先を見た経営判断として、M&Aによる大手調剤薬局グループへの参画を実施。
現在は、親会社である買手企業の役員に就任し、薬剤師としての新規事業の開発に従事されている武長様に、M&A決断から現在に至るまでのお話をお伺いしました。
写真左:有限会社たけなが薬局 前 代表取締役 武長正洋 様
写真右:株式会社コーポレート・アドバイザーズ・M&A 木下 正康
武長正洋 様 プロフィール
薬科大学を卒業後、地元の総合病院内にて病院薬剤師として勤務し、医師の処方に対する適切な判断と、患者に対する丁寧な服薬指導をおこないながら、自身の薬学の知見を深めつつ、地域住民への貢献をおこなう。
その後、父親が経営する調剤薬局を、親から子への事業承継として引き継ぐ形で独立。二代目社長に就任した以降は、従前に勤務していた総合病院の勤務医が独立する際の誘いに応じる形で、多店舗展開をおこなう。
医療機関との連携が強い地域密着型のため、安定した運営状態ではあったものの、先を見た経営判断として、M&Aによる大手調剤薬局グループへの参画を実施。オーナー社長としては、アーリーリタイアとなる。
現在は、親会社である買手企業の役員に就任し、薬剤師としての新規事業の開発に従事。
親から引き継いだ会社を売却するという発想はなかった
踏み出したきっかけは、一通の手紙
Q.
M&Aを検討された「きっかけ」を教えてください。
A.
もともとは、引退するには早い年齢であり、長年にわたり苦楽を共にした従業員が多く居ることから、「親から引き継いだ会社を売却する。」という発想がなかった。しかしながら、知り合いの社長仲間の中から、後継者が居ないことを理由として自分の会社を売却する人が出てきたり、同業の社長においては、業法改正のたびに調剤薬局の経営が厳しくなるなどの先行き不安を理由としてM&Aをおこなう人が出てきたり、徐々に周囲からの情報が入るようになっていた。
そのような中、先々のことを考えた際には、「選択肢の一つとして、M&Aもあるのかなぁ。」と考えるようになっていました。また、具体的に検討することになった「きっかけ」は、コーポレート・アドバイザーズM&A(以下、「CAMA」。)からの手紙を読んだことです。それまでにも、多くのM&Aの会社から、沢山のダイレクトメールが届いていましたが、セミナーの勧誘であったり、「困っていませんか?」という内容であったりしましたので、きっかけにはなりませんでした。
CAMAからの手紙については、今までとは違うトーンの内容であり、私の会社をM&Aしたいという具体的な企業からのメッセージでした。私としては、一度、M&Aの話を聞いてみたいという気持ちもあったことから、CAMAの担当者と会うことにしました。
話し合いを重ねて築いた、アドバイザーとの良い関係
納得のいく結果になるのであればと、まずは進める
Q.
具体的に進めることを決断したポイントについて教えてください。
A.
CAMAからの説明は、会計事務所グループということもあり常に客観的で、かつ譲渡を検討する側の中小企業の経営者の気持ちを丁寧に理解してくれているものでした。その為、話し合いを重ねるようになり、私からも今までに考えていた先々の心配ごとを相談するなど、よい関係が築けていました。また、具体的な買手企業がいたことから、両社間におけるM&Aがもたらす相乗効果については、経営者として純粋に関心があったため、本当に納得ができる結果になるのであれば、M&Aを拒絶する理由はないと考えました。また、会社を譲渡するという行為は、初めてのことでしたので、「どうなるのかがよく分からない。」という先行き不安と、「自分の想い通りにはならないだろうな。」という冷静な気持ちはありました。しかし、それらについては、悩んでいても先に答えが出るものではなく、CAMAがアドバイザーとして付いてくれているので、先ずは進めることを選択しました。
大量の資料開示と、沢山の合意事項
Q.
M&Aを進めたうえでの問題点を教えてください。
A.
とにかく、提出を求められる資料の量が多いことです。M&Aの検討が中盤に入るまでは、顧問税理士にも秘密にしていましたし、従業員にいたっては、直前まで秘密にせざるを得ない状況でしたので、普段は顧問税理士に丸投げしている状態の財務関連の資料や、店舗に備え付けている資料の用意には本当に苦労しました。今となっては、業務終了後の遅い時間帯に、CAMAと一緒に各店舗をまわって資料を集めていたことが懐かしいです。また、当社の場合は、そもそも作成していない資料も多くありましたので、この点についてもCAMAに協力してもらって助かりました。あとは、条件を合意することの大変さです。最終的には、「両社、歩み寄れるところは歩み寄った。」という結果ですが、合意する項目が多く、専門的な内容が多いことから、「間に入っているCAMAは大変だなぁ。」と思っていました。また、その過程においては、CAMAから応諾した方がいい部分と、応諾しない方がいい部分などを解りやすく説明してもらえましたので、この点も助かりました。
経営者として、何を選択するべきか
Q.
実行することを決断された際の状況を教えてください。
A.
M&Aを具体的に検討することにより、冷静に現実をよく理解することができるようになっていました。
諸条件に合意してM&Aを実施する選択肢もあれば、今回は見合わせるなり、違う相手を新たに探すという選択肢、M&A自体を止めて自分で継続するという選択肢など。どれが正解かはわからないにしても、経営者として、何を選択するべきかは、わかるようになっていました。その為、最終的にM&Aを決断することについては、大きな迷いもなく、M&A後に何をやるべきか、何ができるのかを考えていることの方が多かったです。
従業員を始めとする多くの関係者のことを考えての選択
Q.
M&Aを実行された後の、今のお気持ちを教えてください。
A.
もし、会社を承継したいという子供が居る場合には、子供へ承継すればいいと思います。私の場合は、子宝には恵まれていましたが、まだまだ、そのようなことを考えられる年齢ではなく、調剤薬局の経営自体についても、益々難しくなることが分かっていましたので、その選択肢はなかったです。また、会社を承継するということは、私から株式を買い取り、会社の負債も引き継ぐということになるため、従業員が引き継げるものでもなかった。
つまり、最終的には第三者への事業承継が必要にはなるものの、「いつまで、私がオーナー社長をした方がいいのか?」という問題でした。また、選択肢としては、「まだ体力も気力もある元気なうちにM&Aを実行して、M&A後の関与に努める。」、または、「体力と気力の限界がきたときにM&Aを実行して、完全引退して余生を過ごす。」だと考えました。自分のことだけを考えるならば、M&Aを検討したり、決断したりするという大きな負担や、環境の変化を避けたい為、後者の方が、気が楽だと思います。しかし、経営者である以上は、従業員を始めとする多くの関係者のことを考える必要がありますので、前者を選択したという、自然の流れであったと考えています。
しっかりとしたM&Aのアドバイザー会社を探すことから始めることをお勧めします
Q.
最後に、M&Aを実行された武長様より、これからM&Aを検討される経営者の皆様へのメッセージをお願いします。
A.
事業承継問題は、会社の信用問題にも関わりますので、銀行などの利害関係者には相談しづらい内容であり、不確かな話に惑わされることも避けたい為、実際に多くのM&Aをおこなっている専門家への相談が必要だと考えます。また、地元の顧問税理士事務所などでは、M&Aの実績やノウハウが殆どないと思いますので、しっかりとしたM&Aのアドバイザー会社を探すことから始めることをお勧めします。具体的には、「専門職員が多く、それなりの規模で、中立な立場の会社であるか。また、経験豊かな担当者であり波長が合うか。」ということと、「お支払いする手数料の詳細。」を確認することが大切です。M&Aについては、事業承継の選択肢の一つにしか過ぎませんが、事業承継自体については必須です。その為、必須行為の選択肢の一つについて、検討しないという選択肢は健全ではないと考えています。当然に、それぞれの経営者の選択があってしかりですが、私はM&Aであったという結果です。そしてコーポレート・アドバイザーズ・M&Aさんにお願いしたことは正解だったと考えています。