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テクニカルブレイン株式会社は1986年5月に設立。主に、自治体向け防災システム、消防向けシステムを長年にわたり開発してきました。
この度、IT基盤の強化を目指す「土木・建設工事会社」に株式譲渡を行いました。
本インタビューでは、テクニカルブレインの創業者の根本憲夫様に、M&A決断の背景や異業種企業とのM&Aの留意点、事業承継・M&Aの成功のポイントなどについてお話を伺いました。
M&A(株式譲渡)の検討をはじめたきっかけを教えて下さい。
60歳を過ぎたあたりから事業承継について考え始めました。当初は、社内承継を考えていましたが、具体的に検討をすすめていくと、社内承継には、
・後継者候補は、開発や運用保守の実務、マネジメントでは有能であっても、経営者としての資質があるとは限らない。
・資本の承継(株式の承継)の資金的な問題がある。
・後継者候補は、経営者としての責任(銀行借入の個人保証など)までは担えない。
といった課題があることが分かりました。
65歳のとき、コーポレート・アドバイザーズM&Aから、具体的なM&Aの提案を受け、M&Aを事業承継の有効な選択肢として検討し始めることにしました。
6年前に弊社(コーポレート・アドバイザーズM&A)にM&A仲介業務のご依頼を頂いた後、数社とのご面談や条件提示などを受けて頂きましたが、その後、M&Aの検討を中止されました。その理由について教えて下さい。
コーポレート・アドバイザーズM&Aから具体的な候補先の提案を受け、さらには、候補先から条件提示をして頂きましたが、想定していたよりも厳しいものでした。また、M&Aを実施するにあたって解決しなければならない課題(不良債権の処理など)も明確になりました。さらに、受託開発の業務は年間通じて受注の波があります。閑散期の案件不足などの経営課題を解決し、数年かけて企業価値を高めてから、M&Aの実施をすることに決めました。
2021年に入り、弊社(コーポレート・アドバイザーズM&A)から根本様にご連絡をしまして、複数社をM&Aの候補先として提案させて頂きました。最終的に土木・建設工事会社(以下、譲受企業)をM&Aの相手先にお選びになられましたが、その決め手を教えて下さい。
①自社の技術が生かせる先であること
譲受企業には、「グループのIT基盤を強化したい」という明確な譲受ニーズがありました。また、当社の新事業領域である「3D技術(バーチャルリアリティーを活用した風の霊事業)」に関しても強い関心を示して頂きました。
コロナ禍を経てすごいスピードで世の中が変わる今、同業者でなく、異業種で自社技術を生かしてもらえる先であったことが決め手になりました。
②会社の歴史や社風
当社は、創業以来、大手ベンダーから安定した業務を受託しており、プロジェクトの一員として活躍する社員が中心であることから、ベンチャー企業など、個々のスキルを求められるような組織にはなじめないと考えました。そのあたりを考慮して、歴史があり、プロジェクト単位で業務を進める譲受企業であれば弊社社員が活きるのではと思っています。
相手先は異業種企業となりましたが、異業種企業とのM&Aにおける留意点などがありましたら教えて下さい。
同業者であれば、自社の業務内容を理解してもらいやすいですが、異業種だと相互の業務についてわからない部分が多々でてきます。このわからない部分を見える化をしていけば、相互の業務に対する理解も進み、同業者よりもはるかに大きな相乗効果を生み出せると考えています。
また、これまでは大手ベンターが顧客でしたが、今後はエンドユーザーである譲受企業から直接業務を受けることがなるため、お客様の生の声が聞くことができるようになります。これは現場の社員のやる気向上にも繋がると思います。
社員への開示はどのタイミングでおこないましたか?
幹部社員には、M&A検討初期に話をし、進捗含めて情報共有をしていました。その他の社員については、株式譲渡契約締結後から実行までの間に、定例会議のなかで話をしました。
具体的な相手については、その会議まで秘密にしていましたが、事業承継の選択肢としてM&Aを検討していることは皆知っていたため、それほど驚くこともなく、また異業種で仕事が増える話であったため、前向きに受け入れてもらえたと思います。
取引先の反応はいかがでしたか?
取引先にとっても異業種であり、競合関係にはないことから、問題なく受け入れて頂きました。この点からも異業種の企業を選んで良かったと思います。
M&Aの成立から約1か月がたちますが、現在の状況を教えて下さい。
現在は、当社の顧問として、業務引継ぎ対応や、新規事業として仕掛中であった「風の霊事業」のPR活動を継続しておこなっています。
根本様が考える、事業承継・M&Aの成功ポイントを教えて下さい。
まずは、社員を一番に考えることが大事です。M&Aで社員の待遇、仕事、将来がどうなるのか?
同業者とのM&Aでは、大が小に呑み込まれることになり、弊社社員は相手先の新たな歯車になるだけですが、今回の相手は異業種、かつIT化やDXが緊結の建設業界でした。弊社社員も新しい技術、分野に挑戦できる土壌があり、明るい未来が描けます。逆に、未来が描けないと、待遇の劣化や社員の退職に繋がり、双方にとって何のメリットも無くなります。そうなると、社員はM&Aの犠牲になってしまいます。その様ことが起きないように考えることが一番大事です。
また、コロナ禍で急速に世の中が変わっていく今、仕事のあり方も変えてかなければならないですが、個人の力だけで変わるのは難しい。今回のM&Aにより、環境や組織が変わることで、社員の仕事のあり方も自ずと変わってくると思います。
この2年間で20代の若いメンバーが増えました。この若い力がM&A後の組織のなかで新しい風となり、良いものを創り出していくことを期待しています。
【本件担当アドバイザーのコメント】
根本様と弊社とは6年前から接点を持たせて頂いております。
一度、M&Aの検討を中止した後、数年かけて本業の経営課題の解決(閑散期の案件不足の解消)、不良債権の処理、新規事業の立ち上げ等により、企業価値を高めたうえで、納得のいく相手先とご成約頂くことができました。根本様は、M&Aと同時に代表取締役社長を退任されて顧問となりましたが、ご両社の社員の皆様にとってはM&Aはスタート地点です。皆様が新しい環境・組織で活躍をされ、グループのIT基盤の強化が実現されることを心より祈念しております。
本件担当アドバイザー:企業提携第二部 部長 木下 正康、企業提携第三部 部長 伏江 亜矢
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