よくわかるM&Aは、M&A実務に精通した専門家が、M&Aの基礎知識から実務面のポイントまでわかりやすく解説するコラムサイトです。

​会社売却・M&Aの価格の決め方は?企業価値算定の方法と高く評価されるポイントを解説

会社売却・M&Aとは

会社売却とは、対象会社が保有するすべての財産や、さまざまな権利・義務を第三者に譲り渡し、売却先の第三者からその対価を受け取ることをいいます。M&Aは合併・買収を意味しているため、買い手の目線に立った言葉ですが、会社売却はM&Aを売り手の目線からみた言葉です。

価格 (Price)と価値 (Value)のちがい

「価格はあなたが払うもの、価値はあなたが得るもの」という投資の神様、ウォーレン・バフェットの言葉がありますが、会社売却・M&Aにおける「価格 (Price)」と「価値 (Value)」も、似て非なるものです。

「価値(Value)」とは、M&Aの当事者である売り手と買い手が行う価値算定により算定・推定される、対象会社が本来持っていると考えられる経済的な価値です。この価値算定の結果をもとに、あくまでも当事者間で決めるのが、「価格(Price)」で、これがM&Aにおいて最も重要な取引条件です。

会社売却・M&Aの「価格」は、相手との話し合いにより決まります。この話し合いで重要なのは、希望金額についての理論的な説明ができること。つまり、希望する金額の計算根拠(考え方)をしっかり説明できることが大切です。また、会社売却・M&Aの価格交渉に当たっては、売り手と買い手のパワーバランスも重要になってきます。その買い手を逃したら、他に相手がいない場合には、買い手のほうが強くなりますし、たくさんの買い手候補がいるなかで、ある1社と交渉している場合には、条件が合わなかったら交渉を降りてもよい、といったように強気の交渉をすることができます。

会社売却・M&Aの取引価格はどのように決まるのか

ものの売買と同様、会社売却・M&Aにおいても、売り手はできるだけ高く、買い手はできるだけ安く、取引を成立させたいと考えます。そのため、「対象会社の単独での価値」は、売り手と買い手でギャップが生じるのが通常です。ここでいう、単独での価値、というのは、会社売却・M&A後の相乗効果(シナジー)を考慮しない価値です。ここで少し疑問に思うかもしれません。売り手、買い手がそれぞれ価値算定を行い、「対象会社の単独での価値」を算出するのであれば、なぜ「価格ギャップ」が生じるのか。

「価格ギャップ」が生じる理由として、1つは、会社売却・M&Aにおいて価格交渉のベースとなる価値評価の手法は複数あり、どの手法を採用するか、前提条件をどうするか、によって計算結果が変わってくることが挙げられます。もう1つの理由としては、売り手は “これまでの会社の歴史”、“苦労して開発した自社製品”、“苦労して開拓した取引先”などを認めてほしい、高く評価してほしい、という思いがあり、その結果、客観的にみた価値よりも高い価値を想定するケースが多いです。

このような理由で生じた「価格ギャップ」を埋めるのが、「シナジー価値」です。シナジーには、売上を増やしていく売上シナジー、コストを削減していくコストシナジーなどがありますが、これら込みで対象会社の価値をみることで、「対象会社の単独での価値」を上回る価値をみることができます。これが「買い手が考えるシナジー込みの価値」です。

会社売却・M&Aにおける最終的な取引価格は、「売り手が考える単独価値」と「買い手が考える単独価値」との間で決まることが多く、「買い手が考えるシナジー込みの価値」と「最終的な取引価格」の差が「このM&Aにより買い手の得る価値」と考えることができます。このようにして会社売却・M&Aの「価格」が決まります。

価格交渉のベースとなる、「価値」の主な評価方法

ここでは、会社売却・M&Aの実務でよく使われる評価手法を3つご紹介します。

DCF法

DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法は、インカムアプロ―チと呼ばれる利益やキャッシュフローから計算する方法です。

対象会社が生み出す将来のキャッシュフローを、適切な割引率で現在価値に還元して、「事業価値(EV)」を算定し、これに必要水準を上回る現預金や事業目的以外の有価証券などの「非事業用資産(いわゆる余剰資産)」を加算して「企業価値」を算出後、借入金やリース債務などの「有利子負債」を控除することで「株主価値」を計算する方法です。

DCF法は、対象会社を継続企業として捉える評価方法であり、将来の収支見通しや設備投資計画等を織り込めるため、会社売却・M&Aの価値評価において最も論理的な手法と言われています。その反面、割引率やキャッシュフロー等の前提条件の設定の仕方によっては評価が大きく変動するというデメリットがあります。また、他の手法と比べて、計算の難易度が高い、というデメリットもあります。

EIBTDAマルチプル

EBITDAマルチプルは、マーケットアプローチと呼ばれる、類似会社の市場価格や指標を参考に計算する方法です。

「EBITDA」とは、「税引前利益」に「借入金の支払利息」、「減価償却費」を加えて計算します。本業における「現金収入」のことで、簡便的に計算する場合には、「営業利益」に「減価償却費」を加算します。中小企業の場合、役員報酬額や事業と関連しない経費の調整額を加算することもあります。EBITDAを用いることで評価対象の企業と類似する会社やその取引事例を比較し、相対的に複数の企業の収益力を参考に評価することができます。

「マルチプル」というのは、企業を評価する倍率のことを表しており、特定の指標と企業価値との関係性により評価する方法をマルチプル法と呼んでいます。EBITDAマルチプルでは、事業価値(EV)をEBITDAで割ったものEV/EBITDA倍率と呼ばれる指標を使用します。

EBITDAマルチプルの具体的な計算方法としては、対象会社の「予想EBITDA」に類似会社のEV/EBITDA倍率の平均値として算出した「市場倍率」をかけて事業価値(EV)を算出し、「非事業用資産(余剰資産)」を足し、借入金やリース債務などの「有利子負債」を差し引いて株主価値を算出します。

なお、「非流動性ディスカウント」とは、非上場会社の株式が上場会社の株式に比べて流動性が低く、非上場会社の株式を換金しようとするときには追加的なコストがかかるために、上場会社の株式に比べて低く評価されることをいいます。算定された株主価値から20%~30%程度をディスカウントすることがあります。しかし、最近の大手監査法人系のFAS会社などでは、過半数を取得すればいつでも売却できるため、非流動性ディスカウントを考慮しない実務が浸透しているようです。

日本の中堅・中小企業における会社売却・M&AのEV/EBITDA倍率は業種・地域・規模等より変わりますが、2~10倍程度が適正値といわれています。

EBITDAマルチプルは類似する上場企業を基準として、客観的に企業分析ができ、DCF法に比べて計算が簡単で、簡便的に評価できるのもメリットです。一方、デメリットは、設備投資計画が織り込めないことと、会社によって細かい事情が異なり、EBITDAマルチプルだけでは正しく評価できない場合があることです。また、業界や規模によっては、最適な類似会社がないケースもあります。

時価純資産プラス営業権法

時価純資産プラス営業権法は、コストアプローチと呼ばれる、純資産をベースに計算する方法です。

具体的な計算方法としては、まず、BS上の不動産、有価証券、保険積立金などの価格変動を受けやすい資産を中心に時価評価し、負債を控除して時価純資産額を算出します。これに、実質利益の2~5年分をのれんとして加算します。実質利益は、事業の本当の実力を見るために、節税等に使った経費のほか役員報酬等を調整して再計算した利益となります。

株式譲渡の場合:評価額=時価純資産+のれん(実質利益2~5倍)

事業譲渡の場合:評価額=譲渡対象資産―譲渡対象負債+のれん(実質利益2~5倍)

中小企業の会社売却・M&Aでは、分かりやすく簡便という理由から、特に売り手の価値算定においてこの手法が良く使われます。一方、理論的にはサポートされにくく、特に会計監査を受けている買い手企業については、他の手法と併用すべきです。

未上場企業の事業フェーズによる評価手法の違い

中堅企業以上の場合

中堅企業以上の会社売却・M&Aにおいては、将来キャッシュフローから計算する「DCF法」を主とし、類似会社から計算する「EBITDA」を採用します。

中小企業の場合

中小企業の会社売却・M&Aにおいては、規模や情報の精度の観点から、「DCF法」のような緻密な手法は使わずに、類似会社から計算する「EBITDAマルチプル」や「時価純資産プラス営業権法」を使って簡便的に計算します。

ベンチャー企業の場合

ベンチャー企業の会社売却・M&Aにおいては、大きく成長する計画が作成されている場合が多いため、それを加味した計算が必要になります。そのため、未上場の中堅企業と同様に、将来キャッシュフローから計算する「DCF法」や類似会社から計算する「EBITDAマルチプル」を主な手法とし、計画通りには成長しない場合の「マイナスの評価」も十分に織り込みます。もう少し説明を加えると、ベンチャー企業では、現状では「製品化できたが、ほとんど販売できておらず、黒字化が見えていない」あるいは、さらに手前の「良い事業アイデアはあるが、プロダクト開発中」といった事業フェーズにあって、急激な売り上げの拡大や、黒字化達成、IPO可能な利益の計上までを見据えたアグレッシブな事業計画を作成していることが多いため、DCF法で使用するWACCと呼ばれる数%~十数%のものではなく、20~50%などの投資家の期待利回りを割引率として使用し、「株主がエグジットする際のキャッシュフロー」を現在価値に割引いて計算する「ベンチャーキャピタル法」と呼ばれる手法を使用することもあります。

会社売却・M&Aにおいて高く売れるのはどのような会社?

「EBITDAマルチプル」の手法を前提とすると、高く評価されるかどうかは「業種」で決まる、と思われる方もいるかもしれません。しかし、評価の相場を決める要素は「業種」だけではありません。その要素としては、「業種」のほか、「地域」、「取引先」、「財務」、「売上規模・投資額」などが挙げられます。さらに、「経営者」や「従業員」といった会社の人財も重要な要素となります。

一つ一つの要素を具体的にみていくと、「業種」については、買い手や事例が多い業種(例えば、調剤薬局、ソフトウェア開発、ビルメンテナンスなど)や売り手が少ない業種(化学系や医療系)は評価されやすい傾向にあります。逆に、売り手が多い業種(例えば、アパレルや下請加工など)は高く評価されにくい傾向にあります。

「地域」については、都市圏に拠点があったり、売り手と買い手の拠点が近隣や重複していたりする場合などには高く評価されやすい傾向にあります。一方、地方で遠隔地や飛び地の場合には、管理上の問題が出てくるため、高く評価されにくい傾向にあります。

「取引先」については、地理的、技術的、人的に代替がきかない存在の場合や、大手が入りづらい、新規獲得が困難な取引口座などを持つ場合には、高く評価される傾向にあります。逆に、代替がきく存在であると、常に相見積で価格競争に合い、厳しい状況にあるため、評価されにくくなります。

「財務」については、現金・借入がともに少なく、高収益だと評価されやすい傾向にあり、現金・借入が過多で低収益ですと、評価されにくくなります。

「売上や投資額」については、業種にもよりますが、売上10億円以上などであれば規模の経済が働き、評価されやすくなりますし、投資額1~2億程度ですと買手が借入をせずに自己資金で判断できるケースが多いため、評価されやすくなります。逆に、売上1億円未満ですと組織化されていないことが多く、売上も属人的になっていることが多いため評価されにくいです。また、投資額5億円以上の場合には、投資判断が入ることになります。

「経営者」や「従業員」といった人財については、経営理念、経営方針、社風、技術力やノウハウなども評価を決める要素になります。また、これらに加えて、買い手が想定するシナジーによっても評価額が上乗せされます。

M&Aの相場と自社の価値がわかる「企業価値算定シミュレーション」とは

M&Aにおける価値評価は、様々な要素を踏まえて総合的に判断されるため、自社がどの程度の価値で評価されるのか、というのは大変分かりづらいものです。よって、自社がどの程度の価格で売れそうか、という点を推測するためには、M&A専門会社に相談して相場感を確認することが一番の近道です。

弊社コーポレート・アドバイザーズM&Aでは、会社売却・M&Aを検討中の企業経営者向けに「企業価値算定シミュレーション(無料)」をご用意しております。

ステップとしては、まず、直近3期分の決算書(申告書、勘定科目明細を含みます)等をお預かりし、ヒアリングをおこないます。2週間後を目安に、算定結果を報告させていただきます。「買い手から高く評価される要素」を考慮した相場感についてもご報告いたします。

会社売却・M&Aは検討を開始し、情報収集を始めてから、実際に相手探しを行うまで、数年かかることも多くあります。まずは、弊社の「企業価値算定シミュレーション(無料)」をご利用いただき、自社が客観的にみて、いくらぐらいで評価されそうなのか、買い手はどの程度あるのかなどについて、ご報告できればと考えております。そのうえで、会社売却・M&Aの実施スケジュール・目標価格などを設定し、その目標に向けて、会社の価値を高めていくことが重要かと思います。

実際には、会社売却・M&Aは、お相手ありきものですので、良い相手が現れたときに自身の希望に合ったかたちで交渉ができるように、早めに準備を開始することが会社売却・M&A成功のポイントとなるでしょう。

無料で企業価値シミュレーションができます

納得感のある価格・条件で事業承継・M&Aを実施するためには、客観的な企業価値の把握が第一歩です。決算書等をご提出いただければ、20年で2000件以上のM&A支援実績を持つコーポレート・アドバイザーズが無料で企業価値シミュレーションを実施いたします。

伏江亜矢
監修者:伏江亜矢
株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長
金融機関で法人営業を担当後、2012年に当社入社。M&Aの事前準備から、候補先のソーシング、企業価値評価、条件交渉、クロージングまで一気通貫した支援を行っている。
  • facebook
  • twitter
  • ページのリンクをコピーしました
会社概要

コーポレート・アドバイザーズM&Aでは、2002年の創業以来、様々な業種において累計1500件以上の会社売却・M&A支援(仲介・アドバイザリー、企業調査/デューデリジェンス、株価算定/バリュエーション、組織再編、PMI支援など)をおこなっています。
累計申込者2000名以上のM&Aのフェーズごとに成功のポイントを解説する「M&A成功確率向上セミナー」など、M&A検討中の方のために毎月、無料でオンラインセミナーを開催しておりますので、お気軽にご参加ください。

M&Aセミナー 開催中
参加無料

[セミナールーム/オンラインで毎月開催]

M&Aの事前準備、相手探し、条件交渉、M&A後の統合などについてポイント解説。M&Aの初心者から実務経験者まで、累計参加者数2000名以上の人気セミナーを開催中です。

  • M&A成功確率向上セミナー
    買い手が押さえておくべきポイント
    [戦略・案件開拓・価値算定・デューデリジェンス・PMI]
  • 企業経営者のための事業承継M&Aセミナー
    高く評価されるための事前準備のポイント など

M&Aお役立ち資料ダウンロード

事業承継・譲渡をご検討中の方へ

「成長戦略・事業のさらなる加速のために」「後継者問題の解決のために」
企業価値を最大化できる、シナジー(相乗効果)を見込める相手先とのM&Aをワンストップで支援します。