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事業承継・M&Aよくある質問と回答

Q.

所有と経営の分離の留意点・デメリットは?事例や対応策も教えてください

A.

■「所有と経営の分離」とは、会社(株式)を所有する者と会社を経営する者を分離することです。

上場企業等においては、コーポレート・ガバナンスや組織運営等の観点から、会社(株式)の所有者と経営者は一致していないケースが多いです。

これは、大企業の株主は不特定多数となるため、コーポレート・ガバナンスや組織運営等の観点から、所有者とは別の経営者の存在が必要になってくるためです。

一方、中小企業においては会社(株式)の所有者と経営者は一致しているケースが多く、会社の所有権を持つ者がそのまま会社経営を行います。

いわゆるオーナー企業である中小企業が、「所有と経営の分離」を検討をするタイミングとして最も多いのが、「事業承継期」です。

 

【事例】会社(株式)はオーナーの親族に引継ぎ、代表者のみ親族外の役職員に引き継ぐ場合(親族承継+社内承継)

親族に後継者がいない場合、「従業員に継いでほしい」と考えるオーナー経営者は多いです。

親族外の役員や従業員に事業承継をする際、株式を買取るための資金調達が上手くいかず、後継者が会社を支配するのに必要な株式を取得できない場合が多々あります。
このような場合は現経営者が株式を持ち続ける、又は相続で子供などに引き継ぐこととなり、結果として「所有と経営の分離」の状態になることがあります。

この時、以下のような問題(デメリット)が生じる可能性があります。

① 株式を所有する旧経営者が負担するリスク

中小企業においては、事業用資産と個人の財産が混在してしまっている場合が多く見られます。
そのため、経営を後継者に承継した後に、株式を所有するオーナーの個人資産を担保に、新たな資金調達をする可能性も想定されます。

 

② 意思決定スピードの低下

中小企業の強みは、市場や社会の変化を敏感に察知して素早く対応できる敏捷性です。
それが可能なのは、大企業と比べてコンパクトな組織であるため、経営の意思決定を迅速に行うことができる環境にあります。

もし、会社の所有と経営が分離してしまった場合、重要な経営意思決定に際して都度オーナーの同意をとることが必要となります。その場合、スピードという中小企業の強みが生かせなくなる恐れがあります。

 

③ 経営者や従業員のモチベーションの問題

所有と経営が分離した場合、経営者が受け取ることができる利益は役員報酬のみとなります。

従業員や経営者の働きによって企業価値が向上したとしても、株価上昇に伴う利益を享受できるのは、自社株式を所有している旧経営者のみです。

所有と経営が分離している場合には、現経営者や従業員のモチベーションの維持・向上のための施策が必要になります。

 

④ 相続の発生

自社株式の株価が高くなった後でオーナーに相続が発生した場合、相続税の納税資金を確保するために株式を売却することがあります。
このような場合、株式の売買によって自社株式が第三者にわたる可能性があり、経営者にとって大きな経営リスクとなります。

後継者が安心して経営を行うためには、少なくとも過半数の株式を承継する必要があります。

保有する株式が50%を下回ってしまうと、取締役を解任されてしまう恐れもあります。

また、相続の発生は、所有と経営が分離している企業の資金繰りに大きな影響を及ぼす可能性があるため、事業活動の存続に支障が生じる可能性もあります。

 

 

■所有と経営の分離で生じる問題の対応策

このように事業承継期において「所有と経営の分離」の問題が生じた際には、前述のような問題(デメリット)を把握した上で、従業員や現経営者について、必要なインセンティブ設計等を講じ、事業承継後の成長可能な経営環境を準備することが重要となります。

計画的に事業承継を進めていくためには、早めの意思確認と見極めが必要です。

また、状況に応じて第三者承継(M&A)へ方針転換するための備えも行っておくことが望ましいでしょう。

中小オーナー企業の事業承継の選択肢として、M&A(第三者への承継)は一般的になりつつあります。

これまで「消去法」で最後の選択肢として考えられがちであったM&Aですが、成功させるためには数年単位の準備期間が必要であるため、親族承継、社内承継、M&Aという順に検討するのではなく、3つ同時に、もしくは「M&Aこそ一番初めに検討すべき」と言えるでしょう。

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