株式会社あみはま薬局 代表取締役社長 網濵 栄司 氏(写真右から2番目)
譲渡企業について
Q.
まずは、会社の概要についてご紹介します。
「あみはま薬局」は、昭和30年に鳥取市にて薬品販売店として創業。その後、網濱家3代に渡り事業を承継し、今年(令和元年)で創業64年目を向かえる老舗企業です。
本日、お越し頂きました網濱社長は、3代目の社長であり創業家というお立場です。
また、本年、オーナー家が保有する「あみはま薬局」の全ての株式を、某大手企業に譲渡致しました。網濱社長は、株式譲渡後においても代表取締役社長を続投し、大手企業とのM&Aによるシナジー効果を有効活用した更なる企業価値の向上に向けて、違わずの3代目社長業を続けられています。
M&A(売却)の提案を受けた印象について
Q.
当社(株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A。以下、「CAMA」)が貴社に対するM&A(売却)の提案を行ったのは、大手ドラッグストア・チェーンから「未出店エリアである鳥取に進出するには、同エリアで確固たる位置を築いている貴社とのM&Aによる連携を図りたい。CAMAより提案して欲しい。」という依頼を受けたことが背景にあります。
A.
都心から離れている当社であっても、M&Aに関するダイレクトメールが日々送られてきます。しかし、幸いにも業績は安定し、従業員にも恵まれている会社であり、私自身も引退する年齢ではないことから、「全く関心がない。」というのが当時の正直な気持ちでした。
その様な最中、CAMAから送られてきた手紙は、前述のようなダイレクトメールの類とは異なり、「大手企業からの具体的なM&Aの相談があり、会社名を含めた詳しい内容を聞いて欲しい。」という、経営者としては極めて気になる内容の手紙であり、手紙が到着して直ぐに私宛に電話で入り、私にも解りやすい言葉で丁寧に趣旨を説明してもらえたことにより、信用できそうな会社であり、かつ信憑性のある話であると思い、これまでは関心がなかったものの「今回は一度会って話を聞いてみよう。」という心境になりました。
譲渡を検討しはじめたきっかけ
Q.
M&Aに対する「関心」が、「検討」に変わったポイントについて教えてください。
A.
大きく分けると、2つあります。
1つは、M&Aを理解し安心することが出来たことです。CAMAは、初めて電話で話をした後に、直ぐに東京から鳥取に来てくれ、解りやすく丁寧に説明してくれました。それにより、CAMAの姿勢についても安心感を持つことができましたので、単に話を聞くだけではなく、当社にとって、どのようなメリットがあるM&Aの提案であるのかを真剣に考えてみようと思うようになりました。
もう1つは、CAMAと初めて会った後、今後は当社を「M&Aしたい。」という会社の担当者をCAMAが連れてきたことです。それまでは、相手が大手企業であることから、「横柄な態度だったらどうしよう。」などの不安な先入観がありましたが、実際にお会いすると、そのようなことは一切なく、また実務的な話も聞けたことから、この会社であれば、M&Aにより同じグループになれば、当社の業績は更に改善し、従業員の更なる雇用の安定確保や、更なる地域貢献にもつながる可能性があると思えるようになりました。
M&Aの決断に至るまでの心境の変化
Q.
「財務内容は良好、人材の確保も問題ない、後継者問題もない。」という良好な状態において、創業家であり親子三代に渡って承継してきた会社の全ての株式を「大手企業とはいえども第三者に譲渡する。」という大きな決断に至るまでにはどのような心境の変化があったのでしょうか?
A.
M&Aの決断を行うまでの期間には、M&Aの相手となる企業のことを理解することに注力しました。
その最中、CAMAより、相手の本社や店舗、更には自社工場を見学したり、そこで働いている役職員の方と面談したりすることを進められました。実際に見て、お会いすることが出来たことで、その企業の中で、実際に働いている人たちの「人となり」を知ることができ、「一緒に働いてみたい。」と思うようになりました。
また、相手に対する理解が深まると同時に、当社がおかれている環境や将来を改めて考えるように私の心境が変化するようになりました。その後、M&Aの条件の提案を受けるに至った次第ですが、今までのように「会社の経営状態は良好であり、40代の私がそのまま社長として経営を行っていくことが当然である。」という決めつけた考え方だけではなく、「周囲に大手チェーン店が出店してきているなど、環境が厳しくなってきているのを感じていたこと。そのような環境の変化に対して、限られた独立資本だけでは対処しきれないタイミングがいつか来るのではないか。」という思いと向き合った結果、この相手であれば、友好的なM&Aが可能であり、親子3代に渡り承継してきた当社の更なる飛躍になるとの決断に致しました。
ご家族の反応について
Q.
譲渡を決断された際は、どなたに相談されたのか、また、創業家であるご家族の方に説明された時の反応をお聞かせください。
A.
相談は特にしていません。私が三代目として決断しました。
創業家である親族には、ある程度の条件が決まってから話をしました。当社の株主は私の他、父、母、兄弟2名の計5名でしたので、一人ずつ説明いたしました。現場で働く母と兄弟はすぐに賛成してくれました。現場にいるからこそ、私の考えがよくわかっていたのだと思います。父については、二代目社長だったという立場から当初は反対しましたが、私の考えを説明し、時間を置くことで理解を得ました。
説明に際しては、CAMAとタイミングや内容を綿密に打合せした上で話をしましたので大きく揉めることもなく理解を得られたと思います。
また、家族に限らず、取引先や従業員、金融機関等についても自分が話したほうが良いこと、CAMAに任せたほうが良いことを的確にアドバイスいただいたことで、特に問題なく理解を得られ、ストレスなく行うことができたと思います。周囲に説明をする段取りから、このようなアドバイスまでサポートしてもらえたのは、本当に助かりました。
M&Aの影響について
A.
私は株式を譲渡したことで、オーナーではなくなりましたが、引き続き代表取締役を務めているため、大きく変わったところはありません。屋号や商号も以前と変わらないため、お客様に無用な心配をかけることもありません。
また、M&A実施後の退職者がゼロである、という点も良い意味での変わらなさです。システムの統合などもあり各従業員にとまどいがあったかもしれませんが、引き続き勤務を続けてくれています。これらの「変化のなさ」は私が望んでいたことであり、それが実現できていることは大変嬉しく思っています。
一方で、当社の業績は非常によくなりました。
大手グループの傘下に入ったことで、仕入れコストが下がり、利益が大きく上昇しました。販管費は少なからず上がりましたが、それ以上に売り上げと利益の伸びが大きく、業績は大変良くなりました。半年程度しかたっていませんが、こんなに変わるものかと驚いています。また、取引先との関係も良くなり、保証金を差し入れる必要もなくなったことで、資金的な余裕もできました。M&A前の当社の資金力では難しかった、新規出店についても本部と相談しており、今後拡大していく予定です。
実際にM&A(売却)をおこなったことについて
A.
非常に良いタイミングでM&Aが実行できたと思っています。調剤・薬局・ドラッグストアの業界は競争激化が続いているため、将来に亘り私の会社が企業価値を維持しつづけることは困難であっただろうと考えます。株主として最良の時に売却ができました。
Q.
M&Aを検討されている方へのメッセージをお願いします。
A.
まず、譲渡しをお考えの方に対しては、年齢に関係なく、自社・従業員・今後の業界動向等を判断し、経営者としての決断をすることが必要だと思います。
業界再編が進んでいない業界はありません。業界の流れを読みながら、経営者として判断することが重要ではないかと思います。M&Aの傾向も変わってきているようで、これまでの「身売り」といったイメージよりも「大企業のパートナーになる」意識で検討することが大切なのではないでしょうか。
お付き合いするアドバイザーは、譲渡希望企業をよく知っているというのは当然ですが、様々なところに気配りができ、自社のことを親身になって考えてくれるところがいいと思います。
譲受けを希望されている会社に対しては、業者からの案件を待つだけでなく、自社の戦略に会う企業があれば、積極的に声をかけて頂くことをお勧めします。
多くのオーナー企業の社長はM&Aを知っていても準備している経営者は意外と少ないということです。なぜなら順調であればあるほど、きっかけがなく、検討する時間がないからです。また、具体的な提案がないと、話を聞く時間すらもったいないと思うオーナーは多いはずです。
アドバイザーが買い手を連れてくるというのは譲渡を検討しているオーナーにとっては非常に良いきっかけとなります。譲受け企業を理解し、提案をもっていってくれるCAMAのようなアドバイザーを選ぶことがとても大切だと思います。
M&Aサミット2019 ~次世代へ繋ぐ、トップの決断~【開催日:2019.11.19】トークセッションにご出演いただきました。