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半世紀以上にわたってバイオサイエンス関連機器等の販売業を営んできた藤本理化(東京都文京区)は2021年12月、同仁グループ(熊本県熊本市)に参画しました。本インタビューでは、M&Aの検討を始めた契機や、1年以上経過して見えてきた“想定外”のシナジーなどについて、藤本理化の元代表者である清水達朗様にお話を伺いました。 |
藤本理化は1965年の設立以来、半世紀以上にわたってバイオサイエンス関連機器・試薬・分析機器・消耗品などの販売を行っています。バイオサイエンスは人間が生きていく上で必要な、医療、医薬、農学、食品、環境の礎となる領域であり、日進月歩の目覚ましい発展を続けています。バイオサイエンスの領域の研究者のパートナーとなり、社会へ貢献をし続ける企業でありたい、これが藤本理化の経営理念です。
1.事業承継の3つの選択肢
事業承継については、2017年頃(M&A実施の4年ほど前)から考え始めました。事業承継の選択肢としては、親族承継(子供への承継)、従業員承継(幹部社員への承継)、M&A(第三者への承継)の3つを検討しました。
親族承継については、近年競争が激化している業界の会社を、異業種に勤める子供に継がせるのは酷だと考えました。従業員承継については、社内に社歴が長く信頼できる幹部社員はいましたが、株式の承継という点で相応の資金が必要となる、経営に関するすべての責任を負わせる等は難しいと判断しました。
2.業界再編を見据えて、成長戦略としてのM&Aを選択
M&Aについては、事業承継の検討初期から選択肢の一つとして考えていました。私が製薬メーカーに勤めていた頃、医薬品卸の業界再編を目の当たりにしており、当業界においてもいずれは再編が起こると考えていたためです。とはいえ、私はM&Aに関する基礎的な知識や経験を持っていなかったため、コーポレート・アドバイザーズ(以下CAMA)や保険会社等の提供資料やセミナー等をもとに情報収集を進めました。
足元の業績は好調でしたが、当業界の中ではそれほど大きくない会社であるため、昨今の競争激化の状況を踏まえると、単独で経営していくことに対する先行き不安がありました。また、この業界でほとんどの時間を過ごしてきた自分の下で、新たな時代を拓くような有能な社員を育成することへの限界も感じていました。
そのため、私が引退した後も会社に残る社員のことを思うと、M&Aにより他社にグループインして現代にマッチした教育方針を持つ有能な社長に会社を託すことが、社員の成長につながる最も良い選択であると考えました。
3.M&Aに対する疑問点や不安の解消
M&Aの検討過程において、CAMAのアドバイザーは私の疑問や質問に対してとても誠実に対応してくれました。例えば、打合せを通じて出た事業承継やM&Aに関する疑問点や業界動向等を次回までの宿題として持ち帰り、次の打合せでは調べた結果をしっかりと報告してくれました。そういったやり取りをするなかで、数年かけてM&Aという選択肢に絞り込んでいきました。
他の仲介会社とも面談をしましたが、基本的にはマッチングにフォーカスしていて「売ったら終わり」という対応をしている担当者が多いと感じられました。一方、CAMAのアドバイザーは、検討材料となる情報提供のほか、従業員の将来、私の将来、価格を含む諸々の条件調整などに対し真摯に対応してくれたため、安心してM&Aを進めることができました。
1.社員を大切にしてくれるか
同仁グループは藤本理化と同様に卸売業を行っていますが、エリアが異なるため、同仁グループからすると東京でそれなりの経験と実績をもつ人材確保は容易ではなく、社員たちを必ず大事にしてもらえるはずだ、と考えました。また同仁グループは100年以上の歴史をもつ九州エリアの優良企業という側面があり、そういった点でも社員を預ける承継先としての安心感がありました。
2.新しいアイデアを生み出せるか
3.シナジーを期待できるか
社員にとって良い選択であるという自信
幹部社員には、最終契約締結の1か月前に今回の件を話しました。最初は驚いた様子でしたが、M&Aを選んだ理由、承継先としては同仁グループが良い理由等について丁寧に説明を行い、賛同してもらいました。
その他の社員はM&A実施日の翌週の定例会議で説明をしました。一部の社員については、私の子供が継ぐと思っていたらしく衝撃を受けていましたが、最終的には皆納得し受け入れてくれたと感じています。
社員にとってこのM&Aは良い選択であるということは、自分の中で自信があったので、社員には納得してもらえると思いました。そのため、失敗するかもしれないという不安はありませんでした。
1.想定外のシナジー「社員が自分で考え行動する習慣」
新体制では、役員に就任した幹部社員を筆頭に、皆で協力してがんばってくれています。
想定外の出来事としては、M&A前には予想していなかった「社員への良い影響」があります。具体的には、同仁グループの「トップが社員に対して具体的な指示出しをする前に、社員が自分で考えて行動する習慣」が藤本理化の社員にも浸透し始めていることです。以前の藤本理化には、このような習慣はありませんでした。M&A後には、社員が課題解決のために自分は何をすべきかを考えて発表し、実行していく、という取り組みが始まりました。
社員からすると自分で考えるよりも指示出しをしてもらったほうが楽なので、厳しい方針とも言えますが、社員の能力を高めつつ、新しいアイデアを生み出す組織へと変革していくためには、有効な手法だと感じています。
2.PMI(M&A後の統合プロセス)はゆっくりと
売上シナジー(藤本理化の顧客に同仁グループの商材を販売する)やコストシナジー(システム統合や事務統合)の実施はゆるやかです。焦って取り組むと現場に負担がかかりすぎるため、こういった統合は緩やかに実施するというが同仁グループのPMI方針のようですね。
事業承継やM&Aの検討にあたっては、事前準備と相手先選びが重要だと思います。
1.事前準備(情報収集と価値向上)
事前準備については、セミナー等での情報収集のほか、信頼できる相談先を見つけることが大事だと思います。
私の場合には、CAMAのアドバイザーのほかにも、顧問税理士や保険会社など信頼できる相談先がいくつかあり、相続対策や企業価値向上など、様々な視点からアドバイスを受けることができました。
2.承継先の選び方
私の場合には、相手先の経営者の考え方や、M&A後の社員の処遇(社員を生かし大切にしてもらえるか)という点が最も重要でした。そのため、(1)社員を大切にしてくれるか、(2)新しいアイデアを生み出せるか、(3)シナジーを期待できるか、といった点を中心に検討していきました。
社員にとっても、私自身にとっても非常に良いかたちで事業承継を進めることができ、本当に良かったと思います。
【本件担当アドバイザーのコメント】
清水様は50代から事業承継についての検討や準備を始められたため、時間的・精神的に余裕をもって事業承継を進めることができました。事業承継を機に、これまで会社を一緒に創り上げてきた社員たちの処遇を第一優先に考えて決断した、成長戦略としてのM&A。新体制に移行してから1年以上経った現在においても社員の皆様がご活躍されていると伺い、仲介者としては大変うれしく思います。(担当:コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長 伏江 亜矢)
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