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事業承継・M&Aよくある質問と回答

M&A・会社売却について

Q.

事業譲渡で売り手にかかる税金(法人税)は?株式譲渡との比較、節税対策、消費税の取扱い

A.

◆事業譲渡と法人税(売り手法人・売却側)

事業譲渡の場合、譲渡益 [ =売却金額-(譲渡対象資産-譲渡対象負債)] は、売り手の法人所得となり、課税対象となります。
現在の法人税の実効税率*1は、近年引き下げ傾向にあるものの約30%程度です。

これは、株式譲渡の場合に株主が負担する譲渡益課税の税率約20%と比べると高くなります。

 

◆節税対策や事業譲渡の実施時期の検討

売り手の法人において繰越欠損金を保有していたり、役員退職慰労金の支給により所得を圧縮できる場合には、株式譲渡よりも法人税等を低く抑えることができるケースもあります。
また、事業譲渡で法人税の負担が高額になりそうな場合は、期末近くではなく、期首近くに事業譲渡を実行することがおすすめです。決算までに時間があるため、必要な対策を講じやすくなります。

 

◆事業譲渡と消費税について

売却金額のうち、棚卸資産、固定資産(営業権・のれんを含む)には消費税が課されますのであらかじめ認識をしておく必要があります。
特に、検討初期では「株式譲渡」を前提としていたが、途中から事業譲渡にスキーム変更した場合には、消費税負担を考慮し忘れがちのため、注意が必要です。

 

◆事業譲渡のほうが株式譲渡よりも高く評価される?(買い手法人ののれん償却の効果)

事業譲渡の場合、買い手の法人は、税務上、事業譲渡が行われた月から5年間(60か月)で均等償却していくように定められています(のれん償却*2)。
決算書上の減価償却費よりも多くの金額を実質的な減価償却費として計上(損金算入)することになるため、買い手としては、法人税の節税につながる効果が期待できます。
そのため、案件の特性にもよりますが、買い手としては株式譲渡よりも事業譲渡のほうが、対象会社(対象事業)を高く評価しやすい、といったケースが多々あります。

M&Aにおける採用スキームや税務関係については注意点が多いため、M&A専門家や顧問税理士等とよく相談のうえ対応すべき事項になります。

>>事業譲渡について、M&A・事業売却の専門家に相談する

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*1 法人税の実効税率とは、法人の実質的な所得税負担率のことをいいます。
事業税の損金算入の影響を考慮した上で法人税、住民税および事業税の所得に対する税率を合計したものとなります。

*2 のれん償却に関しては、会計上と税務上の扱いが異なります。
日本の会計基準では、のれん取得時に貸借対照表の無形固定資産としてのれんを計上し、20年以内に均等償却します。
他方、税務上では、のれんを5年間(60か月)の月割りで均等償却していくように定められています。
国際会計基準(IFRS)を採用している場合には、原則としてのれん償却はありません。
ただし、のれんの価値が著しく下落した際には、減損処理を行うこととされています。