日本クレアス税理士法人| コーポレート・アドバイザーズ(20年・2000件以上のM&A支援実績)の実務経験者による監修「よくわかるM&A」

M&Aの流れ・進め方・事前準備・留意点をわかりやすく解説
監修者:伏江 亜矢(株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長)

M&Aは企業経営者にとって身近な経営戦略の一つです。M&Aの成功確率を向上させるためには、時間的余裕をもち、情報収集や事前準備をしっかり行ったうえで取り組むことが求められます。本記事では、M&Aの流れ・進め方・事前準備・留意点をわかりやすく解説します。

目次

>>M&Aの流れ・事前準備について、アドバイザーに無料相談する

M&A(エムアンドエー)とは

M&Aとは、英語のMergers(合併)and Acquisitions(買収)を省略した言葉ですが、日本においては、会社法の定める組織再編(合併や会社分割)に加え、株式譲渡や事業譲渡を含む、各種手法による事業の引継ぎ(譲渡・譲受け)をいいます。

参考:中小企業庁「中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~

一般的には、売り手側からみたM&Aの目的は、他社に引き継ぐ(売却する)ことにより、会社や事業を存続・発展させることです。一方、買い手側からみたM&Aの目的は、他社を譲り受ける(買収する)ことで、事業・市場シェアの拡大や周辺事業への展開をすることです。

売り手・買い手の双方がM&Aの目的を実現するためには、相性が良くシナジー(相乗効果)を発揮できる相手先を選定し、適切な価格でM&Aを実施することが重要なポイントの一つです。

M&Aの流れ|売り手側

売り手側からみたM&Aの流れは、一般的に次の通りになります。

1. M&Aの検討・情報収集

あらゆる可能性を検討(顧問税理士やM&A専門家への相談)

M&Aを検討するきっかけや目的を改めて整理し、ほかの手法とのメリット・デメリットなどの比較したうえで、M&Aを進めるべきかを検討していきます。

ご自身で調べるだけではなく、信頼できる顧問先の会計事務所やM&A仲介会社、事業承継・経営戦略に関する専門家などの無料相談、セミナー等を活用しながら、検討材料をしっかりと収集することが後悔しない選択をするためのポイントになります。

2.M&Aの準備(自社分析・プレDD)/アドバイザーの選任

M&Aを成功させるためには、相性が良くシナジー効果を発揮できる相手先を探し、双方が相場感を把握したうえで、納得のいく価格で合意することが重要です。

そのためには、まず、双方が自社の強み・経営課題を整理することが大切です。必要な経営資源が浮かび上がり、相手先の条件が見えてきます。その過程においては、M&Aアドバイザー(仲介会社など)を活用することが一般的です。

自社分析(企業価値の把握・強み・課題・M&Aリスクなど)

売り手にとって、価値を上げるための事前準備は、2~5年程度の中期視点の話です。一方、相手先探しや条件交渉などは、半年~2年程度の短期視点の話です。

中期視点(2年~5年)で価値を上げるためのポイントとしては、まず自社の財務内容と収益性、成長性と業界構造を確認します。加えて現時点での企業価値評価を行い、現在の想定売却価格の把握と希望価格(目標金額)を設定します。

関連記事:プレDDとは|企業価値を高めて会社売却をするための事前準備

3. 相手先探し|マッチング

一般的には、以下の流れで相手探しを実施します(順番が前後することもあります)

【相手探しの流れ】
1.ロングリスト(数十社程度の候補企業が記載された資料)の作成
2.ショートリスト(さらに数社程度まで候補企業を絞り込んだ資料)の作成
3.ショートリストをもとにした買い手候補の選定
4.ノンネームシート(匿名の売り手の情報が記載されている資料)の作成
5.買い手に対するノンネームシートの開示、買い手による検討
6.買い手との秘密保持契約書の締結
7.企業概要書(売り手の詳細情報が記載された資料)の開示、買い手による検討 

企業概要書の検討により、買い手が売り手の買収を前向きに考えたいとの結論に至った場合、これ以降は本格的な交渉に移ります。

なお、売り手側から買い手候補に打診する方法のほか、仲介会社等のプラットフォームにノンネーム情報(匿名情報)を掲載しオファーを待つ、という方法もあります。

4. トップ面談・意向表明

トップ面談は互いに相性やM&A後の相乗効果・相手方に対するメリット(自社が相手として適している、ということ)をアピールする絶好のチャンスです。第一印象で決まるといっても過言ではないため、アドバイザーに相談のうえ、入念に準備を行うことをお勧めします。

意向表明書は買い手から売り手に一方的に差し入れられる書類であり、その内容に法的拘束力がないことが通常です。しかし、意向表明書では、買い手が想定する取引希望条件や買い手としてのアピールポイント、PMI方針(M&A後の統合プロセス)などが明記されることが多く、売り手にとっては、その買い手と次のステップであるデューデリジェンスへ進めるかどうかを判断する重要な材料になることから、M&A手続きにおいて重要なマイルストーンとして位置づけられています。

関連記事:意向表明書(LOI)とは?書き方、サンプル書式、基本合意書との違いを解説

5. M&Aの条件調整・基本合意書の締結

売り手・買い手の間でM&Aの成立に向けた基本的な条件(スキーム、価格、実行日、従業員の雇用条件など)について合意します。

両社の意向が一致する部分(事業の成長性を図るなど)は相互に確認をお行い、意向が異なる部分(例えば価格など)については、アドバイザーが調整を行います。

基本合意が成立した場合には、通常は売り手が買い手に対し、一定期間の独占交渉権を付与します。

関連記事:基本合意書(MOU)とは?意向表明書との違いや、重要条項、確認ポイントを解説

6. 買収監査(デューデリジェンス)の実行

買い手が実施するデューデリジェンス(買収監査)がスムーズに行われるように、売り手は必要となる資料の準備を行います。また、買い手は売り手の現地調査(マネジメントインタビューなど)も実施します。

関連記事:財務デューデリジェンスとは|PMIを見据えた活用ポイントを解説

関連記事:人事労務デューデリジェンスとは|労務リスクと人事マネジメント上の課題抽出

7. 最終条件調整

デューデリジェンスの結果を踏まえ、売り手・買い手の双方は、最終的な条件合意に向けて調整を行います。また対象企業(売り手企業)の従業員や取引先(借入先、仕入先など)の承諾が必要となる場合には、個別に承諾を取得していきます。

8. 最終契約締結・クロージング(M&Aの実行)

売り手・買い手の双方は、クロージング(M&Aの実行)に必要なタスクの履行を確認し、買い手から売り手に対し譲渡対価の授受が行われます。

関連記事:M&Aと契約書 |種類・留意点を解説

◆株式譲渡契約書の主な構成例

・株式譲渡の合意
・売買代金
・表明保証
・誓約事項
・損害賠償、解除に関する事項
・秘密保持 
・競業避止義務

関連記事:M&Aの表明保証とは?契約時の重要項目、判例、表明保証保険を解説

9. 関係者への開示(ディスクロージャー)

M&Aの実行後には、売り手・買い手の双方は関係者への説明や、実行後に必要となる諸手続きを進めていきます。

情報開示のタイミングはM&Aを実行した直後が一般的です。しかし、必要に応じて重要取引先や幹部社員、M&A手続き上、開示が必要な従業員(経理担当者等)に対しては、M&Aの実行前に開示することがあります。

また、重要取引先や幹部社員への事前開示や賛同がクロージング条件(売却代金の決済条件)となることもあります。

◆情報開示先の例

・売り手の役員・従業員
・売り手の取引先企業
・金融機関(メインバンクなど)
・証券取引所 ※上場企業の場合 

発表前の情報漏洩に注意するのはもちろんのこと、発表のタイミングや伝え方、幹部社員への事前の根回しなど入念なシナリオが成功につながる重要なポイントとなります。実績・経験豊富なM&A仲介会社のアドバイスを聞いて慎重に進めることをお勧めします。

10. PMI|経営統合

PMI(=Post Merger Integration)とは、M&A成立後の「経営統合プロセス」を指します。PMIはM&A交渉以上に重要であり、M&A実施後の事業の行方を左右します。PMIの進め方に決まりはなく自由に実施できますが、「シナジー効果が出るまでやる」ことが基本です。

またPMIは、M&A交渉のトップ面談のときから始まっており、買収調査で必要な事項を検討しておく必要があります。

最も重要なことは売り手・買い手双方での方向性の共有であり、それによって文化の統合を実施します。文化の統合が達成されれば、買い手と売り手の間に本当の信頼関係が生まれます。

関連記事:PMIとは?全体像と成功のポイントを解説

関連記事:中小PMIガイドラインとは?基本事項やポイントを紹介

以上が一般的なM&Aの手続きの流れです。ただし、目的や相手企業の業種によって手続きの流れが異なる場合があります。そのため、M&A仲介会社等の専門家のアドバイスや支援を受けることで、スムーズな手続きを進めることができます。

>>M&Aの流れ・事前準備について、アドバイザーに無料相談する

M&Aにおけるソーシング(買い手側)

買い手にとってM&Aにおけるソーシングは、M&Aの相手先を見つけて交渉を進めるまでの重要プロセスです。買い手がM&Aの相手先(売り手/ターゲット)を見つける(ソーシング)方法は主に2つあります。

◆売却希望案件を紹介してもらう(紹介型M&A)
◆潜在的な売り手に能動的アプローチをする(仕掛け型M&A)

それぞれの方法、メリット・デメリット(注意点)、押さえておくべきキーワードについて解説していきます。

売却希望案件を紹介してもらう(紹介型M&A)

方法M&A仲介会社や金融機関に売却希望案件を紹介してもらう
メリット売却意思が固まっている相手と、希望条件が整理された状態で
交渉を開始できるため、検討を進めやすい。
⇒M&Aの「成立」確率が高い
デメリット・注意点・M&Aの成立自体を目的化しやすい。
・人気業種の案件では、多数の競合のなかで選ばれる必要がある。

紹介型M&Aは、M&A仲介会社や金融機関が業務受託した売り手(売却希望案件)の情報を基に検討する方法です。

買い手は、まず売り手の社名が伏せられた「ノンネームシート」を基に検討します。買収の可能性があれば、M&A仲介会社と秘密保持契約書(NDA)を締結し、「企業概要書(インフォメーション・メモランダム/IM)」で詳細情報を把握し検討を行います。

潜在的な売り手に能動的アプローチをする(仕掛け型M&A)

方法M&A戦略に合った潜在的な売り手に対し、能動的にアプローチする
メリット・M&A戦略にマッチする相手と他社に先駆けて交渉できる。
・取り組みを通じてM&A戦略もブラッシュアップできる。
⇒M&Aの「成立」のみならず「成功」確率が高い
デメリット/注意点・売却意思を引き出すところから交渉を始める必要がある。
・仕掛け型のアプローチに精通した担当者やアドバイザーを起用する必要がある。

買収を希望する企業が、自社のM&A戦略に基づいて、シナジー(相乗効果)が見込めるM&A潜在層(潜在的な売り手/ターゲット)のリスト(ロングリスト/ショートリスト)を作成し、能動的にアプローチをする方法です。

ファインディングや仕掛け型アプローチともいわれています。

関連記事:M&Aにおけるソーシングとは | 種類・メリット・デメリット・事例を解説

M&Aで失敗しないために~成功に向けた取り組みポイント

ここでは、買い手・売り手双方にとってのM&A成功のためのポイントについて解説します。

M&A戦略|買い手側

M&Aを実施する際には、売り手、買い手ともに、M&Aの目的や戦略を明確化することが重要です。M&Aによって何を達成したいのか、自社のビジョンとどのようにマッチするのか、想定されるシナジー効果は何か、を明確にし、これらに基づいて戦略的にM&Aを実施する必要があります。

関連記事:M&A戦略とは|最近の傾向とM&A成功のポイントを解説

事業承継・売却戦略(自社の価値把握と磨き上げ)|売り手側

誰に承継する場合であっても、「自社の価値を知ること」と「引継ぎやすい会社に磨き上げること」は、事業承継の成功に向けて重要なステップです。

当社では数年以上先に事業承継を検討しているオーナー企業向けにプレデューデリジェンス(プレDD)サービスを提供しています。

プレデューデリジェンス(プレDD)では、【1】財務内容と収益性(BS、PL)、【2】成長性と業界構造、【3】管理体制と組織運営の3つの視点から「承継リスク低減」と「企業価値の向上」のために有益な情報を調査し、改善事項とともに報告します。

当社が行うプレDDの調査項目は、対象の状況や調査目的によっても変わりますが次の通りです。

【1】財務内容と収益性(BS・PL)

 ・資産評価の適正性、負債の網羅性
 ・実態純資産の把握
 ・収益構造の把握
 ・オフバランス項目チェック  

【2】成長性と業界構造

 ・マーケットの拡大余地
 ・強み、弱み、参入障壁
 ・顧客属性  

【3】管理体制や組織運営

【全般的事項】
組織図、決裁権限、会議体の区分、各部門の方針と伝達の状況、各種規程の存在と運用、BCP  

【財務会計】
財務・決算に関する内部統制の適切性、会計方針の適切性、予算制度と事業計画の有無と実効性、阻害要因、月次決算のタイムリーさ、内部監査の実施状況、税務調査の実績

【人事労務】
人事労務に関する各種規程の存在の網羅性と運用のサンプルチェック、研修制度の有無、人事評価制度の有効性

【法務】
未解決訴訟の有無、株主・株式の状況

【IT活用状況】
IT投資の実績と計画

【4】株価算定

・時価純資産法、EBITDAマルチプル、DCF法等による株価算定

関連記事:プレDDとは |企業価値を高めて会社売却をするための事前準備

相手先探し(ソーシング)

M&Aを成功させるうえで、相性が良く、シナジー効果を発揮できる相手先を探すことは重要です。そのためには、自社の強み・経営課題を整理することが大切です。それにより、必要な経営資源が浮かび上がり、相手先の条件が見えてきます。

また、経営陣や企業文化の相性は、トップ面談などでしっかりと確認していくことも重要です。以下は売り手が買い手候補先を理解するための質問です。M&Aの成功には双方をよく理解することが必要不可欠のため、売り手は買い手からこれらの説明がなければ能動的に確認を行い、買い手は売り手から聞かれる前に説明の準備をしておくことをおすすめします。

◆売り手は買い手の何を知りたいのか(買い手選定時のポイント)

1. 会社概要買い手候補の事業内容や業績は?業界でのポジション・特長・社風は?
2. M&Aの目的なぜ当社を買収したい?何かほしいのか(人材/拠点/取引先)?
3. 対象分析なぜ当社なのか?当社のどこに魅力を感じているのか?
4. なぜM&AかM&Aでなければ実現できないのか(オーガニックとの比較)?
5. 想定シナジーM&Aによる具体的なシナジー効果は何か?
6. 売却メリット当社(株主・役職員)のメリットは?
7. 価格の考え方どれぐらいの提示額か?相場と比べて高いのか?
8. 交渉窓口交渉窓口は権限者(意思決定ができる方)なのか?
9. M&A実績M&A実績はあるのか?M&A後うまくいっているのか?
10. PMI方針PMI(M&A後の統合プロセス)のスケジュールや方針は?

タイミング

M&Aは時期やタイミングによって価格条件が大きく変動します。以下では最適なタイミングの例として4つ挙げています。

① 会社の業績が良いとき/好景気のとき
② 体力の衰えや経営意欲の減退を感じたとき
③ 業界再編の動きがでてきたとき
④ 良い相手からオファーがあったとき

いずれの例においても「ちょっと早いかな?」と思うくらいでM&Aの準備を始めることが、納得のいく価格で良い相手とのM&Aを成功させるポイントとなります。

相談先・アドバイザーの活用

アドバイザーはM&Aにおけるすべての業務をサポートしてくれる専門家です。FA(ファイナンシャルアドバイザー)形式と仲介形式があり、中小企業のM&Aにおいては、仲介形式が主流です。未熟なアドバイザーを起用すると、相手先探し・条件交渉・契約手続きのすべての点において円滑な推進が難しくなりますので、相談先・アドバイザー選びは慎重に行う必要があります。

関連記事:M&Aアドバイザーとは?仲介とFAの違い・役割・選び方を解説

価格・条件交渉

M&Aにおいては、双方納得感のある価格や条件で合意することがM&Aの成功のカギとなります。そのためには、双方のコミュニケーションが重要です。買い手と売り手、そして両社の社員やステークホルダー間でのコミュニケーションを密に行い、情報共有や意思疎通を図ることが重要です。

関連記事:​M&Aと価格|企業価値算定手法・相場・条件交渉術を解説

PMIの実施

PMI(M&A後の統合プロセス)においては、円滑な業務引継ぎ(後継者の育成)のほか、想定したシナジーを発揮するための施策の実行が重要になります。買い手は、円滑な業務引継ぎと想定シナジー発揮を実現させるために、デューデリジェンスの段階からPMIに必要な情報収集や引継ぎ・シナジーを実現させるための施策を計画し、適切な人材を確保し配置する必要があります。

関連記事:PMIとは?全体像と成功のポイントを解説

関連記事:中小PMIガイドラインとは?基本事項やポイントを紹介

以上のように、M&Aを成功させるためには、戦略・目的、タイミング、相手先の選定、アドバイザーの活用、価格・条件交渉、PMI(M&A後の統合プロセス)の実施がポイントになります。

>>M&Aの流れ・事前準備について、アドバイザーに無料相談する

M&Aについてのよくある質問(FAQ)

Q. M&Aで人気の業種は?

全ての業種がM&Aの対象になりますが、業種や事業エリアによって、買い手のつきやすさは異なります。特に「人材不足が顕著な業界」「業界再編が進んでいる業界」「規制等により参入障壁が高い業界」は、買いニーズが多い傾向にあります。

例えば、以下のような業種は買いニーズが多い(人気が高い)状況です。

① 介護事業(介護施設運営・デイサービス・訪問介護・訪問看護)

介護事業においては、全領域において買いニーズが多い業種です。買い手としては、以下のようなメリット(買収目的)があります。

■既存のサービス利用者や職員、ノウハウを引き継げる

近年は市場のさらなる拡大を期待して介護業界に新規参入したり、既存の介護事業を一層強化したりする事業者が増えています。

そのような事業者にとっては、売り手の持つ介護サービス利用者や職員、サービスのノウハウをそのまま引き継ぐことができれば、早期に収益基盤化することができます。

■赤字事業を安価で引き継ぎ、経営改善していく

前述のとおり、厚生労働省の「令和2年度介護事業経営実態調査結果」によると、訪問介護、通所介護、特定施設入居者生活介護における3~4割の施設で、収支差がマイナスとなっています。

赤字事業を安価で引き継ぎ、経営改善することで、初期投資を抑えて、急速に事業拡大をしている事業者もみられます。

 関連記事:介護事業所の売却メリット・手続き・価格相場・M&A事例52選

② IT・ソフトウェア開発

全ての業種において、IT化やDXが求められており、同業種のみならず、異業種の買い手におけるニーズの高い業界です。主な買い手のメリット(買収目的)としては以下のようなものが挙げられます。

■技術者や取引先の獲得による事業規模拡大

IT・ソフトウェア開発においては、慢性的な人材不足です。M&Aによって同業他社を買収できれば、技術者の大量増員が実現します。

さらに、大手・中堅企業にとって、自社と重複しない領域の安定的な取引基盤を有する中小のIT・ソフト開発の会社をグループに取り込むことで、取引先の獲得というメリットもあります。

■システム開発の内製化や新規事業への参入

これまでシステム開発の大半を外注先に頼ってきた会社は非常に多いですが、昨今のIT化・DXニーズにより、内製化やIT・ソフトウェアに関連した新規サービス開発をしたいというニーズが増えています。

その実現のため、自社で技術者を採用するよりも、M&AによってIT・ソフトウェア開発会社を買収することで、採用や育成にかかる時間を短縮できたり、IT・ソフトウェア開発のビジネスのノウハウの獲得できるなどのメリットがあります。

関連記事:システム開発の会社売却事例43選と高く売却する交渉術

関連記事:WEBサービス売却の流れ・相場・M&A事例

③ 建設・工事

管工事や電気工事などの建設・工事業もM&Aが盛んな業種の一つです。

■職人(資格者)や取引先の獲得による事業規模拡大

建設業においても、慢性的な人材不足です。M&Aによって同業他社を買収できれば、職人(資格者)の大量増員が実現します。さらに、大手・中堅企業にとって、自社と重複しない領域の安定的な取引基盤を有する中小企業をグループに取り込むことで、取引先の獲得というメリットもあります。

■周辺分野への参入

周辺分野への参入とは、例えば、建築工事の会社が、電気工事や空調工事の会社を買収するといったケースです。

関連記事:空調工事会社・衛生設備工事会社の売却事例10選と業界動向

④  小売業(調剤薬局、スーパー)

小売業は以前からM&Aが活発な業界です。大手企業同士のみならず、大手企業が中小企業のM&Aを行うケースも増えてきています。
同業種を買収した場合は、短期間に店舗数を増やすことが可能になります。

また、優秀な人材が確保できれば採用や人材育成にかかる時間とコストを節約することもできます。

関連記事:調剤薬局売却の価格相場・交渉術・手続き・最新M&A事例

関連記事:店舗売却の基礎知識|方法・流れ・相場・費用・税金

⑤  特殊な技術を持つメーカー

中小企業には、特殊な技術を持つメーカーやある領域の技術者が集まっている会社も多く見られます。そういった会社については、たとえ規模が数名であっても、上場企業等の大企業からオファーが入るケースもあります。

 関連記事:製業のM&A動向・事例15選・売却相場を解説

M&Aを検討している場合は、自社の業界の状況やM&Aの動向などを見ながら、タイミングよく話を進めることが必要です。M&Aを検討する場合は自社の業界における実績の多いM&A仲介会社やアドバイザーを探し、相談してみることをおすすめします。

Q. 会社を譲渡した後、経営者・従業員・会社はどうなる?

経営者は継続か引退

中小企業では後継者がいない場合、会社を存続するためにM&Aを選択するケースが多いです。そのため、会社売却と同時に引退を選択する経営者も多いのが実情です。

しかし、会社売却と経営者の引退は必ずしもイコールでなくてもよいのです。中小企業では、経営者が株主も兼ねていることがほとんどですが、大企業では、株主と経営者は別(所有と経営の分離)が通常です。株式を売却し株主でなくなっても、経営者の地位は、役員交代の登記をするまでは継続します。

会社・組織の状況によっては、長い引継ぎ期間を設けた方がスムーズにM&Aが完了する場合もあります。その場合には、買収側の企業と話し合ったうえで、一定期間は経営者が役員として残るケースも多々あります。 

従業員は継続雇用が主流

従業員の雇用契約は、経営者個人と社員が結ぶものではなく、会社が社員と結ぶものです。そのため、株式譲渡により、会社がそのまま存続する以上、雇用契約は自然と継続することになります。

一方、事業譲渡の手法では、雇用契約は継続しないため、買い手と新たに雇用契約を巻き直す必要があります。 なお、株式譲渡であっても、従業員によっては、自分の年齢や働き方などを検討し、会社売却を機に退職を希望する人も見受けられます。その場合には、従業員の権利として退職することも可能です。

会社はそのまま存続

株式譲渡では、株主が、買収側の企業に株主を売却し、対価である金銭を受け取ることで、会社売却は成立します。会社そのものは会社売却後も存続することになります。資産や負債、商品・サービス、顧客と結んだ契約、社名、知的財産権などの見えない資産はそのまま引き継がれます。 

株主が経営者以外にも複数人いて株式が分散している場合、株式譲渡を実施する前に買取りを行い、集約しておくと手続きがスムーズに進みます。 株式譲渡を実行するには、最低でも2/3以上の株式を集約し、支配権を買い手へ移せるようにしておきます。

Q. M&Aにはどれぐらいの期間が必要?

会社売却にかかる期間は3か月~1年が目安になります。ただし、会社の業種・業態、規模、希望条件、地域性などによっては、相手先の選定に時間を要するケースもあるため、あくまでも一般論としてお考え下さい。

会社の存続に加え、企業理念や経営方針も引き継いでほしいというご希望がある場合は、ふさわしい相手を選定し、両社話し合いの上、経営理念を確認してすり合わせるなど、段階を追って詰めていくことが増えるため、より時間がかかってしまうケースが多いでしょう。

またM&Aの成功には「実施タイミング」も重要な要素です。タイミングを逃さないためにも、時間的余裕をもって準備を進めることが肝要になります。

Q. M&Aを進める際に必要な書類は?

M&Aを進めるにあたっては、さまざまな資料が必要になります。下表「M&A交渉に必要な主な資料」は、通常のM&A交渉で必要となる資料で、このほか業種や業態に応じて、許認可資料や図面など必要な資料が異なります。

そのため、まずは無料相談などを利用してアドバイザーにご確認頂くことをお勧めします。

項目必要書類(例)
会社○商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
○定款
○株主名簿
○定時株主総会議事録(直近3年分)
組織・人事労務○組織体制図
○役職員名簿(役職・業務内容・年齢・社歴・保有資格など)
○就業規則・各種規定
○雇用契約書サンプル
○賃金台帳(直近3年分)
財務会計○過去3期分の決算書一式(勘定科目明細、申告書別表含む)
○直近月の月次試算表
○金銭消費貸借契約書、返済予定表
○リース契約一覧・契約書
○保険契約一覧・保険証書・直近の解約返戻金が分かる資料
事業○取引先・商品別売上推移表(過去3期分)
○主要取引先との契約書
○賃貸借契約書
○許認可・特許などの証書
不動産○全部事項証明書(土地・建物)
○固定資産税納税通知書
○施設写真
○各種図面
その他 その他資料

Q. 赤字や債務超過の企業はM&Aできる?

営業利益や当期純利益がマイナスの企業である場合、会社を売ることができるかどうか気になるかと思います。売却は難しいというイメージを持たれる傾向があるものの、売却できる可能性は十分にあります。

具体的には、以下の条件に当てはまる企業であれば赤字でも売却できる可能性はあります

・優秀な人材や優れたノウハウなど、利益を生み出す経営資源を有している
・将来を見据えて事業への投資を行っていることが原因で一時的に赤字となっている
・買い手によるテコ入れやシナジー効果の創出により、業績の改善を期待できる

また、事業譲渡や会社分割の手法を用いることで、利益が出ている事業や買い手が欲しい事業のみを売却できるため、上記に当てはまらない企業でもM&Aの相手が見つかる可能性はあると言えます。

事業承継M&Aの事例(55歳からの事業承継)

事業承継の事前準備~引退までのスケジュール

システム開発会社の創業者である尾﨑様は55歳の時から事業承継を意識し、セミナーに参加するなど情報収集を始めます。

60歳手前で社内承継を視野に入れ、社内の部門長3人に対して権限委譲を進め、後継者候補として育ましたが3人とも資金面をはじめとする経営責任の難しさから、応諾にはいたりませんでした。また、親族内承継の可能性を考えたのが63歳。しかし子ども達は職業や生活が確立していていたこともあり、断念。

最終的には、64歳の時にM&Aを実施し、その後2年半は代表取締役を続投し、退任後も1年間は顧問を務められ、68歳で顧問を退任されました。

事業承継を意識し始めてからM&Aを実施し、代表取締役を退任するまで、12年もの年月がかかっています。

まずは自社の客観的な理解から

事業承継の選択肢にM&Aを入れた段階で、早期に自社の客観的な理解(評価)を行うことが重要です。具体的には以下の3点が挙げられます。

● 自社の客観的価値の把握(=M&Aの場合の株価算定)
● 自社の強み、課題の把握
● 自社に関する論理的説明の準備
 1.直近3年の収益変化
 2.不採算案件
 3.経営指標における損益計算
 4.計画の未達要因
 5.不良資産及び債権

尾﨑様のケースでは、65歳を一つの区切りに使用と考え、事業承継を意識し始めた55歳頃からセミナーに参加するなど積極的な情報収集に動いていました。

この行動力があったからこそ、「社員の雇用維持」「顧客への継続責任が果たせること」「創業者利益の確保」この3つの重要事項を果たせる事業承継が行えたのでしょう。

事業承継は企業にとって中期的な課題であり検討から実行までは時間を要し、成功に導くためには事前準備が肝要です。

>>体験談インタビュー『事業承継・M&Aを成功に導くには』を詳しくみる

M&A成功事例インタビュー

M&A成功事例として、M&A・事業承継の体験談インタビューをご紹介いたします。コーポレート・アドバイザーズM&Aを介してM&Aを実行された元オーナー経営者様に、M&A検討の経緯、M&Aを決断した理由、これからM&Aを検討されるオーナー経営者様へのメッセージ等をお聞きしました。

>>M&A成約事例インタビューをみる

M&A売却・事業承継案件一覧|CREASマッチング

コーポレート・アドバイザーズM&Aが運営する「CREASマッチング」では、譲渡・売却を希望する案件一覧を掲載しています。

機密性の高いM&Aに関する情報を匿名化した情報として掲載しております。より詳細な内容や、Webサイトには掲載していない非公開のM&A案件についての情報をご希望の場合には、ぜひお問い合わせください。

>>全業種のM&A案件情報一覧をみる

»業種から探す
病院・クリニック  |  調剤薬局・ドラッグストア | 介護・福祉・教育 | バイオ・医薬品・医療機器 |  美容室・整体・整骨院 | IT・Webサービス・システム開発  | 建設・土木・工事・運送 |  飲食店・食品製造 | 不動産・ビルメンテナンス |  人材派遣・士業・金融・警備 | アパレル・ファッション |  ホテル・旅館・娯楽・レジャー | 広告・出版・印刷・メディア | 製造業・設計・企画 |  卸売業・商社 | 小売業・EC・サービス | 農林水産・エネルギー | 

M&Aの成功に向けて理解を深めるために

M&Aの一層の理解のために、当社の無料相談をご活用ください。

M&Aの実行にはさまざまな手続きやプロセスが存在し、高度な専門性や知識が必要とされます。

コーポレート・アドバイザーズM&Aは、20年で2000件以上のM&A支援実績のある会計事務所グループ(日本クレアス税理士法人など)のM&A専門会社です。M&A・事業承継に精通した当社アドバイザーが、初期段階のご相談から誠意をもって対応いたします。

>>M&Aの流れ・事前準備について、アドバイザーに無料相談する

無料で企業価値シミュレーションができます

納得感のある価格・条件で事業承継・M&Aを実施するためには、客観的な企業価値の把握が第一歩です。決算書等をご提出いただければ、20年で2000件以上のM&A支援実績を持つコーポレート・アドバイザーズが無料で企業価値シミュレーションを実施いたします。

伏江亜矢
監修者:伏江亜矢
株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A 企業提携第三部 部長
金融機関で法人営業を担当後、2012年にコーポレート・アドバイザーズ入社。M&Aの事前準備から、候補先のソーシング、企業価値評価、条件交渉、クロージングまで一気通貫した支援を行っている。 ヘルスケア・ライフサイエンス(医療・介護・メーカー・卸商社)、IT・ソフトウエア(Webサービス、システム開発)、人材サービス(派遣、警備、ビルメンテナンス)などのM&A支援経験が豊富。 M&A成功のために必要な情報をわかりやすく解説するコラムサイト「よくわかるM&A」の運営責任者。
  • facebook
  • twitter
  • ページのリンクをコピーしました
会社概要

日本クレアス税理士法人|コーポレート・アドバイザーズ グループでは、20年間にわたり2000件以上の会社売却・M&A支援を行っています。

よくわかるM&Aでは、会社売却・M&Aの基礎知識やフェーズごとのM&A成功ポイント・留意点を解説しています。

毎月、オンラインの無料セミナー開催しております。会社売却・M&Aの検討を始めたばかりの方もお気軽にお問合せください。

■グループ企業一覧
日本クレアス税理士法人
日本クレアス社会保険労務士法人
弁護士法人日本クレアス法律事務所
株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティング
株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A
株式会社えびすサポート
株式会社結い財産サポート
日本クレアス行政書士法人

■事業内容
会計・税務
M&A(仲介・コンサルティング)
FAS(株価算定/財務調査/企業再編)
人事労務 / 給与計算
相続・事業承継
企業法務・法律顧問
IFRS(国際財務報告基準)・決算開示(ディスクローズ)支援
内部統制(J-SOX)・内部監査
海外現地法人サポート
非上場株式売却コンサルティング(非上場株式サポートセンター

■社員数
417名(グループ全体 / 2023年10月現在)
税理士(試験合格者含む)56名
公認会計士(試験合格者含む)15名
特定社会保険労務士2名
社会保険労務士(試験合格者含む)12名
弁護士 2名
相続診断士41名
中小企業診断士1名
行政書士4名

■関与先
法人 3,240社(うち上場企業85社)
社会福祉法人 133件
クリニック・医療法人・介護福祉等 593件
個人 4,015名
合計 7,981件

M&A売却・事業承継案件一覧|CREASマッチング

コーポレート・アドバイザーズM&Aが運営する「CREASマッチング」では、譲渡・売却を希望する案件一覧を掲載しています。

機密性の高いM&Aに関する情報を匿名化した情報として掲載しております。より詳細な内容や、Webサイトには掲載していない非公開のM&A案件についての情報をご希望の場合には、ぜひお問い合わせください。

>>全業種のM&A案件情報一覧をみる

M&Aお役立ち資料ダウンロード

事業承継・譲渡をご検討中の方へ

「成長戦略・事業のさらなる加速のために」「後継者問題の解決のために」
企業価値を最大化できる、シナジー(相乗効果)を見込める相手先とのM&Aをワンストップで支援します。