セミナー参加を
ご希望の方
お気軽にお問合わせください
03-3593-3239
セミナーレポート(2018年11月14日開催)
第1部『成功するM&A戦略のヒント』
M&Aは経営戦略の一つとして浸透しつつあり、M&A件数は高い水準で推移しています。現在「会社を買収したい」と考え、実際にM&Aを行う中堅・中小企業様も大変多くなりました。日本の中長期的な経済状況を見据えると、これからの経営戦略の中心に置かれるのがこのM&A戦略になります。第1部では、M&Aの戦略に焦点をあて、解説いたしました。
■着眼点が変わってきた中堅・中小企業のM&A
大企業だけではなく中堅企業もM&Aに積極的になってきていますが、会社を買収することはできても、買収によって狙った効果を出せている企業は多くはないようです。それは「売上を上げたい」「競合に負けたくない」「規模拡大を図りたい」といった買収の動機を持ちやすいものの、対象となる会社を見極めて、思い描いたように企業の統合を推進することが労力を要するためです。
失敗要因は主に下記の3つになります。
(1) 「買うべきではない会社」を買った
(2) 「買うべき会社」だったが高すぎた
(3) 「買うべき会社」を「適正な価格」で買ったが、買収後の統合作業(PMI)に失敗した
M&Aを経験された会社様も増えたこともあり、(1)と(2)の失敗は少なくなりました。課題は(3)です。
買収後の統合作業がいかに重要であるか、最近になって認識されるようになりました。
「買収前にPMIをイメージできていないとM&Aをするべきではない」とも言われています。
■乗り越えなければならない2つの統合課題
企業買収で有名な日本電産の創業者・永守重信氏は日経新聞で、「M&Aは契約の時点で2合目までしか登っていない。残りの8合分は企業文化の違いをすり合わせるPMIという手間のかかる作業でこれがまた難しい」、と述べています。PMIとは、Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、M&A成立後の統合プロセスのことです。
永守氏の言葉からも、「M&AはPMIによって決まる」とも言えるほど重要です。下記の①と②の双方において、時間をかけて統合することが求められます。
(1)ハード面(業務のやり方、システム)
(2)ソフト面(意識、人の気持ち、企業文化)
オーナー企業や同族会社の従業員は、社長の価値観や決めルールに則り、社長を慕って働く場合が多いでしょう。そのため、譲渡企業(売り手)がオーナー企業や同族会社の場合は、統合後に示される新しいやり方に対して、拒否反応を示すことがあります。長年慣れ親しんだ社長のやり方とは違うためです。
そうした事態を回避するには、PMIを(2)→(1)の順番で実行すると良いでしょう。ソフト面から統合に着手した場合、お互いの企業文化を理解して信頼関係を築くことができます。M&Aが成立してもすぐに統合を目指さず、時間をかけて信頼を獲得し、その後、徐々にハード面の統合に着手することを推奨します。
■シナジーを出すための留意点
1)前提
M&Aによるジナジーを大きく見込みすぎるのは、避けるべきでしょう。初めてM&Aをする場合は、成功するM&Aよりも、失敗しないM&Aを心がけると良いと考えます。事業計画を立てる場合においても、シナジーを大きく見積もり過ぎないことが大切です。
2)ディスシナジーも考えておく
ディスシナジーについて、実際の例で考えてみましょう。過去の金融機関の統合において、システム統合が大問題になったことがありました。統合前に各社が使用していたシステムを統合後も引続き使用したため、連携不足によるシステム障害が多発し、深刻なエラーに至ってしまいました。システムの統合をどのように進めるかについても、企業を買収しようとする際には考えておく必要があるでしょう。
また同様に、拠点の移転・閉鎖に伴う費用や、人材の流出に伴う人件費の増加についても想定しましょう。
3)考え方
大企業のM&Aの場合には、短期戦でPMIに臨むことも可能でしょう。『100日で結果を出すM&A入門』大前研一著(プレジデント社)は、買収後に組織改革や教育など必要なことを100日以内に行うことで相手側の意識を変えようと説いた本であり、参考になる面もあります。
しかし、中小企業の場合は、PMIには2~3年程度の時間をかけるべきだと、私の経験上考えます。まずは、相手を理解して信頼関係の構築を行うことが基礎となります。その上で、業務のやり方やシステムの統合などを徐々に進める手法を推奨しています。
4)買収後の運営で最も重要なことは何か?
買収後の運営いかんによって人材流出が続くと、M&Aの目的である「価値の創造」が行えません。そのため、買収した企業に対しすぐに変化や結果を求めないことが大切でしょう。企業文化というのは人の心の問題です。買い手も「買わせていただいた」といった姿勢を崩さず、まずは相手の信頼を獲得することを求めるべきだと考えます。成功しているM&Aの多くは、買い手企業のビジョンや経営方針を繰り返し丁寧に発信し、相互に理解していくプロセスを大切にしています。
■DD(買収調査)とPMI(M&A成立後の統合プロセス)
1)DDはPMIの起点と考えてよい
DDを実施している段階から、相手企業と良好な協力関係が築けるかどうかを考えてください。もちろん、各種DD(財務DD、法務DD、労務DD)も大切です。しかしそれ以上に、相手企業の文化・社風の違いに、どう対処するかを思い描くことがスムーズな統合には必要です。また、シナジー効果を出すための「時間」「手間」「投入コスト」についても、DDの段階である程度、算定すると良いでしょう。
2)PMIチームは必ずDDに参加した方がよいか?
PMIは買収後の経営を担う部門が担当し、DDにはM&Aを検討する部門が担うといったように、PMIとDDが別のチームが担うことがあります。適切なようにも見えますが、責任の所在が曖昧になる恐れがあります。円滑に買収後の業務を遂行するためにも、DDにはPMIチームを参加させるべきでしょう。買収後の統合業務を買収前から見据えることが望まれます。
■サービスメニューのご紹介
・M&A仲介/フィナンシャルアドバイザリー
・M&Aマーケティング/ファインディング(案件発掘)
・デューデリジェンス(財務・税務・労務)
・バリュエーション(株価算定)
・企業再編コンサルティング
・PMI(Post Merger Integration)支援
第1部
「成功するM&A戦略のヒント」
第3部
「税務上の注意点と選択のヒント」
第5部
「PMIにおける税務会計上の諸問題と対応ポイント」
第6部
「買収後の管理とM&Aの成否」
コーポレート・アドバイザーズM&Aへお気軽にご相談ください。
M&Aに関する無料相談やセミナーを随時行っております。