヤー 

医療用機器業界の特徴は、分野別にプレイヤーが分かれているところです。具体的には、カテーテル分野はテルモ、朝日インテック、東海メディカルプロダクツなどがメインプレイヤーです。また透析器ではニプロや東レ・メディカルといった企業が大手です。

内視鏡大手のオリンパスは、内視鏡使用時に組み合わせられる処置具なども扱っています。医療用器具の輸入・販売では、日本ライフラインなどが挙げられます。

テルモは、体温計を自社生産していた企業ですが、現在はカテーテルやガイドワイヤーを主力事業として、業容を拡大しています。同社は3つのカンパニー制をとっており、その一つである心臓血管カンパニーは、2021年度に営業利益の7割を占めています。

ニプロは、もともとガラス管を製造販売していましたが、医療機器や医薬品へと事業展開し、現在は医療機器や医薬品、医薬用包装材料を扱っています。 同社の主力事業である医療機器では、ダイアライザ(人工腎臓)などの透析関連製品と、注射・輸液器具類に大きく分けられます。2021年度の全社売り上げのうち、医療機器は約6割を占めています。医薬品では経口剤や注射剤キット製剤が主力製品としています。

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医療機器業界のM&A・売却事例5選

朝日インテック、レイクR&Dを子会社化【製造×製造】

譲渡企業の概要

レイク R&D は、主に消化器分野を中心に、処置具、鉗子等の設計・製造・販売を行っており、大手医療機器企業からの様々な要望に対して、受注設計・受注製造を担っている独自性の高いノウハウ・技術力を有する企業です。

譲受企業の概要

朝日インテックは、「グローバル市場の戦略的な開拓と患部・治療領域の拡大」を重要な戦略の一つとして掲げております。その一環として、消化器分野の強化を進めており、今後、優位性のある製品投入を多角的に行い、更なる収益拡大を目指しています。

M&Aの目的・背景

消火器分野での研究開発を加速させ、事業拡大につなげるため、ユニークな技術と製品を有するレイクR&D とのシナジー効果により、製品競争力が更に強化されるものと判断した。将来的には、レイク R&D が保有若しくは開発した製品について、旭化成グループの製造工場にて量産し、グローバル展開することなどを目指しています。

M&Aの手法

朝日インテックは、2022年11月開催の取締役会で、レイクR&Dの全株式を取得し(株式譲渡の手法)、子会社化することを決議しました。[1]

関連記事:化学業界のM&A動向・事例・売却相場|2023年最新

オリンパス、イスラエルの医療機器メーカーを子会社化【製造×製造】

譲渡企業の概要

Medi-Tateは、前立腺肥大症の低侵襲治療デバイスの研究開発、製造を行う医療機器メーカーです。
同社の製品「iTind」は欧州のCE認証を受け、2020年4月には米国FDAよりde Novo承認を取得しています。2018年11月に「iTind」を含むMedi-Tate製品を販売する権利とコールオプションを含む契約を締結し、欧米の一部地域で「iTind」を販売していました。

譲受企業の概要

オリンパスは、本社が新宿区に位置している光学機器・電子機器メーカーです。オリンパスの経営戦略において、「治療機器事業への注力と拡大」を事業の成長・収益性向上のためのコア要素の1つに位置付けています。治療機器事業においては、消化器科、泌尿器科、呼吸器科の3つの領域でリーディングポジションを確立することを目指しております。

M&Aの目的・背景

オリンパスは「iTind」の医学的価値と将来性が高いことを確信し、同社が有する切除デバイスとグローバルで一体となって展開することが、同社の泌尿器科ビジネスを中長期的に成長させていくために最適であると判断し、M&Aを行いました。

M&Aの手法

オリンパスは2021年5月、ドイツ子会社を通じ、イスラエルの医療機器メーカーMedi-Tateを買収しました。オリンパスは2018年11月にMedi-Tateへ18%超を出資した際、同社の株式を100%取得できる権利(コールオプション)を含めた契約を結んでいました。今回のM&Aは、その権利を行使したものです。取得価額は約283億円でした。[2]

旭化成、イスラエルの医療機器会社を買収【製造×製造】

譲渡企業の概要

Itamar Medicalは、心臓病患者への医療に睡眠時無呼吸症の診断を加えることに注力。呼吸器系睡眠障害の検査・診断を支援する医療機器の販売や、ソリューション開発に強みを持つとされます。

譲受企業の概要

旭化成は、世界各地に4万人以上の従業員を抱え、マテリアル・住宅・ヘルスケアの3つの事業分野を通じて、世界の課題に対応するソリューションを提供し、持続可能な社会に貢献しています。ヘルスケア事業では、救急救命処置、透析、アフェレーシス療法、輸血に加え、バイオ医薬品・医薬品・診断用試薬の製造のための装置とシステムを手掛けています。

M&Aの目的・背景

「睡眠時無呼吸に対するItamarのWatchPAT®技術とデジタルヘルスのソリューションが、旭化成子会社のゾール・メディカルの商業能力と組み合わされることで、家庭睡眠医療を前進させて診断と治療を受けていない患者にメリットをもたらす」と説明されています。

M&Aの手法

旭化成は2021年9月、子会社のZOLL Medical Corporationがイスラエルの医療機器・デジタルヘルス会社Itamal Medicalの全発行済株式を買い取る最終合意書を締結したと発表しました。ロイター通信の報道によると、取得価額は総額億約592億円でした。[3]

関連記事:化粧品OEM業界の動向・M&A事例・売却メリット2023

義肢装具の製造販売会社の株式譲渡【製造×製造】

譲渡企業の概要

所在地関東
事業内容義肢装具の製造・販売
譲渡理由事業の選択と集中、経営の安定

譲受企業の概要

所在地関東
事業内容義肢装具の製造・販売
買収理由経営の安定・事業の拡大のため

譲渡企業と同様に、安定した経営を実現して事業を拡大していくためには同業者との合従連衡による規模拡大と業務効率化が必要性を認識しており、自社の経営ノウハウを活かしながら事業の効率化・拡大ができると判断し、譲渡企業をグループに迎え入れました。

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特殊技術・製品をもつソフトウェア開発/販売会社の譲渡【製造業×医療用ソフト開発】

譲渡企業の概要

所在地関東
事業内容医療用ソフトウェア開発販売
譲渡理由販路拡大・技術連携

譲受企業の概要

所在地関西
事業内容製造業
買収理由特殊技術の獲得

譲受企業は、デジタル化による社会変革の波をとらえた、新たな価値創造活動の一環として、デジタル技術およびその材料技術を通じた事業展開を行っていますが、譲受企業が保有するデジタル技術およびその材料技術と、譲渡企業が保有する技術の融合により、ライフサイエンス領域において新たな事業構築を推進できると判断し、本M&Aの実施に至った。

>>「特殊技術・製品をもつソフトウェア開発・販売会社の譲渡【会社分割後の株式譲渡】」の続きをみる


[1] 朝日インテック、消化器分野向け処置具・鉗子など製造販売のレイクR&Dを買収

[2] オリンパス、イスラエルの医療機器メーカーMedi-Tate社を買収

[3] 旭化成の米子会社のZOLL社、イスラエルの医療機器メーカーItamar社を買収

まとめ

医療機器業界は、注射器具やチューブ・カテーテルなどの医療用器具や、電子機能をもつ医療用機器などを製造販売する企業群を指します。近年、大手による海外メーカーのM&A事例などが見られます。中小の医療関連の機器・器具製造・ソフト開発会社にとって、大手傘下に入ることにより、国内外への販路拡大や研究開発・技術の連携による開発力向上といったメリットがあるため、今後、M&A・売却事例は増えていくものと予想されます。

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▼以下の記事では、バイオ・化学関連(検査薬・試薬/分析機器)の業界動向とM&A事例について解説しています。

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伏江亜矢
監修者:伏江亜矢
株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長
金融機関で法人営業を担当後、2012年にコーポレート・アドバイザーズ入社。M&Aの事前準備から、候補先のソーシング、企業価値評価、条件交渉、クロージングまで一気通貫した支援を行っている。 ヘルスケア・ライフサイエンス(医療・介護・メーカー・卸商社)、IT・ソフトウエア(Webサービス、システム開発)、人材サービス(派遣、警備、ビルメンテナンス)などのM&A支援経験が豊富。 M&A成功のために必要な情報をわかりやすく解説するコラムサイト「よくわかるM&A」の運営責任者。
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特定社会保険労務士2名
社会保険労務士(試験合格者含む)12名
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中小企業診断士1名
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■関与先
法人 3,240社(うち上場企業85社)
社会福祉法人 133件
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個人 4,015名
合計 7,981件

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