日本クレアス税理士法人| コーポレート・アドバイザーズ(20年・2000件以上のM&A支援実績)の実務経験者による監修「よくわかるM&A」

伝統工芸の後継者不足~廃業から救うには|承継・売却・M&A動向・事例・手続き
監修者:伏江 亜矢(株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長)
製造業(食品・バイオ・化学・金属ゴムプラスチックなど)担当

国内市場の縮小や後継者不在により伝統工芸の廃業が増加するなか、前向きな伝統工芸の売却・引継ぎ事例が増えています。増加傾向にある輸出ニーズをどのように取り込んでいくのか。伝統工芸のM&A実務に精通する専門家が、売却事例、M&A動向、手続きについて解説します。

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伝統工芸の業界動向 

伝統的工芸品とは

伝統的工芸品とは「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)※」に基づき、経済産業大臣が指定した工芸品を指します。※伝統的工芸品産業の振興を目的として、昭和49年に公布された法律。

■指定の要件(伝産法第2条)
一 主として日常生活の用に供されるものであること。
二 その製造過程の主要部分が手工業的であること。
三 伝統的な技術又は技法(注)により製造されるものであること。
四 伝統的に使用されてきた原材料
(注)が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。五一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。
(注)具体的には100年以上の歴史を有していること。

現在の指定品目は 全国で237品目(令和4年3月18日時点)となっています。[1]

伝統工芸の業界動向

伝統的工芸品の生産額は平成28年度に1,000億円を下回って以降、漸減傾向にあります。また、従業員数は緩やかな減少傾向にあり、令和2年度は約5.4万人となっています。伝統工芸士は職人の高齢化に伴い減少傾向にあります。一方、女性伝統工芸士シェアは増加傾向にあり、女性の伝統的工芸品産業での活躍が進んでいます。[1]

[1] 経済産業省説明資料 令和4年7月製造産業局伝統的工芸品産業室

伝統工芸品における後継者不足

伝統工芸品については、需要低下に加えて後継者不足が深刻です。伝統工芸は100年以上の歴史がありますが、一度途絶えてしまうと復活が難しいと言われています。

一方、伝統工芸品は近年、外国人観光客や海外市場(輸出)における需要があることから、伝統工芸品ビジネスへの注目度が高まりつつあります。

事業承継とは

事業承継の定義

事業承継とは、“現経営者から後継者へ事業のバトンタッチ”を行うことです。

企業がこれまで培ってきたさまざまな財産(人・物・金・知的資産)を上手に引き継ぎ、承継後の経営を安定させるために重要です。

事業承継では「納得いくまで検討を重ねること」が重要

事業承継においては、こうすれば必ずうまくいく、必ず正解にたどり着く、というものはありません。また、人生と同じで選べる選択肢は一つであるため、自身の事業承継を振り返ってみても、結果的に良かったのだろう、ということしか言えません。

事業承継を成功させるためには何か重要なのか?最も重要なのは「あらゆる選択肢や想定に対して、納得するまで検討を重ねることです。この検討過程は、様々なリスクをご自身で理解し、事業承継で起こりうる様々なリスクを減らしていくことにつながります。

事業承継で引き継ぐ3つの経営資源

ヒト(経営)の承継例) 後継者の育成
資産の承継例) 株式、事業用資産(設備・不動産等)、資金(運転資金・借入金等)、許認可
目に見えない経営資源の承継例) 経営理念、人脈や顧客との信頼関係、チームワーク、組織力、ブランド、人材力

ヒト(経営)の承継

ヒト(経営)の承継とは、後継者の育成です。特に中小企業・小規模企業においては、現経営者に経営ノウハウ・技術・取引関係などが依存していることが多く、それらを引き継げる後継者を見つけることが困難だったり、承継に時間を要するケースが多く見られます。また中小企業・小規模事業者のなかには、後継者が見つからず廃業せざるをえないケースもあります。

資産の承継

資産の承継とは、株式、事業用資産(設備・不動産等)、資金(運転資金・借入金等)、許認可などの承継です。

資産の承継については、タイミングや対策次第で税金が大きく変わるケースがあるため、税金を考慮した承継方法を検討する必要があります。また、資産の承継において検討すべきポイントは専門的かつ多岐にわたるため、早めに事業承継や相続に詳しい税理士等の専門家に相談することが望まれます。

目に見えない経営資源の承継

目に見えない(無形の)経営資源の承継とは、経営理念、人脈や顧客との信頼関係、チームワークや組織力、ブランドや人材力等です。

とくに中小企業・小規模事業者の場合は、ヒト(経営)の承継と目に見えない資産の承継が、利益の源泉であり成長の原動力であるケースが多いです。そのため、これらの資産をどう引き継ぐかが、事業承継のポイントになります。

参考:中小企業庁 マンガでわかる「事業承継」

事業承継の方法・選択肢

中小企業の事業承継の選択肢としては次の4つが挙げられます。

・親族承継
・社内承継
・IPO(新規上場)
・M&Aによる第三者承継

親族への承継

親族への承継のメリット

身内を後継者とする「親族内承継」は多くの企業で行われています。この親族内承継のメリットとして一般的以下のように考えられています。

・一般的に社内外の関係者から心情的に受け入れられやすい
・一般的に後継者を早期に決定し、長期の準備期間を確保できる
・他の方法と比べて、所有と経営の分離を回避できる可能性が高い

親族への承継のデメリット・注意点

親族承継にはメリットがある反面、デメリットもあります。

・親族内に、経営能力と意欲がある者がいるとは限らない
・相続人が複数いる場合、後継者の決定・経営権の集中が困難

後継者が学校卒業後に他社に就職し、一定のポジションに就いている等の場合を含め、家業であっても、早めにアナウンスをして本人の了解を明示的にとりつける取り組みが必要です。

社内承継(役員や従業員への承継)

社内承継のメリット

脱ファミリー企業化が進む中、社内承継の割合は年々増えています。メリットとしては一般的に以下の通りです。

・親族内に後継者として適任者がいない場合でも、候補者を確保しやすい
・後継者が業務に精通しているため、他の従業員などの理解を得やすい

社内承継のデメリット・注意点

社内承継にはメリットがある反面、デメリットもあります。

・親族内承継と比べて、関係者から心情的に受け入れられにくい場合がある
・後継者候補に株式取得等の資金力がない場合が多い
・個人債務保証の引き継ぎが難しい

従業員は経営リスクをとる覚悟で入社、就業してきておらず、白羽の矢を立てた幹部等の従業員が、経営者となる覚悟を得るためには、早めのアナウンスと本人の了解を明示的にとりつける取り組みが必要です。

IPO(株式上場)

IPOできる企業は限定的です(帝国データバンクによると、2022年日本国内IPO企業数は91社、但しTOKYO PRO Marketを除く)。そのため、多くの中小企業では、事業承継の選択肢としてIPOというのはない状況にあります。しかしTOKYO PRO Marketのような他の市場に比べハードルの低い市場が登場しているため、条件を満たす可能性のある企業は選択肢に入れるケースが出てきています。

IPO(株式上場)のメリットとデメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

IPO(株式上場)のメリット

・不特定多数の投資家から資金調達をしやすくなる
・企業やブランドの知名度を高めることができる
・知名度向上に伴い、優秀な人材を採用しやすくなる
・上場した経営者というステータスを得られる
・株式の売却による創業者利益を得られる
・内部管理体制の強化を図れる

IPO(株式上場)のデメリット・注意点

・上場準備に労力や時間がかかる
・上場を維持するために多額のコストがかかる
・株主の意見を尊重する必要性があるため、経営に対する自由度が低下する
・敵対的買収により、会社を乗っ取られるリスクがある

IPOには多大な準備や時間がかかる上に審査基準も厳しいため、事業承継を実現できる可能性は比較的低いです。そのため、事業承継の選択肢としてIPOを検討する場合には、他の選択肢として並行して検討を行う必要があります。

関連記事:中小企業が上場するには?IPOの条件・メリット・デメリット

参考:帝国データバンク「2022年のIPO動向」

M&A(第三者への承継)

M&Aとは

M&Aとは、英語のMergers(合併)and Acquisitions(買収)を省略した言葉ですが、日本においては、会社法の定める組織再編(合併や会社分割)に加え、株式譲渡や事業譲渡を含む、各種手法による事業の引継ぎ(譲渡・譲受け)をいいます。

関連記事:M&Aとは|目的・手法・流れ・成功のポイントをわかりやすく

参考:中小企業庁「中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~

一般的には、売り手側からみたM&Aの目的は、他社に引き継ぐ(売却する)ことにより、会社や事業を存続・発展させることです。一方、買い手側からみたM&Aの目的は、他社を譲り受ける(買収する)ことで、事業・市場シェアの拡大や周辺事業への展開をすることです。

売り手・買い手の双方がM&Aの目的を実現するためには、相性が良くシナジー(相乗効果)を発揮できる相手先を選定し、適切な価格でM&Aを実施することが重要なポイントの一つです。

M&Aによる承継のメリット

・保有している全株式を一括で現金化できる
・短期間かつ低リスクで事業承継を行える
・経営者の立場を退き、新しい道に進める(新規事業の立ち上げやセミリタイアなど)
・大手企業の傘下入りにより、従業員の待遇向上や取引先への還元を期待できる

M&Aによる承継のデメリット・注意点

・希望の条件(従業員の雇用、売却価格等)を満たす買い手を見つけるのが困難
・文化やシステムの統合に時間がかかる
・利害関係者(株主/役員・従業員/取引先)に対して十分な説明が必要

中小オーナー企業の事業承継の選択肢として、M&A(第三者への承継)は一般的になりつつあります。親族承継では該当者がいない、社内承継ではNo2はいるもののオーナー社長と年齢が近く、かつ営業・開発・技術などすべてを担ってきたオーナー社長の後を継ぐのは難しい、IPOできる企業は限定的というケースが多いためです。

よって、これまで「消去法」で最後の選択肢として考えられがちであったM&Aですが、成功させるためには数年単位の準備期間が必要であるため、親族承継、社内承継、M&Aという順に検討するのではなく3つ同時に、もしくは「M&Aこそ一番初めに検討すべき」と言えます。

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伝統工芸品の事業承継・M&A動向

伝統工芸品の工場を廃業ではなく第三者への承継・売却(M&A)という選択肢をとるケースが出てきています。譲受け先からすると、IT・DX化の遅れや海外市場(輸出)への展開余地があるため、全国各地の伝統工芸品の事業者に対し、経営改善・販路拡大によるより魅力的な投資先として見る企業やファンドが出てきています。

伝統工芸の出資・事業売却・M&Aの事例

もりおかSDGs投資事業有限責任組合、伝統工芸「ホームスパン」振興のクラシカウンシルに出資

伝統工芸品の概要

ホームスパン:もともとアイルランド等の農家で作られていた毛織物。羊毛から手染め・手紡ぎ・手織りで作ることを特徴とする。明治時代に日本に伝わり、現在では岩手県の盛岡市や花巻市のみで地場産業が残っている。[1]

出資を受ける側の企業の概要

クラシカウンシル:「ホームスパン」という手織りの毛織物の伝統工芸品の販売企画を手掛ける。また、製造を担う作家の方々が参加している団体「いわてホームスパンユニオン」の運営をしている。[2]

出資側の企業の概要

もりおか SDGs 投資事業有限責任組合:SDGsや社会課題解決に寄与し、盛岡広域・岩手県北地域に拠点を置く企業を投資対象としている。

「もりおか SDGs ファンド」と呼ばれ、FVC Tohoku 株式会社と盛岡信⽤⾦庫等と共同で設⽴。

M&Aの目的

事業拡大の為資金調達を必要とし、本件出資が行われた。クラシカウンシルは、ホームスパンの振興・普及・羊毛生産・商品製造・販売・担い⼿育成などに取り組んでいて、更なる事業の拡大を目指していた。

M&Aの手法

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社より、 FVC Tohoku 株式会社と盛岡信⽤⾦庫等と共同で設⽴したもりおか SDGs 投資事業有限責任組合が、株式会社クラシカウンシルに投資を実⾏したことを発表した。[3][4]

京銀まちづくりファンド、伝統的工芸品である京くみひも製作の昇苑くみひもに投資

譲渡企業の概要

昇苑くみひも:伝統的工芸品である京くみひもの製作を事業とし、帯締め、携帯電話用ストラップ、ブレスレット等の製造販売。[5]

譲受企業の概要

京銀まちづくりファンド有限責任事業組合:略称は京銀まちづくりファンド。

投資対象の事業として、空き家、空き店舗、空き施設、古民家などをリノベーション等により活用。商業施設・宿泊施設・交流
施設等として整備・運営していく。

投資対象のエリアは、宇治市・舞鶴市・南丹市の特定のエリア。

M&Aの目的

本件投資によって、「昇苑くみひも」本社隣接の古民家を改修し、カフェとして活用する。「中宇治」エリアの持続的な活性化の一翼を担うことが期待している。

M&Aの手法

2023年8月にて、京都銀行が、一般財団法人 民間都市開発推進機構との共同出資により設立した「京銀まちづくりファンド」は、第4号投資案件として「有限会社昇苑くみひも」へ投資しました。

投資額は20,000千円となる。[6]

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参考URL:

[1] 「もりおかSDGs ファンド」が手紡ぎ手織りの毛織物「ホームスパン」事業を展開する「クラシカウンシル」に出資

[2] 株式会社クラシカウンシル:ABOUT

[3] 森岡信用金庫:「もりおか SDGsファンド」投資実行のお知らせ

[4] フーチャーベンチャーキャピタル株式会社:ホームスパンを通じて豊かな暮らしを実現する株式会社クラシカウンシルに投資を実⾏

[5] 昇苑くみひも:会社案内

[6] 京都銀行:「京銀まちづくりファンド」第4号案件への投資について~有限会社 昇苑くみひもへ投資~

M&A・売却のメリットとデメリット

M&A・売却のメリットを売り手、買い手別に解説します。

売り手のメリット(廃業との比較)

売却する主なメリットは以下の5つです。

・資本獲得による経営基盤・ブランド力の強化

・従業員の雇用維持

・後継者問題の解決

・売却による資金の獲得

・借入金の個人保証の解除

資本獲得による経営基盤・ブランド力の強化

例えば、M&A・会社売却によって他の会社や異業種企業の子会社となることで、相手先が保有する経営資源を有効活用した売上増加・コスト削減が可能です。

また、大手資本を獲得することにより、ブランド力が上がり、その相手先が持つ営業力、資金力、採用力が自社に取り入れられます

従業員の雇用維持

M&A・売却によるメリットに、従業員の雇用維持が挙げられます。全国各地の伝統工芸品の工場では、人手の確保、国内市場縮小による利益の圧迫、IT化・DX化の遅れなど、厳しい経営環境を強いられているケースが多いです。一方で経営状況が良好でも、経営者が高齢化しているものの後継者がいない会社もあります。

そういった企業が倒産や廃業をしてしまうことにより、従業員は、雇用を失ってしまいます。M&A・会社売却を行うことで従業員の雇用は守られます。従業員の雇用維持は、中小企業にとって大きなメリットとなります。

後継者問題の解決

近年は、経営者の高齢化や人材不足による後継者問題が影響して、事業承継がうまくいかず廃業してしまう会社が増えており、M&A・会社売却によって、同業種または異業種の大手・中堅企業に引き継いでもらうことにより、後継者問題の解決ができる点も大きなメリットとなります。

>>廃業とM&A(会社売却)の比較について、以下の記事で詳しく解説しています。

売却による資金の獲得

経営者は売却により多額の資金を獲得できるメリットもあります。

売却により得た資金は、新事業の立ち上げや引退後の生活費などいろいろな使途があります。

借入金の個人保証の解除

借入金の個人保証の解除も中小企業の経営者にとって大きなメリットとなります。

売却後、買い手となる企業が自社の借入金を一括返済するケースもあれば、借入自体は継続して、連帯保証を解除する手続きを行うケースもあります。いずれの場合でも中小会社の経営者の精神的負担となっていた、借入金の個人保証は解除される取り決めを行うことが通常です。

買い手のメリット

譲り受ける主なメリットは以下の2つです。

・事業規模の拡大によりスケールメリットを享受する

・伝統工芸品ビジネスへの新規参入

事業規模の拡大によりスケールメリットを享受する

M&Aによって同業他社を譲受けできれば、従業員・取引先・拠点や設備等を獲得し、スピーディーに事業拡大ができるメリットがあります。また同時に事業規模拡大に伴うスケールメリット(仕入コストの圧縮など)も享受できます。

伝統工芸品ビジネスへの新規投資

100年以上の歴史のある伝統工芸品ビジネスに進出するためには、既存の伝統工芸品事業の譲受けが有効の選択肢となっています。

また、IT化やDX化の遅れていることから、経営改善の余地がある業界とされています。また、ブランディングにより海外市場への展開も可能であるため、このような点から経営改善が可能である企業やファンドなどからの投資先として注目されています。

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伝統工芸品事業の売却の手順/流れ

事前準備

自社・競合・市場の分析などを行い、売却の目的や条件などを整理し、売却準備を行います。

▼以下の記事では、会社売却の事前準備について、詳しく解説しています。

②M&A専門会社との契約

通例、買い手候補を探し始める段階(または事前検討の段階)でM&A専門会社(仲介会社など)と契約し、買い手とのマッチングや交渉手続きに関する支援を依頼します。

自社で交渉相手を探すことも可能ではありますが、選定範囲がかなり限定されてしまい、売却の目的・条件を達成できる相手を探し出すことは困難です。また、交渉手続きには幅広い専門知識が求められます。そのため、M&A専門機関の支援のもとで売却を進めるのが一般的です。

▼以下の記事では、M&Aアドバイザーの詳細について解説しています。

③買い手候補とのマッチング

M&A専門機関に買い手候補の探索・紹介を依頼したり、インターネット上で提供されるマッチングシステムを利用して買い手候補を募集したりすることで、有望な交渉相手を探します。

売却を検討している事実が外部に漏れると、事業やM&Aの遂行に支障をきたす恐れがあるため、この段階では社名などは伏せ、会社が特定できないような情報だけを相手方に提示します。

④初期交渉・トップ面談

有望な交渉相手が現れたら秘密保持契約を締結し、社名を含むより詳細な情報を交換して、相手企業に対する分析や予備的な交渉を行います。M&Aに関する意向を確認しあうため、経営トップ同士の面談も行われます。

⑤基本合意

M&A取引の見通しが立ち、M&A契約締結に向けた本格的な協議に入ることが決まったら、基本合意を取り交わします。

基本合意に盛り込まれる主な事項は、大きく分けて以下の2つです。

◆M&Aのスキームや条件についての暫定的な合意内容の確認(法的拘束力はなく、以後の交渉次第で変更もありうる事項)

◆以後における交渉の進め方に関する義務(独占交渉権の付与、デューデリジェンスへの協力など、法的拘束力のある事項)

▼以下の記事では、基本合意書の重要条項や確認ポイントなどについて解説しています。

⑥デューデリジェンス

買い手側はデューデリジェンスを行い、売り手企業が抱えるリスク・問題点を精査します。売り手側は資料提供などによりデューデリジェンスに協力します。

▼以下の記事では、財務デューデリジェンスについて解説しています。

⑦最終交渉~M&A契約締結

デューデリジェンスの結果を受けて最終的な条件交渉が行われ、交渉がまとまればM&A取引契約(株式譲渡契約など)が締結されます。

まとめ  

国内市場の縮小や後継者不在により伝統工芸の廃業が増加するなか、前向きな伝統工芸の事業引継ぎ・売却事例が増えています。本記事では、伝統工芸品の事業承継・売却事例や手続き・メリット・留意点などを解説しました。事業引継ぎや売却検討時の参考にしていただけますと幸いです。

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伏江亜矢
監修者:伏江亜矢
株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長
金融機関で法人営業を担当後、2012年にコーポレート・アドバイザーズ入社。M&Aの事前準備から、候補先のソーシング、企業価値評価、条件交渉、クロージングまで一気通貫した支援を行っている。 ヘルスケア・ライフサイエンス(医療・介護・メーカー・卸商社)、IT・ソフトウエア(Webサービス、システム開発)、人材サービス(派遣、警備、ビルメンテナンス)などのM&A支援経験が豊富。 M&A成功のために必要な情報をわかりやすく解説するコラムサイト「よくわかるM&A」の運営責任者。
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■事業内容
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海外現地法人サポート
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■社員数
417名(グループ全体 / 2023年10月現在)
税理士(試験合格者含む)56名
公認会計士(試験合格者含む)15名
特定社会保険労務士2名
社会保険労務士(試験合格者含む)12名
弁護士 2名
相続診断士41名
中小企業診断士1名
行政書士4名

■関与先
法人 3,240社(うち上場企業85社)
社会福祉法人 133件
クリニック・医療法人・介護福祉等 593件
個人 4,015名
合計 7,981件

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