監修者:伏江 亜矢(株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長) |
建材卸・住設卸の会社売却するにあたって、参考となる売却事例や、交渉のポイント、売却相場等、業界動向を踏まえて解説します。
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建材卸業界とは
建材卸業の定義
建材(建築材料)卸業は、木材・竹材、セメント、板ガラス、建築用金属製品などの建築材料を扱う業態の一群を指します。日本標準産業分類(2013年10月改定) によりますと、大分類「卸売業,小売業」のうち中分類「建築材料,鉱物・金属材料等卸売業」が、ほぼ建材卸業に当てはまります。なお、鉱物・金属材料等卸売業に建材卸業が含まれるのは、アルミサッシの原料となるアルミなどを扱う業者が含まれるためです。
建材卸業界の現状・市場規模
建材卸売業の年間売上金額は、総務省「経済構造実態調査」によりますと、2018年時点で約19.2兆円でした。この中には、トイレ、キッチン、バスなどの住宅設備は含まれていません。
トレンドとして経済産業省「商業統計調査」と総務省・経済産業省「経済センサス」を見てみますと、2010年代以降は、1990年代初期の半分以下まで規模が縮小しました。
建材は原材料が木材や金属製品、樹脂など幅広く、川上の木材メーカーや鉄鋼業界、非鉄金属業界、化学業界などから、加工メーカー、商社、卸業へと多層構造で商品が流通します。このためエンドユーザーである住宅メーカーや地場の工務店に商品が届くまでには、何段階ものプロセスを経ます。
また、建材卸業界は住宅着工戸数などマクロ経済の影響や住宅取得推進策といった国の施策にも大きく左右されます。
建材卸売市場全体としては、1990年代から減少傾向が続きましたが、東日本大震災が起きた翌年の2012年以降に底打ちの兆しが見えてきました。新設住宅着工戸数は2017年度以降、アパートや賃貸マンションなどの貸家が供給過剰となり減退し、新型コロナウイルス感染症の流行にも見舞われました。
ただし、2021年度は新設住宅着工戸数が3年ぶりの増加となり、回復基調に転じました。
建材卸業界の主なプレーヤー
建材卸業界は、大きく総合商社系と独立系に分かれ、その他では大手住宅メーカーの住友林業も建材卸事業を手がけています。また、地場の工務店をエンドユーザーとして、地域に根を張る会社もあります。
総合商社系では、伊藤忠商事子会社の伊藤忠建材、住友商事・三井物産・丸紅子会社が事業を統合し発足したSMB建材、双日子会社の双日建材、三菱商事子会社の三菱商事建材があります。
建材業界においては、全国各地に中小事業者が多くいるため、大手による寡占状態にはありません。このため同業界大手10社による市場シェア(売上高ベース)は、約10%にとどまっています。
地域の建材卸としては、クワザワホールディングス子会社のクワザワ、ジューテックホールディングス、(OCHIホールディングス子会社)が、業務提携し、NESTグループを形成し、全国展開にも乗り出しています。
1923年創業のジューテックホールディングスは、2002年に日本ベニアと丸長産業の合併により発足した会社です。2009年には、持ち株会社体制に移行しています。
JKホールディングスも、2006年には純粋持ち株会社へ移行しました。同社グループ傘下には、ジャパン建材や木材・合板の加工製造や建材の小売りなどもあります。
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建材卸業界のM&A・買収・売却事例11選
JKホールディングス、坂田建材を子会社化【建材卸・住設卸×建材卸】
売り手企業の事業内容
坂田建材:建築資材卸売業、板金成形・加工業 岩手県花巻市
買い手企業の事業内容
JKホールディングス:住宅建材卸売業でトップクラスの売上高を誇るジャパン建材を中核に、住宅関連業界に幅広く事業展開
M&Aの実施目的
JKホールディングス:岩手県内における拠点の拡充と、東北地区におけるグループの経営基盤強化
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [1] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2021年3月 |
結果 | 坂田建材の株主である協和は、JKホールディングスに坂田建材の株式100%を売却。同日付で坂田建材の運営する板金の成形・加工事業を協和へ譲渡 |
売却金額 | 非公表 |
JKホールディングス、タムラより事業譲受【建材卸・住設卸×建材卸】
売り手企業の事業内容
タムラ:福岡県を拠点に、建築資材販売事業を行う。
買い手企業の事業内容
JKホールディングス:住宅建材卸売業でトップクラスの売上高を誇るジャパン建材を中核に、住宅関連業界に幅広く事業展開
M&Aの実施目的
JKホールディングス:福岡県内における拠点の拡充と、同地区におけるグループの経営基盤強化
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [2] | |
スキーム | 事業譲渡 |
実施時期 | 2021年10月 |
結果 | タムラは建築資材販売事業を、JKホールディングスに譲渡 |
売却金額 | 非公表 |
JKホールディングス、協和を子会社化【建材卸・住設卸×建材卸】
売り手企業の事業内容
協和:愛媛県を拠点に、合板及び建築資材の販売ならびに建築工事業を手掛けています。
買い手企業の事業内容
JKホールディングス:住宅建材卸売業でトップクラスの売上高を誇るジャパン建材を中核に、住宅関連業界に幅広く事業展開
M&Aの実施目的
JKホールディングス:岩手県内における拠点の拡充と、東北地区におけるグループの経営基盤強化。
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [3] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2022年4月 |
結果 | 協和は、JKホールディングスの連結子会社であるブルケン四国に、協和の株式100%を売却。 |
売却金額 | 非公表 |
ジューテックホールディングス、イワベニを買収【建材卸・建築×建材卸・施工】
売り手企業の事業内容
イワベニ:岩手県を中心に建築資材の販売及び施工請負事業を行う
買い手企業の事業内容
ジューテックホールディングス:住宅資材販売事業を中心として、良質な住宅資材を提供するほか、請負住宅の建築やリフォーム工事、また、お得意様に対するITシステムのサポートを行う
M&Aの実施目的
ジューテックホールディングス:東北地区での事業基盤の強化
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [4] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2018年10月 |
結果 | イワベニはジューテックホールディングスに、イワベニの株式100%を売却。 |
売却金額 | 非公表 |
ジューテックホールディングス、中部フローリングを子会社化【建材卸・建築×住設卸・施工】
売り手企業の事業内容
中部フローリング:公共施設や店舗など非住宅分野におけるフローリング工事に強み
買い手企業の事業内容
ジューテックホールディングス:住宅資材販売事業を中心として、良質な住宅資材を提供するほか、請負住宅の建築やリフォーム工事、また、お得意様に対するITシステムのサポートを行う
M&Aの実施目的
ジューテックホールディングス:東北地区でのグループ事業の拡大
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [5] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2021年4月 |
結果 | 中部フローリング株主がジューテックホールディングスに中部フローリングの全株式を売却 |
売却金額 | 非公表 |
OCHIホールディングス、太陽産業を買収【建材卸・住設卸・施工×住設卸】
売り手企業の事業内容
太陽産業:業務用冷凍冷蔵、空調、厨房機器をはじめとした環境省エネ機器の販売及び設置工事を行う。仙台に本社、東北各県と東京に営業拠点を置く。
買い手企業の事業内容
OCHIホールディングス:建材・環境アメニティ・加工・エンジニアリング・その他の5事業を展開。
M&Aの実施目的
OCHIホールディングス:非住建分野の中核として、太陽産業を迎え入れ、東日本における事業展開の強化を図る。
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [6] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2018年8月 |
結果 | 太陽産業がOCHIホールディングスに太陽産業の発行済み株式の全てを売却 |
売却金額 | 約18億円 |
オチアイ、株式会社中村の建具・建材卸販売事業を譲受【建材卸×建材卸】
売り手企業の事業内容
中村:建具資材・建材卸売事業
買い手企業の事業内容
オチアイ:家具・建具用資材販売、内装工事
M&Aの実施目的
中村:後継の中村光予子氏が経営する楠製雑貨製造及び新事業である農業を主とした食品製造事業に特化するため、建具・建材卸販売事業を譲渡
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [7] | |
スキーム | 事業譲渡 |
実施時期 | 2022年6月 |
結果 | 中村が建具・建材卸売事業をオチアイに譲渡 |
売却金額 | 非公表 |
フクヤ建設、成商を買収【建築・建材卸×建材卸・加工】
売り手企業の事業内容
成商:1951年創業で、鉄鋼建材の卸や建築金物の加工等を行う。
買い手企業の事業内容
フクヤ建設:新築注文・規格住宅、リノベーション、店舗・医療施設建設、宅地造成を行う。
M&Aの実施目的
成商:後継者不在
フクヤ建設:経営多角化
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [8] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2021年12月 |
結果 | 成商がフクヤ建設に成商の発行済み株式の全てを売却 |
売却金額 | 非公表 |
ダイキアクシス、アルミ工房萩尾を買収【住設卸×住設卸】
売り手企業の事業内容
アルミ工房萩尾:愛媛新居浜市に本社を置き、住宅サッシ・エクステリア建材の施工・販売を行う。
買い手企業の事業内容
ダイキアクシス:主要事業の一つとして、水回り関係を中心とした住設機器を元請けのゼネコン・地場建築業者・ハウスメーカーに販売する住宅機器関連事業を行う。
M&Aの実施目的
ダイキアクシス:より質の高い商材・サービスの提供(水回り関係に加えて住宅サッシおよびエクステリア建材に関する提案を実施することが可能)
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [9] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2021年10月 |
結果 | アルミ工房萩尾がダイキアクシスに、アルミ工房萩尾の発行済み株式の全てを売却 |
売却金額 | 非公表 |
飯田グループホールディングス、オリエントを買収【建築・分譲×建材卸】
売り手企業の事業内容
オリエント:内装建材(ドア・フロア・階段・収納等)の製造販売
買い手企業の事業内容
飯田グループホールディングス:戸建分譲事業、マンション分譲事業、請負工事事業及びこれらに関連する事業を行う。
M&Aの実施目的
飯田グループホールディングス:住宅用内装建材の安定的調達並びに更なる効率化
M&Aの成約に関する詳細
詳細 [10] | |
スキーム | 株式譲渡 |
実施時期 | 2021年1月 |
結果 | オリエントが飯田グループホールディングスにオリエントの発行済み株式の全てを売却 |
売却金額 | 非公表 |
建築資材の製造販売会社の増資・資本業務提携【プラント工事×建築資材製造・卸】
売り手企業の事業内容
所在地 | 西日本 |
---|---|
事業内容 | 建築資材の製造販売会社 |
譲渡理由 | 事業の拡大のため |
買い手企業の事業内容
所在地 | 東日本 |
---|---|
事業内容 | プラント工事 |
買収理由 | 事業領域拡大のため |
譲渡企業が開発した建設資材と工法が優れたものであると評価し、資本業務提携により当該資材の販売権を取得し、資材・工法を用いた工事領域及びプラント工事の受注拡大を図るため、譲渡企業の第三者割当増資を引き受け、業務提携契約を締結しました。
>>「建築資材の製造販売会社の増資【資本業務提携】」の続きをみる
参考URL:
[1] JKホールディングス<9896>、岩手県の坂田建材を買収
[2] JKホールディングス、タムラから建築資材販売事業を譲受
[3] JKホールディングスの連結子会社であるブルケン四国、協和を買収
[4] ジューテックホールディングス<3157>傘下のジューテック、建築資材販売のイワベニを買収
[5] ジューテックホールディングス、中部フローリング株式会社の株式取得に関するお知らせ
[6] OCHIホールディングス<3166>、三菱ガス化学<4182>孫会社で冷凍冷蔵・厨房機器等販売の太陽産業を買収
[7] 総合インテリア資材卸のオチアイ、中村から建具・建材卸売事業を譲り受け
[9] ダイキアクシス<4245>、住宅サッシ・エクステリア建材施工・販売のアルミ工房萩尾を買収
[10] 飯田グループHD<3291>、群馬県で内装建材製造販売のオリエントを買収
建材卸・住設卸の売却価格の相場
M&Aの売却価格は、企業価値評価をもとにして当事者間の協議により決定します。
企業価値評価には様々な手法がありますが、中小企業の売却のような比較的小規模なM&Aでは、年買法(年倍法)という簡易的な手法がしばしば用いられます。
▼以下の記事では、M&Aの価格の決め方について解説しています。
年買法(年倍法)による企業価値評価
年買法では以下の式で企業価値を評価します。
企業価値=時価純資産+直近年度の利益(または数年分の平均値)の2~5倍程度 |
純資産(=資産総額-負債総額)は過去から現在にいたる事業活動の結果を金額で表したものです。帳簿上の資産・負債の額は現在の価値と乖離している場合があるため、資産・負債を時価で評価し直した上で差し引きして時価純資産を求めます。
経営破綻状態で、今後利益が発生することが見込めない(収益力がゼロの)ケースでは、純資産額が企業価値と見なされます。
売り手企業に収益力があり、将来的に利益が発生すると見込まれる場合には、その分の価値を見積もって純資産額に加える必要があります。
将来の収益力を合理的に評価するためには、詳細な事業計画をもとに利益の値を具体的に予測した上で、リスクを加味して現在の価値に引き直す、という複雑な計算手続きが必要です。規模の大きいM&Aや上場企業が買い手となるM&Aではそうした計算を用いた手法(DCF法)で企業価値評価が行われます。
これは一般的な中小企業には難しいことなので、年買法では「現状の利益の数年分」として将来の収益力を簡易的に見積もります。
利益にかける年数は一般的には「2~5」が相場とされますが、業種や地域などにより相場は異なります。
実際の年数は以下のような様々な要因を総合的に考慮して決定され、相場を超えることもあれば下回ることもあります。
○利益や財務の状況
○取引先
○立地
○引き継げる人材の価値
○事業の引継ぎやすさ
現体制のもとでは将来的に十分な利益が見込める事業であっても、売却後に経営者が抜けることで取引先が離脱してしまうようであれば、事業の価値を十分に引き継ぐことができないということになり、買い手から見た企業価値が下がります。
こういったケースでは、利益にかける年数が大きく下がることもありえます。経営者が売却後も一定期間在籍して事業引継ぎに協力するといった取り決めを契約に含めることで、企業価値の下落を防ぐことが可能なケースもあります。
企業価値評価をもとにした売却価格の決定
譲渡企業が売却を行わずこのまま単独で存続すると仮定した場合の企業価値(単独価値)と、譲り受け企業に売却してその子会社や一部門となったと仮定した場合の企業価値は、異なるのが通例です。
譲り受け企業との統合により相乗効果(シナジー)が生まれ、収益力が増すのであれば、企業価値はシナジーの分だけ単独価値よりも大きくなります。
シナジーはM&A後に達成される価値で、失敗のリスクもあるため、買い手としてはシナジー評価額の全額を含む企業価値を売却価格とするのは割に合いません。買い手側はシナジー全額を含む企業価値を上限として、それよりもなるべく低い金額を求めて交渉することになります。
一方、売り手としては、単独価値を下回る金額では明らかに損をすることになりますし、経営権を譲り渡す以上は単独価値にある程度の額を上乗せした(プレミアムを含んだ)価格を求めるのが当然です。
結局、シナジー全額を下回る範囲で、どれだけの額のプレミアムを引き出すかが、売り手にとっての価格交渉のポイントとなります。
期待されるシナジーが大きいほど、より高額の売却価格が期待できます。それだけでなく、売却後の事業や雇用の見通しも明るくなります。M&Aにおいては売り手と買い手の相性が非常に重要です。
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建材卸・住設卸のM&A・売却のメリット
建材卸・住設卸におけるM&A・売却のメリットを売り手、買い手別に解説します。
売り手のメリット
建材卸・住設卸を売却する主なメリットは以下の5つです。
・従業員の雇用維持
・後継者問題の解決
・大手グループ入りによる経営基盤の強化
・売却による資金の獲得
・借入金の個人保証の解除
従業員の雇用維持
建材卸・住設卸のM&A・売却によるメリットに、従業員の雇用維持が挙げられます。他業界に違わず、人手の確保、価格競争の激化による利益の圧迫、大手企業に比べIT化・DX化の遅れなど、非常に厳しい経営環境を強いられているケースが多いです。一方で経営状況が良好でも、経営者が高齢化しているものの後継者がいない建材卸・住設卸会社もあります。
そういった企業が倒産や廃業をしてしまうことにより、従業員は、雇用を失ってしまいます。M&A・会社売却を行うことで従業員の雇用は守られます。従業員の雇用維持は、中小企業にとって大きなメリットとなります。
後継者問題の解決
近年は、経営者の高齢化や人材不足による後継者問題が影響して、事業承継がうまくいかず廃業してしまう会社が増えており、M&A・会社売却によって、同業種または異業種の大手・中堅企業に引き継いでもらうことにより、後継者問題の解決ができる点も大きなメリットとなります。
大手グループ入りによる経営基盤の強化
例えば、M&A・会社売却によって大手建材卸・住設卸会社や異業種企業の子会社となることで、大手企業が保有する経営資源を有効活用した売上の向上が可能です。
大手企業のグループ傘下に入ることにより、ブランド力が上がり、その企業が持つ営業力、資金力、採用力が自社に取り入れられます。異業種の大手企業の傘下に入ると、同業企業が実現できなかった新たな付加価値をつける取り組みが可能になります。
いずれの場合も売上を増加させる売上シナジーや業務効率化等によりコストを削減するコストシナジー(相乗効果)の発揮が期待できます。
売却による資金の獲得
中小会社の経営者は、多額の資金を獲得できるメリットもあります。
売却により得た資金は、新事業の立ち上げや引退後の生活費などいろいろな使途があります。
借入金の個人保証の解除
借入金の個人保証の解除も中小の建材卸・住設卸会社の経営者にとって大きなメリットとなります。
M&A後、買い手となる企業が自社の借入金を一括返済するケースもあれば、借入自体は継続して、連帯保証を解除する手続きを行うケースもあります。いずれの場合でも中小会社の経営者の精神的負担となっていた、借入金の個人保証は解除される取り決めを行うことが通常です。
買い手のメリット
建材卸・住設卸会社を買収する主なメリットは以下の2つです。
・従業員や取引先の獲得による事業規模拡大
・建材卸・住設卸業界への新規参入
従業員や取引先の獲得による事業規模拡大
M&Aによって同業他社を買収できれば、従業員の大量増員が実現します。さらに、大手・中堅会社にとって、自社と重複しない領域の安定的な取引基盤を有する同業の中小企業をグループに取り込むことで、販路獲得というメリットもあります。
建材卸・住設卸業界への新規参入
建材卸・住設卸の会社をM&Aにより買収した場合、自社で立ち上げる場合に比べて、新規参入にかかる時間と労力を大幅に削減できます。建材卸・住設卸事業を行う上で必要な経営資源(ノウハウや経験知識を持った従業員や、営業所など)や、新たな顧客を獲得することができます。
売却までの手続きの流れ
事前検討
自社の強み・弱みや業界動向、市場の分析などを踏まえ、売却後の事業展開も考慮しながら、売却の目的、条件などを検討します。
M&A専門会社との契約
売り手自らが買い手を探し、直接交渉を行って売却することも可能ではありますが、買い手を探す範囲が非常に限定されてしまいますし、多方面の知識が要求されるM&A取引を単独で進めるのは容易ではありません。
通例は、M&A専門会社(M&A仲介会社など)と契約を結び、企業価値評価や事前検討事項のブラッシュアップ、買い手とのマッチング、条件交渉、手続き実行などに関する支援を受けながら売却を進めていきます。
交渉相手の選定
事前検討の内容をもとに、相性のよい交渉相手(売却の目的や条件に合致し、大きなシナジーを見込める相手)を探します、
有望な候補が見つかったら、事業内容や売却の条件などをまとめた概要書を相手方に提示して交渉を打診します。
売却を検討していることが外部に漏れると、運営中の事業に支障が生じたり、売却が難しくなったりする恐れがあります。そのため、この段階では院名などは伏せて、どの企業であるか特定できないような情報だけを概要書にまとめ、限られた候補企業にだけ提示します。
初期交渉・トップ面談
相手企業が交渉に興味を示したら、秘密保持契約を取り交わした上で、互いに社名を含むより詳細な情報を交換します。
これをもとに相手企業に対する分析や今後の交渉に関する検討を行ったのちに、経営者同士の面談(トップ面談)を行い、互いの意思を確認します。
基本合意締結
初期交渉・トップ面談で話がまとまれば、基本合意を締結します。
基本合意には、現時点での暫定的な売却条件や、今後の交渉に関する義務(一定期間の独占交渉権など)を定めます。
デューデリジェンス・関係者との交渉
買い手側は売り手企業の実情に関する詳細な調査(デューデリジェンス、買収監査)を行い、M&Aの支障となるような問題点・リスク(不適切な療養費請求、雇用・サービスを巡るトラブル、帳簿に載らない債務など)を抽出し、対応を検討します。
売り手側は調査に必要な範囲で内部資料などを提供し、デューデリジェンスに協力します。
賃貸店舗で営業している事業を譲渡する場合、賃借権を買い手に移転することになりますが、それには家主の承諾が必要になるのが通例です。できるだけ早い時期に家主と交渉し、承諾を得ておく必要があります。
リース契約など、その他の契約でも同様の交渉が必要になることがあります。また、従業員の雇用を買い手企業が引き継ぐためには、従業員当人の同意が必要です。
最終条件交渉~譲渡契約締結
デューデリジェンスの結果をもとに最終的な条件交渉を行い、交渉がまとまれば最終契約締結となります。
売却実行(クロージング)
株式譲渡の場合、対価の受け渡しと株券交付または株主名簿書換えにより売却が成立します。ただし、場合によっては事前手続きに手間がかかることがあります(譲渡制限株式の譲渡承認のための株主総会、少数株主からの譲渡委任状取り付け、未発行株券の発行など)。
事業譲渡の場合、事業に関わる資産や契約などを1つ1つ買い手に移転する手続きが必要です。移転に際して登記や契約相手方の合意が必要なものもあり、売却が完了するまでには相応の時間がかかります。
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まとめ
建材卸売市場は1990年代から減少傾向が続きましたが、2021年度は新設住宅着工戸数が3年ぶりの増加となり、回復基調に転じました。本業界は大手による寡占状態にはありませんが、大手が地場の優良な企業を買収し、地域補完をする動きも見られるようになってきました。
世界的な資源価格の上昇を受けた原材料高を背景として、建材卸売市場においても今後はM&Aによる業界再編が進む可能性があります。
▼以下の記事では、物流会社(トラック運送会社)の業界動向とM&A事例について解説しています。
日本クレアス税理士法人|コーポレート・アドバイザーズ グループでは、20年間にわたり2000件以上の会社売却・M&A支援を行っています。
よくわかるM&Aでは、会社売却・M&Aの基礎知識やフェーズごとのM&A成功ポイント・留意点を解説しています。
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■グループ企業一覧
日本クレアス税理士法人
日本クレアス社会保険労務士法人
弁護士法人日本クレアス法律事務所
株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティング
株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A
株式会社えびすサポート
株式会社結い財産サポート
日本クレアス行政書士法人
■事業内容
会計・税務
M&A(仲介・コンサルティング)
FAS(株価算定/財務調査/企業再編)
人事労務 / 給与計算
相続・事業承継
企業法務・法律顧問
IFRS(国際財務報告基準)・決算開示(ディスクローズ)支援
内部統制(J-SOX)・内部監査
海外現地法人サポート
非上場株式売却コンサルティング(非上場株式サポートセンター)
■社員数
417名(グループ全体 / 2023年10月現在)
税理士(試験合格者含む)56名
公認会計士(試験合格者含む)15名
特定社会保険労務士2名
社会保険労務士(試験合格者含む)12名
弁護士 2名
相続診断士41名
中小企業診断士1名
行政書士4名
■関与先
法人 3,240社(うち上場企業85社)
社会福祉法人 133件
クリニック・医療法人・介護福祉等 593件
個人 4,015名
合計 7,981件
M&A売却・事業承継案件一覧|CREASマッチング
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