日本クレアス税理士法人| コーポレート・アドバイザーズ(20年・2000件以上のM&A支援実績)の実務経験者による監修「よくわかるM&A」

会社を売りたい | 会社売却のメリット・手続き・価格相場を解説
監修者:伏江 亜矢(株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長)

会社を売りたいと考える主な理由には、後継者不在や経営の先行き不安解消などがあります。会社売却により、事業承継の実現や売却益獲得などのメリットがあります。会社を売るメリット・注意点・手続きの流れ、価格相場、最新事例を解説します。

>>会社売却のメリット、手続き、相場について、アドバイザーに無料相談する

会社を売ることで得られるメリット(廃業との比較)

はじめに、会社を売ることで得られる7つのメリットを廃業の場合と比較しながら解説します。

資金の獲得

会社を売ると、株式や事業の売却益を得られます。詳しくは後述しますが、利益の数年分かそれ以上の現金を得られるため、獲得した資金を新規事業やリタイア後の生活、負債の返済などに充てることが可能です。

また、廃業した場合には設備の処分などに費用がかかります。会社を売ると廃業費用をかけずに済むため、より多くの現金を手元に残せます。

事業承継の実現

帝国データバンクの調査によると、2022年における後継者不在率は57.2%[1]であり、5年連続で不在率は低下しているものの、約半数の企業では後継者がいない状況に直面しています。

後継者が不在の状況だと、黒字の企業でも事業承継を行うことができません。事業承継を行えずに廃業すると、従業員の雇用や取引先との契約を維持できなくなる上に、技術や伝統のブランドなども残せません。

一方で会社を売ると、会社の支配権(≒経営権)を買い手企業に移すことができます。そのため、後継者がいない状況下にあっても、事業承継の問題を解決可能です、

個人保証からの解放

一般的な中小企業の場合、銀行等の金融機関から資金調達する際に、経営者が個人保証を負うことが多いと言われています。個人保証が設定されている場合、倒産などによって返済が困難となった場合に、経営者個人が自らの財産によって返済を負う義務が発生します。

したがって、個人保証は経営者の行動や生活を大きく制限する要因となり得るため、重いプレッシャーとなり得ます。

一方で株式譲渡によって会社を売ると、買い手企業に負債が移動するため、売り手経営者側の個人保証は解除されることが一般的です。
つまり、会社を売ることで負債を返済するプレッシャーから解放されるのです。

日々の業務からの解放

会社を経営していると、営業や書類作成といった日々の業務をこなす必要があります。業務が忙しく、新規事業の立ち上げやプライベートに費やす時間を創出できなくなる事態が考えられます。

会社や事業を売ると、会社経営や事業を手放すことになるため、上述した日々の業務から解放されます。そのため、新規事業の立ち上げや主力事業、プライベートなどに時間を使えるようになります。

事業の存続

前述した後継者不足に加えて、債務超過や赤字などが原因となって、事業の継続が困難となるケースは多々あります。

会社を売ると、事業に関する権利や契約などを買い手企業に移すことができます。そのため、債務超過や赤字などの問題を抱えている企業でも、事業を存続させて、従業員の雇用や取引先との契約などを維持できます。

シナジー効果の創出

M&Aで期待できるシナジー効果とは、複数の会社・事業が1つに統合されることで、各々が別々に存在していた時の合計よりも大きな成果を生み出す効果です。たとえばX社の売上が1億円、Y社の売上が1億円の場合、両社の統合後に2億円を超える売上を得られるようになることがシナジー効果です。

会社売却によって買い手企業の傘下に入ると、人材交流やクロスセルなどにより、売上やコスト、技術開発などの面でシナジー効果を得られる可能性があります。自社のみで事業を行なっている時よりも大きな成果を生み出せる点は、売り手企業と買い手企業の双方にとって大きなメリットです。

会社・事業の業績改善

会社を売ることで買い手企業の傘下に入ると、買い手企業が有しているブランドや知名度、資金力などを売り手企業側でも活用できるようになります。

こうした経営資源を有効活用することで、会社・事業の業績を改善できる可能性があります。たとえば買い手企業の知名度を使うことで、自社の採用力強化や売上の増加を期待できます。

赤字でも売却できる?

営業利益や当期純利益がマイナスの企業である場合、会社を売ることができるかどうか気になるかと思います。売却は不可能というイメージを持たれる傾向があるものの、売却できる可能性は十分にあります。

具体的には、以下の条件に当てはまる企業であれば、赤字でも売却できる可能性はあります。

○優秀な人材や優れたノウハウなど、利益を生み出す経営資源を有している

○将来を見据えて事業への投資を行っていることが原因で一時的に赤字となっている

○買い手企業によるテコ入れやシナジー効果の創出により、業績の改善を期待できる

また、事業譲渡や会社分割の手法を用いることで、利益が出ている事業や買い手企業が欲しい事業のみを売却できるため、上記に当てはまらない企業でもM&Aの相手が見つかる可能性はあると言えます。

[1] 全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)(帝国データバンク)

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会社を売りたい経営者が注意したいデメリット

会社を売りたい方にとって、会社売却はメリットが多い魅力的な手段です。ただし、会社売却にはメリットだけでなくデメリットもあります。具体的には、下記4つのデメリットに注意が必要です。

経営者の自由が制限される場合がある

会社を売る際に、買い手企業の要望によりキーマン条項を契約書に盛り込むことがあります。キーマン条項(ロックアップ)とは、会社売却後の一定期間において、経営者(または経営陣など)が会社に残ることを定められる条項です。

たとえば事業の属人性が高い場合や、利益の大半が経営者によってもたらされているケースなどでは、キーマン条項が設定されることが多いと言われています。

キーマン条項が設定されると、会社を売った後すぐに新規事業や老後の生活などに時間を費やせないため、経営者の方は自由を大幅に制限されてしまいます。

自由になりたい場合は、キーマン条項がなくてもM&Aを行ってくれる買い手企業を選定することが重要です。また、あらかじめ経営者自身がいなくても事業が回るようにビジネスモデルの転換や人材育成等を図っておくことも大切です。

競業避止義務で事業運営に支障をきたすリスクがある

競業避止義務とは、売り手企業に対して、売却した会社や事業と同じ事業を行なってはならないことを定める義務です。競業避止義務は、M&A後に売り手企業が同じ事業を引き続き行うことで、買い手企業の利益を損なう事態を防ぐ目的で設定されます。

事業譲渡の場合、会社法21条で競業避止義務が定められています。具体的には、「当事者の別段の意思表示がない限り、同一市区町村および隣接する市町村において、事業譲渡日から20年間は同一の事業を行なってはならない」と定められています。[2]

つまり、事業譲渡では原則として競業避止義務を負う必要があるのです。また、事業譲渡以外のスキームを使う場合でも、契約書の定めによって競業避止義務を負う場合があります。

競業避止義務を負うと、同じ事業を行えなくなるため、事業の運営に支障をきたすおそれがあります。事業の運営に支障が出る場合は、競業避止義務を負わないように契約書の記載項目を決定することが大切です。

従業員や顧客などから反感を買うリスクがある

会社を売ると、買い手企業が従業員や顧客との契約に関する決定権を握る場合があります。そのため、契約条件の変更によって、従業員や顧客から反感を買うリスクがあります。反感を買った結果、従業員のモチベーション低下や離職、顧客離れなどの事態が生じ、業績の悪化を招くおそれがあります。

また、会社を売ることを知った時点で、従業員が待遇の悪化や環境変化をおそれて、買い手企業への移動を拒否するおそれもあります。

こうした事態を防ぐには、従業員や顧客、取引先などの関係者を大事にしてくれる買い手企業を選ぶことが大切です。また、関係者に対して真摯な態度で条件や売却に至った背景などを説明し、理解を得ることも効果的です。

法的なトラブル・リスクがある

会社を売ることには、法的なトラブルやリスクが潜んでいます。たとえば特許や商標などの知的財産権の流出を招くおそれがあります。また、売却後に環境汚染などの偶発債務や未払い賃金などの簿外債務が発覚し、買い手企業との間で訴訟に発展する事態も考えられます。

こうした事態を回避するためには、事前にプレDDを行い、法的なトラブルやリスクを洗い出し、その対策を講じておくことが重要です。また、買い手企業やM&A専門家によるデューデリジェンスの際には、正確な情報を開示し、トラブルを未然に防ぐことも大切です。

>>廃業とM&A(会社売却)の比較について、以下の記事で詳しく解説しています。

[2]会社法第21条(e-Gov)

会社売却の価格相場は?会社を高く売るための交渉術は?

会社を高く売るためには、売却価格の相場や決め方を理解し、それに応じて高く売却するためのコツを押さえておくことが大切です。この章では、会社を高く売る上で必要となる知識をお伝えします。

簡易的な売却相場の算出方法

会社を売る際の相場は、年買法(年倍法)を用いて簡易的に算出できます。年買法(年倍法)では、「時価純資産+営業利益×2〜5年」の計算式で相場を求めることができます。

「営業利益×2〜5年」の部分は営業権(のれん)であり、経営状況や業種などをもとに年数を決定します。

たとえば時価純資産が7,000万円、各年の営業利益が2,000万円、3年分の営業利益をのれんとする場合、売却価格の相場は以下のとおり算出できます。

■売却価格の相場 = 7,000万円 + 2,000万円 × 3 = 1億3,000万円

最終的な売却価格の決め方

会社を売るときの価格は、企業価値評価やデューデリジェンスの結果を踏まえて、最終的には買い手企業との交渉によって決定します。したがって、前述した相場とはかけ離れた金額での売却となるケースもあります。

企業価値評価(バリュエーション)の手法は、「インカムアプローチ」、「マーケットアプローチ」、「コストアプローチ」の3種類に大別されます。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、将来的な収益性をベースに企業価値を評価する手法です。具体的な方法には、「DCF法」や「配当還元法」、「残余利益法」などがあります。

インカムアプローチのメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット○収益力や将来性を加味できる
○売り手企業が有する個別の価値を反映できる
デメリット○主観や恣意に企業価値が左右されやすい
○清算予定の会社には適さない

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、市場取引(事例や類似会社など)をベースに企業価値を評価する手法です。具体的な方法には、「類似取引比較法」や「類似会社比較法」、「市場株価法」などがあります。

マーケットアプローチのメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット○企業価値評価を客観的に行える
○市場の状況を加味できる
デメリット○売り手企業が有する個別の価値を反映しにくい
○市場の短期的な変動に影響されやすい

コストアプローチ

コストアプローチとは、売り手企業の純資産(貸借対照表)をベースに企業価値を評価する手法です。具体的な方法には、「時価純資産法」や「簿価純資産法」などがあります。

コストアプローチのメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット○企業価値評価を客観的に行える
○比較的簡単に企業価値評価を行える
デメリット○将来性を加味できない
○市場の状況を考慮できない

相場より高く売却するための交渉術

買い手企業との交渉次第では、相場よりも高い価格で会社を売ることが可能です。この項では、相場より高く会社を売る可能性を高める交渉術を5つ紹介します。

業績や市場が成長しているタイミングで売る

買い手企業は、売り手企業の現時点における業績だけでなく、ビジネスの将来性も考慮した上で最終的な買収金額を決定します。したがって、業績や市場が成長しているタイミングであれば、買い手企業から将来性や収益力を高く評価され、高値で会社を売れる可能性が高まります。

買い手企業からの需要がある経営資源(強み)を確保し、それを最大限アピールする

将来性と同様に、売り手企業が有するノウハウや特許等の経営資源も買い手企業が重視する要素の1つです。買い手企業から需要がある経営資源を持っている売り手企業であれば、そうでない企業と比べて高く評価される可能性が高まります。

したがって、会社を高い金額で売りたいならば、買い手企業からの需要がある経営資源(強み)の確保や強化に努めることが効果的です。

ただし、持っている強みを買い手企業が把握しなければ、会社の価値を高く評価してもらえない点には注意が必要です。客観的なデータや他社との比較結果などを用いて、自社が有している強みを最大限買い手企業にアピールすることが大切です。買い手企業に自社の強みを認識してもらうことで、高値で会社を売れる可能性が高くなるのです。

複数の買い手企業と交渉する

まったく同じ売り手企業でも、評価する買い手企業が異なれば、企業価値の評価結果は異なることが大半です。優れた金型加工技術を有するメーカーを例とした場合、その技術を自社に取り込みたい企業であれば高く評価する一方で、特にその技術を欲していない企業は低めに評価する可能性が高いです。

そのため、複数の買い手企業と交渉し、自社の経営資源を高く評価してくれる相手に会社を売ることが重要です。また、複数の買い手企業間でオークションのように競争を促すことで、高い価格で売却できる可能性もあります。

マイナスとなる要素を可能な限り減らす

簿外債務などのマイナス要素を抱えている売り手企業の場合、デューデリジェンスによって発覚することで、買収金額を減額されるおそれがあります。したがって、できる限り高い価格で会社を売りたい場合は、マイナスの要因を可能な限り減らしておくことが効果的です。

具体的なマイナスの要素としては、下記が挙げられます。

○不要な資産・事業

○簿外債務・偶発債務

○株主の分散

○現経営者への依存度の高さ

こうしたマイナス要素を減らすには、在庫処分や法的手続き、人材育成などの対策が必要となり、短期間では行えないことが一般的です。したがって、早い時期から対策に取り組むことが大切です。

M&Aの専門家によるサポートを活用する

会社を高く売るためには、自社の経営資源を高く評価してくれる買い手企業を見つけることや、強みを的確に企業価値に反映することが重要です。ただし、買い手探しや企業価値評価には、幅広いネットワークや会計等の専門知識が必要です。

したがって、会社を高い価格で売りたい場合は、M&Aの専門家によるサポートを活用することが効果的です。M&Aの専門家に買い手探しや企業価値評価を支援してもらうことで、高い価格で会社売却できる可能性が高まると考えられます。

また、書類作成などの手続きもサポートまたは代行してもらえるため、会社売却の手続きが忙しいことが原因で本業に支障をきたす事態を回避しやすくなります。

会社売却に用いる手法

M&Aの手法をまとめると以下のとおりです。

上記図解の中でも、特に会社売却をする際に押さえておきたい手法は、株式譲渡、事業譲渡、会社分割後の株式譲渡の3つです。

多くの非上場企業では、複数事業を持っていたり、生命保険等の節税(利益の繰り延べ)商品を活用していたりするケースが多く見受けられます。そのような会社では、株式譲渡や事業譲渡のほか、会社分割も含めた手法の検討が有効です。それぞれの想定される主なケース、メリット・デメリット、会計税務(キャッシュフロー)について、簡単にまとめましたので、ご参考にしていただければと思います。

■株式譲渡

想定される主なケース売り手側が単一の事業である
メリットスピーディー/手続きが容易
(株式譲渡契約)
デメリット○株主が分散していると説明や説得に時間労力がとられる
○資産負債や人材などの取捨選択がしにくい
会計税務
(キャッシュフロー)
株主に所得税がかかる
(個人にお金が入る)

■事業譲渡

想定される主なケース○売り手側が複数の事業を持っており、そのうちの一部を譲渡する
○売り手側が個人事業主である
メリット複数事業の一部譲渡が可能
デメリット時間がかかる/手続きがやや煩雑
*従業員と買い手の個別労働契約
*各種口座、各種契約の巻き直し
会計税務
(キャッシュフロー)
売り手側法人に法人税がかかる
(法人にお金が入る)

■会社分割後に株式譲渡

想定される主なケース○売り手側が複数の事業を持っており、そのうちの一部を譲渡する
○売り手側に不動産・保険積立金など余剰資産が多額にある
メリット○複数事業の一部譲渡が可能
○余剰資産の切り離しが可能
デメリット時間がかかる/手続きがやや煩雑
*会社分割の法定手続きが必要
会計税務
(キャッシュフロー)
所得税・法人税
(会社分割の選択スキームによる)

>>M&Aスキーム・手法について、以下の記事で詳しく解説しています。

会社売却の手続き・流れ

会社を売る手続きは、大きく「準備フェーズ」、「交渉フェーズ」、「契約・クロージングフェーズ」、「経営統合フェーズ」の4つの段階に分かれます。この章では、各フェーズで必要となる手続きを流れに沿って解説します。

準備フェーズ

目標設定および戦略策定

「会社を売りたい」と思い至っても、目標や戦略が明確でない場合、満足いく条件で最適な買い手企業とのM&Aを行えないおそれがあります。また、会社を売った後に期待していたメリットを得られない可能性も高まると考えられます。

したがって、まずは「なぜ会社を売りたいのか(目標設定)」と「目標を達成するためには、どのような戦略で買い手探しや交渉を進めるべきか(戦略策定)」を考えることが重要です。

M&A専門家の選定

目標と戦略を明確化したら、次にM&A専門家の選定を実施します。M&Aのプロセスは売り手企業が独力で行うことも可能です。ただし、買い手探しに必要な豊富なネットワークや、バリュエーションやデューデリジェンスなどに必要な会計等の専門知識が求められるため、独力で円滑に手続きをこなすことは困難です。

したがって、豊富なネットワークや公認会計士などの専門知識を有するM&Aの専門家に、実務のサポートを依頼することが最善策となります。

M&Aの専門家(業者)は、大きく「FA(ファイナンシャル・アドバイザリー)、「仲介会社」、「マッチングサービス」の3種類に分けられます。各専門家の具体的な違いは以下のとおりです。違いを踏まえて、自社にとって最適な専門家を選定することが重要です。

 FA仲介会社マッチングサービス
契約関係売り手企業または買い手企業のどちらかと契約売り手企業と買い手企業の双方と契約売り手企業、買い手企業もしくはFAや仲介会社が登録
最適なケース大手企業による大規模な会社売却や合併等個人事業主や中小企業による会社売却個人事業主や中小企業による会社売却、WebサイトのM&A等
メリット自社にとって有利な条件でのM&Aを実現しやすい中立的な立場でM&Aをサポートするため、両社にとって満足できる条件に落ち着く可能性が高い低コストかつスピーディーにM&Aを行える傾向がある

会社を売る買い手企業探し(マッチング)

M&A専門家のサポートを得た上で、会社を売る買い手企業を探します。一般的には、以下の流れでマッチングを実施します(順番が前後することもあります。)

1.ロングリスト(数十社程度の候補企業が記載された資料)の作成

2.ショートリスト(さらに数社程度まで候補企業を絞り込んだ資料)の作成

3.ショートリストをもとにした買い手候補の選定

4.ノンネームシート(身元が特定されない範囲で売り手企業の情報が記載されている資料)の作成

5.買い手企業に対するノンネームシートの開示、買い手企業による検討

6.買い手企業との秘密保持契約書の締結

7.企業概要書(具体的に売り手企業の情報が記載された資料)の開示、買い手企業による検討

企業概要書の検討により、買い手企業が売り手企業の買収を前向きに考えたいとの結論に至った場合、これ以降は本格的な交渉に移ります。

会社売却における必要書類の把握

会社売却で必要となる書類をあらかじめ把握し、準備を進めておくと、会社売却のプロセスをより円滑に進めることができます。

売り手が準備する書類(アドバイザー及び買い手に対して提出する書類)は以下の通りです。

項目必要書類(例)
会社○商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
○定款
○株主名簿
○定時株主総会議事録(直近3年分)
組織・人事労務○組織体制図
○役職員名簿(役職・業務内容・年齢・社歴・保有資格など)
○就業規則・各種規定
○雇用契約書サンプル
○賃金台帳(直近3年分)
財務会計○過去3期分の決算書一式(勘定科目明細、申告書別表含む)
○直近月の月次試算表
○金銭消費貸借契約書、返済予定表
○リース契約一覧・契約書
○保険契約一覧・保険証書・直近の解約返戻金が分かる資料
事業○取引先・商品別売上推移表(過去3期分)
○主要取引先との契約書
○賃貸借契約書
○許認可・特許などの証書
不動産○全部事項証明書(土地・建物)
○固定資産税納税通知書
○施設写真
○各種図面
その他 その他資料

また、株式譲渡の手法によって、一般的な中小企業(株式に譲渡制限が設けられている会社)を売却する例を想定すると、プロセスに応じて次のような書類を準備していくことになります。

プロセス手続き書類・作成書類(例) 
準備フェーズ○秘密保持契約書
○アドバイザリー契約書
○企業概要書
○候補先リスト
(ロングリスト・ショートリスト)
交渉フェーズ○基本合意書
○取締役議事録(または株主総会議事録)
契約・クロージングフェーズ○株式譲渡契約書
○株式譲渡承認請求書
○株主名義書換請求書
○株主名簿
○取締役議事録(または株主総会議事録)

交渉フェーズ

トップ面談および条件交渉

必須ではありませんが、条件交渉に先立ってトップ面談を行うことがあります。

トップ面談とは、売り手企業と買い手企業の経営者が実際に会って、M&A後のビジョンや経営の価値観などを話し合うプロセスです。トップ面談を行うことで、お互いの価値観を認識し、信頼関係の構築を期待できます。

トップ面談が完了したら、M&Aのスキーム検討やバリュエーション、買い手企業による意向表明書の提出などを経て、条件面の交渉を実施します。売却金額や従業員の処遇などの基本的な条件についてすり合わせを行います。

基本合意書の締結

条件のすり合わせをある程度行えたら、基本合意書を締結します。基本合意書は、交渉時点である程度合意できた内容をまとめることで、双方の間で認識にズレが生じる事態を防ぐ目的で締結します。また、今後のスケジュールを明確にする効果もあります。

基本合意書の各項目には、基本的には法的拘束力を持たせません。ただし、一部の項目(独占交渉権)に関しては法的拘束力を持たせることが一般的です。

デューデリジェンスの実施

基本合意書の記載に沿って、売り手企業に対するデューデリジェンスが実施されます。

デューデリジェンスとは、売り手企業が有する問題点や経営統合に必要な準備などを詳細に調査するプロセスです。具体的な調査内容には、財務や法務、税務、ビジネスなどがあり、各分野の専門家が調査を担うことが一般的です。

デューデリジェンスの結果を踏まえて、買い手企業は買収希望金額の修正や条件の変更、買収後の統合計画策定などを行います。

契約・クロージングフェーズ

最終条件交渉・最終契約書の締結

デューデリジェンスの結果を踏まえて、買い手企業との間で最終的な条件の交渉を行います。双方の間で合意できたら、最終契約書(株式譲渡契約書など)の締結を行います。

最終契約書には、主に下記の内容を記載します。下記はあくまで一例であり、実際の記載項目はケースバイケースです。

記載内容詳細
基本的な契約項目(取引対象物)取引対象の株式数や価格、対価の支払い方法など
表明保証売り手企業の財務や事業等に関する内容が真実・正確であることを保証する項目
前提条件契約締結からクロージングまでの期間において、一定条件を満たさない場合に買収しないことを定める項目
例)表明保証が正確である
誓約事項一定の事項を実施する・しないことを定める項目
補償条項表明保証違反などがあった場合に、損害を補償することを定める項目
解除条件表明補償違反などがあった場合に、契約を解除できる旨を定める項目

クロージングの実施

クロージングとは、株式の譲渡や対価の支払いなど、M&Aの取引自体を実行することです。

クロージングの手続きには、一般的に1ヶ月〜半年以上の期間がかかります。ただし、小規模な株式譲渡だと、契約当日中〜数日中にクロージングが完了する場合もあります。一方で、独占禁止法に関連する手続きや債権者保護手続きなどが必要となるM&Aでは、より長い期間を要する可能性があります。

経営統合フェーズ

クロージングの完了によって会社を売る手続きは完了となりますが、M&Aによるシナジー効果を創出するにはPMI(M&A後の統合プロセス)が必要となります。

PMIのプロセスは、一般的に以下の流れで進めます。

○短期プランの策定と実行:3〜6ヶ月以内に行う統合作業のプランを策定し、それを実行する

○中長期プランの実行:中長期的に対応すべき課題を洗い出し、それを実行する

>>PMI(M&A後の統合プロセス)については、以下の記事で詳しく解説しています。

M&A売却・事業承継案件一覧|CREASマッチング

コーポレート・アドバイザーズM&Aが運営する「CREASマッチング」では、譲渡・売却を希望する案件一覧を掲載しています。

機密性の高いM&Aに関する情報を匿名化した情報として掲載しております。より詳細な内容や、Webサイトには掲載していない非公開のM&A案件についての情報をご希望の場合には、ぜひお問い合わせください。

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会社を売りたいと経営者が考える理由とは

経営者の方が会社を売りたいと考える理由としては、以下に挙げた7つの理由があります。

事業承継をしたい

事業承継を行いたくても、親族や会社内に後継者がいない場合には実現が困難です。そのため、事業を廃業することを避けるために、外部の会社・経営者に対して会社を売りたいと考えるケースが多く見受けられます。

従業員の雇用や取引先との契約を維持したい

債務超過や後継者不足が原因で会社を廃業すると、従業員は職を失い、取引先は業績が悪化するおそれがあります。

そのため、従業員や取引先に迷惑をかけたくないという考えから、事業を存続させる目的で会社を売りたいと考える経営者の方は少なくありません。

経営の先行き不安を解消したい

競争の激化や市場の縮小、コロナ禍などに代表される災害・伝染病等を原因とする事業の停滞などにより、今後の経営を存続させることに不安を抱える経営者の方は少なくありません。

そこで、大手企業への傘下入りや経営からのリタイアを目的に、一部経営者の方は会社を売りたいと考えます。

事業のさらなる成長を実現したい

現時点の業績を維持することは難しくない場合でも、より事業を大きく成長させることは非常に困難である可能性は十分に考えられます。たとえば中小規模の会社だと、自力で行う販路や生産規模の拡大には限界があります。

そこで、事業のさらなる成長を実現する目的で、「自社よりも事業規模や知名度などの面で優っている大手企業」や「シナジー効果の創出が期待できる外部企業」に会社を売りたいと考える経営者の方が見受けられます。

まとまった金額の現金を確保したい

経営者の方にとって、老後の生活や新規事業などに必要な現金の確保は重要な課題であると考えられます。そこで、まとまった金額の現金を確保する目的で会社を売りたいと考える経営者の方もいらっしゃいます。

事業の選択と集中を実現したい

複数の事業を展開している多角化企業にとって、事業の選択と集中は重要な課題になり得ます。たとえば不採算事業から撤退し、経営資源を主力事業に集中させることで、業績の改善や収益性の向上を期待できます。

そこで一部の経営者の方は、選択と集中を実現する手段の1つとして、会社を売りたいと考えます、

連帯保証や日々の業務から解放されたい

前述のとおり、連帯保証(個人保証)や日々の業務は、経営者にとって重い負担やプレッシャーとなり得るものです。会社を売りたいと考える理由として、こうした負担やプレッシャーを取り除くことも見受けられます。

会社を売りたい経営者が知っておくべきポイント

会社を売りたい経営者の方にとって、以下の3点は注意していただきたいポイントとなります。下記のポイントを押さえておくことで、会社売却における失敗やトラブルを回避できる可能性が高まります。

早い時期から会社を売る準備を始める

M&Aでは、買い手候補探しや交渉、契約書の締結など、多くの手続きをこなす必要があります。そのため、「会社を売りたい」と考えてから実際に会社売却のクロージングが完了するまでには多大な時間を要することが一般的です。

加えて、高い金額で会社を売りたいと考えた場合には、企業価値の向上などを行う必要があるため、さらに多くの時間を要します。時間に余裕を持っていないと、会社を売る前に経営者の体調が悪化したり業績が悪化したりすることで、事業の続行が困難となるおそれがあります。

そのため、早い時期から余裕を持って会社を売る準備を始めることが重要です。

買い手候補との交渉が長引く事態を想定し、資金の流出を防ぐ

たとえば節税目的で資産を購入したり、保険に加入したりすると、利益や社内にある余剰資金を減らすことにつながります。買い手企業は経営状況に余裕がある企業や、税金を支払った後に十分な利益が残る企業を高く評価する傾向があります。

そのため、節税目的などで利益や余剰資金を減らしてしまうと、M&Aの交渉が白紙となったり、買収金額を減額されたりするリスクがあります。また、資金繰りが悪化して、会社売却の交渉中に事業の続行が困難となる事態も想定されます。

買い手企業との交渉がスムーズに進むとは限りません。条件で折り合わないなどの状況が続くと、交渉は長引く可能性があります。そのため、交渉が長引く事態を想定し、現金を使いすぎることは避けることが重要です。

情報の漏えいや伝えるタイミングに注意する

会社を売りたい場合、情報の漏えいに注意が必要です。M&Aでは、買い手企業やM&Aの専門家に対して、自社の機密情報も伝える場合があります。機密情報が何らかの理由で外部に漏れてしまうと、競合他社にシェアを奪われたり、株価の下落や顧客からの信用低下などを引き起こしたりするおそれがあります。

こうした事態を防ぐためには、買い手企業やM&Aの専門家との間で秘密保持契約の締結を徹底したり、外部からアクセスしにくい場所で会議や資料の保管等を行ったりすることが効果的です。

また、従業員や顧客などの関係者に対して、会社を売る旨を伝えるタイミングにも注意が求められます。M&Aの成立や詳細な条件が決定していないタイミングで知られてしまうと、従業員や顧客に不安を与えたり、反感を買ったりするおそれがあります。その結果、従業員の離職や顧客との契約打ち切りなどの事態に陥ることが考えられます。

したがって、基本的にはM&Aの実施が決定したタイミングで従業員や顧客等に伝えることが最善策となります。また、条件や待遇・契約条件が悪化しない旨などを伝えて、不安を解消することも重要です。

【目的別】会社売却の事例から学ぶ

会社を売りたい方にとって、会社売却の成功事例は非常に参考となります。ここでは、会社売却の目的別に事例を紹介します。

・成長戦略型:大手グループ傘下入りによるシナジー効果を見込み、成長を目指す

・事業承継型:後継者不在たが、企業の存続と発展のため第三者に譲渡する

・業界再編型:法改正・市場縮小・競争激化などによる先行き不安

・選択と集中:ノンコア事業切り離しにより、資金を獲得し、コア事業に資金投下する

会社売却の事例:成長戦略型

ディー・エヌ・エーとアルムのM&A【IT×ICT】

売り手企業の事業内容

アルム:医療・ヘルスケア関連のモバイルICT事業など

買い手企業の事業内容

ディー・エヌ・エー:エンターテインメント領域および社会課題領域を中心としたIT事業を展開

M&Aの実施目的

売り手企業:買い手企業が有する事業企画力などを活かした成長の加速

買い手企業:社会課題領域における収益基盤の強化

M&Aの成約に関する詳細
 詳細
スキーム第三者割当増資[3]、株式交付
実施時期2022年10月[4]
結果第三者割当増資や株式交付などの手続きを経て、 買い手企業が52.3%の議決権を保有
売却金額252億5,200万円[5]

双日とマリンフーズのM&A【商社×水産加工】

売り手企業の事業内容

マリンフーズ:水産加工食品の製造販売、水産原料の輸入販売

買い手企業の事業内容

双日:総合商社

M&Aの実施目的

売り手企業:買い手企業が有する営業基盤やネットワークの活用による海外展開の強化、ECなどの販売チャネル開拓、親会社による選択と集中[6]

買い手企業:海外展開の強化、加工卸売事業の拡充、商品開発の強化など[7]

M&Aの成約に関する詳細
 詳細[6]
スキーム株式譲渡
実施時期2022年3月
結果マリンフーズ株主が双日に全株式を売却
売却金額約265億円

リコーとPFUのM&A【製造×製造】

売り手企業の事業内容

PFU:ドキュメントスキャナーなどのハードウェアやドキュメントの電子化を支えるソフトウェアの製造および販売等

買い手企業の事業内容

リコー:OA機器等の製造および販売

M&Aの実施目的

売り手企業:長年培ってきた技術やノウハウを最大限に活かした事業展開の実現[8]

買い手企業:ITマネジメントサービス機能の強化、産業用コンピュータ事業におけるシナジーの創出など[9]

M&Aの成約に関する詳細
 詳細[8]
スキーム株式譲渡
実施時期2022年9月[10]
結果PFU株主がリコーに80%の株式を売却
売却金額840億円

エルテスとアサヒ安全業務社のM&A【ITサービス×警備】

写真左:株式会社エルテス 代表取締役 菅原貴弘 氏
写真右:株式会社アサヒ安全業務社 代表取締役 鈴木一法 氏

※会社名・役職は成約当時のものです

売り手企業の事業内容
所在地関東
事業内容警備業(1号、2号、4号)
譲渡理由成長戦略の一環

創業から50年近い業歴を持ち、首都圏において警備会社としての地位を確立してきました。強固な取引基盤をもち、コロナ禍においても安定した業績を維持してきました。事業拡大意欲は旺盛で、成約前は買い手側としても、積極的にM&Aをおこなっていました。

買い手企業の事業内容
所在地関東
事業内容デジタルリスクコンサルティング
買収理由リアルとデジタルの融合の実現

成長戦略の一環として、積極的にM&Aに取り組んでいる企業。デジタルリスクのコンサルティングを主業としており、警備業界におけるリアルとデジタルの融合を実現させるため、M&Aの仲介会社にファインディングの依頼を行っていました。

M&Aの実施目的と成約に関する詳細

本件は、「1973年設立の伝統的な警備会社」と「リスク検知のデジタルテクノロジー会社」という業界の異なる両社間による戦略的なM&A。売り手企業であるアサヒ安全業務社は、買い手企業のエルテスの依頼に基づく具体的なM&A提案と、買収企業による熱烈なオファーを受けて、当初は譲渡意向はなかったものの、最終的には株式譲渡をご決断しています。

下記インタビューでは、いかにしてその決断にいたったのか。幹部メンバーの反応はどうだったのか。M&Aを通じて何を実現させたいのか。アサヒ安全業務社の鈴木社長とエルテスの菅原社長にご登場いただき、お話を伺っています。

>>M&Aを活用した“警備事業におけるDX領域への本格進出”~「伝統的な警備会社」と「デジタルテクノロジー会社」の融合~を読む

食堂の管理運営受託会社のM&A

写真右:株式会社松美屋 代表取締役社長 松本 保 氏
売り手企業の事業内容
所在地関東
事業内容食堂の管理運営受託事業
譲渡理由事業発展のため

売り手企業は、大手企業の工場内食堂および大学寮食堂の管理運営を受託しています。大手企業の工場新設・拡大に伴い受託管理先を増やして成長を続けてきましたが、工場の海外移転と集約の流れの中で受託管理先が減少、かつ、価格競争の流れの中で採算の良い受託管理先の新規顧客の開拓に苦戦していました。

買い手企業の事業内容
所在地関東
事業内容食堂の管理運営受託事業
買収理由事業拡大のため

買い手企業は、人材派遣事業を本業とする傍ら、参入障壁の高い施設内での食堂・売店の管理運営事業に進出し、食堂の管理運営事業の拡大を考えていました。

M&Aの実施目的と成約に関する詳細

本件の売り手企業である株式会社松美屋は、更なる事業発展を目指し、レストラン事業の運営委託、環境工事事業や人材事業を行う企業に株式譲渡を含む資本業務提携を実施しています。M&A実施後も、代表取締役に就任している同氏は、両社の相乗効果を活かした事業の拡大と成長に邁進しています。

下記のインタビューでは、売り手企業となる松美屋の松本保代表取締役に、M&Aを検討したきっかけや、相手先を決めた理由、相手先へ求めること、M&A後の状況について、お話を伺っています。

>>【相乗効果を活かし事業の拡大と成長を目指す成長戦略型M&A】を読む

会社売却の事例:事業承継型

セコムとセノンのM&A【警備×警備】

売り手企業の事業内容

セノン:常駐警備、機械警備[11]

買い手企業の事業内容

セコム:セキュリティ事業、防災事業、メディカル事業など[12]

M&Aの実施目的

買い手企業:サービスの品質向上、総合セキュリティ企業としての業容拡大

M&Aの成約に関する詳細
 詳細[11]
スキーム株式譲渡
実施時期2022年7月
結果セノン株主がセコムに55.1%の株式を売却
売却金額269億9,900万円

あなぶきクリーンサービスとアリオスのM&A【不動産総合×ビルメンテナンス】

写真左:株式会社アリオス 創業者 林 茂德 様/写真右:代表取締役会長 松井 久弥 様
売り手企業の事業内容
所在地首都圏
事業内容ビル・マンション管理、清掃、工事業
譲渡理由後継者不在

売り手企業は、ビルメンテナンス業の黎明期からの老舗企業で、首都圏エリアにおいて地域密着で事業拡大をしてきました。事業領域としては、ビル管理、マンション管理、清掃、工事などを行っています。

買い手企業の事業内容
所在地西日本エリア
事業内容不動産総合サービス事業
買収理由首都圏エリアの拡充・内製化

買い手企業は、西日本エリアを中心に事業展開をしている不動産総合サービス企業です。これまで、首都圏においては、売り手企業が行っている事業領域(ビル・マンション管理、清掃)について、グループ外の協力会社に業務を発注していました。そのため、首都圏エリアにおいて、ビル・マンション管理、清掃業務を行う会社をM&Aにより獲得することを目的としていました。

M&Aの実施目的と成約に関する詳細

本件の売り手企業である株式会社アリオスは、1969年の創業以来、半世紀以上にわたって、首都圏にて清掃・設備点検・工事等の実績を重ねてきました。社内に後継人材はいたものの、営業面での先行き不安を補完し、従業員に対する長期的な雇用の安定化、教育体制の強化を実現するために、M&Aを事業承継の手段として選択しました。下記インタビューでは、売り手企業の株式会社アリオス創業者の林 茂德様に、事業承継やM&Aの決断の背景などについてお話を伺っています。

>>【会社の成長・発展をかなえる理想の相手との事業承継・M&A】を読む

建設会社と受託ソフトウェア開発会社のM&A【建設×ソフトウェア開発】

売り手企業の事業内容
所在地関東
事業内容ソフトウェア受託開発・保守業
譲渡理由後継者不在

売り手企業は、ソフトウェア受託開発・運用保守を得意とする企業で1986年5月に設立。主に、自治体向け防災システム、消防向けシステムを長年にわたり開発してきました。

買い手企業の事業内容
所在地関東
事業内容建設業
買収理由DXの内製化

買い手企業は、国内外に10数社の関連会社をもつ専門工事会社グループ。DX(デジタルトランスフォーメーション)化が遅れているといわれている建設業界のなかで、グループをあげてDX化を推進するため、当該プロジェクトの中核会社となりうる、ソフトウェア受託開発会社を探していた。

M&Aの実施目的と成約に関する詳細

売り手企業であるテクニカルブレイン株式会社は、社内で後継人材の育成に力を注いでいたため、実務面を任せられる人材は育ってきていましたが、将来の業務受注に関する先行き不安や、株式の承継の問題を抱え、事業承継の選択肢としてM&Aを検討していました。

M&Aのマーケットでは、ソフトウェア受託開発・運用保守業は売り手市場といわれております。

手を挙げる会社は多数ありましたが、相手先の選定にあたっては、価格等の条件面のほか、①将来にわたって開発案件の供給が期待できること(営業面の強化)、②安定した経営基盤を持ち、自社と社風があうこと(従業員が安心して働ける環境)、③開発中の自社サービスやそれに携わる人材を生かしてくれること、といった点を重視し、最終的にIT基盤の強化を目指す「土木・建設工事会社」への株式譲渡を決断しています。

下記インタビューでは、テクニカルブレインの創業者の根本憲夫様に、M&A決断の背景や異業種企業とのM&Aの留意点、事業承継・M&Aの成功のポイントなどについてお話を伺いました。

>>【社員の未来のために決断した異業種企業とのM&A】を読む

音響機器の輸入商社と高級音響機器の輸入商社のM&A【輸入商社×輸入商社】

写真中央:株式会社ノア/株式会社アーク 元代表取締役 野田 頴克 様
売り手企業の事業内容
所在地関東
事業内容高級音響機器の輸入卸
譲渡理由事業承継(後継者不在)

売り手企業は、日本のハイエンドオーディオ業界を長年牽引してきた輸入商社。海外メーカー及び国内ユーザーからの信頼が厚く、当該マーケットでは確固たる地位を築き上げてきました。一方、創業者であるオーナー社長は事業承継の適齢期を迎えており、後継者不足という経営課題を抱えていました。

買い手企業の事業内容
所在地関東
事業内容音響機器の輸入販売
買収理由特定領域の強化

買い手企業は、様々な価格帯の商品を取り扱っている老舗のオーディオ機器の輸入商社。しかし、ハイエンド領域については、それを専門に取り扱っている企業の牙城を崩すことが難しく参入障壁が高いと考えていました。

M&Aの実施目的と成約に関する詳細

本件売り手企業である株式会社ノア/株式会社アーク 元代表取締役の野田 頴克氏は、今後においても事業と雇用の継続性を担保するために、ハイエンドオーディオ業界に精通し、資本力の高い企業への事業承継(M&A)を検討していました。その折、要望に合致する企業からM&Aのオファーがあり、全株式を譲渡することとなりました。

下記インタビューでは、どのようにして事業承継を進めていたのか。承継後の状況はどうか。M&Aを通じて何を実現させたいのか。売り手企業の株式会社ノア/株式会社アーク元代表取締役の野田 頴克氏にご登場いただき、お話を伺っています。

>>【オーナー経営者の体験談から学ぶ『次世代に引き継ぐためのM&A』】を読む

会社売却事例:業界再編型

大手調剤薬局による老舗調剤薬局の譲受け【調剤薬局×調剤薬局】

写真左:有限会社たけなが薬局  前 代表取締役 武長正洋 様
売り手企業の事業内容
所在地関東
事業内容調剤薬局の複数店舗運営
譲渡理由経営基盤の強化

売り手企業は、半世紀の歴史を有する老舗の調剤薬局の運営会社。オーナーは、創業者である父親から経営のバトンを受け取った二代目社長。常に俯瞰した目線を持ち、業界が直面している社会的な制度に対する先行き不安を補完し、従業員に対する長期的な雇用の安定を図る為には、大手資本への参画が、将来的には望ましいとの考えを持っていました。

買い手企業の事業内容
所在地関東
事業内容調剤薬局等の運営
買収理由事業の拡大

買い手企業は、調剤薬局の多店舗展開を積極的におこなっている、調剤薬局の大手運営会社。新規出店によるカニバリゼーションの発生よりも、各地域に確固たる基盤を築いている既存の調剤薬局に参画して頂くことによる、友好的な規模の拡大を積極的に行っています。

M&Aの実施目的と成約に関する詳細

本件売り手企業である有限会社たけなが薬局の前代表取締役である武長正洋氏は、経営者としての立場をアーリーリタイアすることとなるものの、先を見た経営判断としてM&Aを実施しました。具体的には、昨今の新型コロナウイルスの発生による処方箋枚数の減少や、医療機関の一時閉鎖などの想定外の影響から、調剤薬局制度の先行き不安への補完と雇用安定を優先し、このたびの英断に至りました。

下記インタビューでは、現在親会社である買い手企業の役員に就任し、薬剤師としての新規事業の開発に従事されている武長前代表に、M&A決断から現在に至るまでのお話をお伺いしています。

>>【父親から引き継いだ調剤薬局2代目社長の決断】を読む

ハードウェアの設計・製造会社とソフトウェア開発のM&A【設計製造×ソフト開発】

売り手企業の事業内容
所在地関東
事業内容ソフトウエア開発業(請負・派遣)
譲渡理由経営基盤の強化による事業の継続・発展

売り手企業は創業から20年以上に渡り、大手企業を顧客に持ち、アプリケーション、組込系のソフトウェア開発を行ってきました。しかし、近年は事業の柱である請負事業の受注の波が激しく、経営が安定しないことなどにより、負債が重くのしかかっていました。さらに、もう一方の事業の柱である派遣事業に関しても、派遣法改正に伴う対応に苦慮しており、派遣事業の継続に問題を抱えていました。

買い手企業の事業内容
所在地関東
事業内容ハードウェアの設計・製造
買収理由技術者と顧客の獲得による周辺事業の拡大

買い手企業は、電子応用製品・産業用製造装置・自動省力化機械開発、設計製造などの事業を行ってきた会社です。ハードウェアの設計・製造に強みを持つ中で、顧客企業からの要望もあり、開発・設計、製造・現地調整までをトータルで受託する体制作りを志向していました。

M&Aの実施目的と成約に関する詳細

売り手企業は、事業の継続と従業員の雇用の安定を考え、自社の事業と補完関係があり、グループ入りを行うことで相乗効果が見込める買い手企業に全株式の譲渡を行うことを決断しています。以下の本件事例紹介ページでは、本件M&Aによってもたらされる相乗効果についての、売り手企業・買い手企業の取り組みや、担当アドバイザーの考える成約した要因についても、解説しています。

>>【ソフトウエア開発業(請負・派遣)の株式譲渡【事業承継】】を読む

会社売却事例:選択と集中

ミライト・ホールディングスと西武建設のM&A【建設×建設】

売り手企業の事業内容

西武建設:土木、建築等の総合建設事業

買い手企業の事業内容

ミライト・ホールディングス:通信、電気、土木、建築工事事業

M&Aの実施目的

買い手企業:コンサルティングから設計・施工・運用までをトータルに提供する事業の積極的な展開

M&Aの成約に関する詳細
 詳細[13]
スキーム株式譲渡
実施時期2022年3月
結果西武建設株主がミライト・ホールディングスに95%の株式を売却
売却金額約620億円

ITコンサルティング会社とWebプラットフォームの運営事業のM&A

売り手企業の事業内容
所在地関東
事業内容Webプラットフォームの運営
譲渡理由選択と集中

売り手企業は、Webプラットフォームの運営事業をはじめ、複数事業を行っている企業です。今回、社内リソースの問題から、Webプラットフォーム事業の譲渡を決断しています。

買い手企業の事業内容
所在地関東
事業内容ITコンサルティング
買収理由新規領域への参入

買い手企業は、成長戦略の一環として、積極的にM&Aに取り組んでいる企業です。ITコンサルティングを主業としており、自社のITコンサルティングのノウハウを活かせる新規領域への参入を検討していました。

M&Aの実施目的と成約に関する詳細

詳細については、下記本件事例紹介ページにて案内をしております。

>>【Webプラットフォームの運営事業の譲渡【事業譲渡】】を読む

また、その他M&A当事者の体験インタビューや、成約事例の紹介を下記にて行っております。


参考URL:

[3] アルムの第三者割当増資の引受による株式の取得、及び同社子会社化(ディー・エヌ・エー)

[4] 簡易株式交付によるアルムの子会社化の結果(ディー・エヌ・エー)

[5] アルムの子会社化に関する経過開示及び株式交付(ディー・エヌ・エー)

[6] マリンフーズの株式譲渡(日本ハム)

[7] マリンフーズの全株式を取得(双日)

[8] PFUに関する株式譲渡契約の締結(富士通)

[9] PFUの株式取得(リコー)

[10] PFUの株式取得完了(リコー)

[11] セノンの株式取得(セコム)

[12] セコムグループの事業(セコム)

[13] 西武建設株式会社の子会社化(ミライト・ホールディングス)

まとめ

会社を売りたいと考える背景には、後継者不在、単独での成長に限界を感じている等、様々な事情があります。相手探しや手続きに労力はかかりますが、売却益の獲得などをはじめとして、得られるメリットは大きいです。会社売却を検討する際には、今回お伝えした手続きや事例、相場などを参考していただけますと幸いです。

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伏江亜矢
監修者:伏江亜矢
株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長
金融機関で法人営業を担当後、2012年にコーポレート・アドバイザーズ入社。M&Aの事前準備から、候補先のソーシング、企業価値評価、条件交渉、クロージングまで一気通貫した支援を行っている。 ヘルスケア・ライフサイエンス(医療・介護・メーカー・卸商社)、IT・ソフトウエア(Webサービス、システム開発)、人材サービス(派遣、警備、ビルメンテナンス)などのM&A支援経験が豊富。 M&A成功のために必要な情報をわかりやすく解説するコラムサイト「よくわかるM&A」の運営責任者。
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会社概要

日本クレアス税理士法人|コーポレート・アドバイザーズ グループでは、20年間にわたり2000件以上の会社売却・M&A支援を行っています。

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■グループ企業一覧
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M&A(仲介・コンサルティング)
FAS(株価算定/財務調査/企業再編)
人事労務 / 給与計算
相続・事業承継
企業法務・法律顧問
IFRS(国際財務報告基準)・決算開示(ディスクローズ)支援
内部統制(J-SOX)・内部監査
海外現地法人サポート
非上場株式売却コンサルティング(非上場株式サポートセンター

■社員数
417名(グループ全体 / 2023年10月現在)
税理士(試験合格者含む)56名
公認会計士(試験合格者含む)15名
特定社会保険労務士2名
社会保険労務士(試験合格者含む)12名
弁護士 2名
相続診断士41名
中小企業診断士1名
行政書士4名

■関与先
法人 3,240社(うち上場企業85社)
社会福祉法人 133件
クリニック・医療法人・介護福祉等 593件
個人 4,015名
合計 7,981件

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